大切に使っていたお気に入りの器が欠けてしまった、なんてことありませんか?どんなに丁寧に扱っていても、お茶碗などの口周りは欠けやすいもの。愛着がある器ほど悲しいですよね。今回は、そんな方におすすめの「金継ぎ」をご紹介します。"大人の自由研究"として挑戦してみるのもいいですね。
金継ぎとは?
欠けたり割れたりした器を、漆を使って修復する伝統的な技法、それが金継ぎです。「金継ぎ」と言いますが、実はほぼ漆で修復していて、金は最後の仕上げのときにのみ使います。漆は天然素材で耐久性も高く、食べ物を入れる器に使用しても安心です。
床などに落としてばっくりと割れてしまった器も修復可能ですが、今回は口周りの欠けてしまった器を、金継ぎキットを使って実際に修復してみましょう。
今回使うのは「金継ぎ初心者セット」
〈金継初心者セット〉には、必要な金粉・漆はもちろん、初心者の方でもすぐに始められる道具が揃っています。とくに漆は、マニキュアのように容器のキャップが筆になっているため、塗るのも簡単で、自分で筆を用意する必要もありません。
※本記事の中では、工程ごとに使うものを表記していますが、*マークのものはセットに含まれておりません。
※工程内で漆を使用する際、体質や体調によって皮膚がかぶれることがあります。漆を使うときは手袋を着用しましょう。触れてしまったときは、サラダ油などで拭き取ってください。
1.漆固め
丈夫できれいな金継ぎを行うための、下準備を行いましょう。
[使うもの]透漆(とううるし)、*ウエス(木綿布)
欠けている部分に透漆を塗ります。余分な漆は乾かないうちに拭き取ります。
セットの箱の中に入れ、蓋をして一晩ほど乾燥させます。試し紙にも同様に漆を塗っておき、翌日綿棒に色がつかなければ乾燥しているサインです。
【ポイント】漆が乾くには湿度が必要。必ず箱に入れて保管し、乾燥が足りない場合は箱の隅に濡らしたティッシュを置いて湿度を補いましょう。
2.刻苧(こくそ)付け
部分修復用の「刻苧漆」をつくり、欠けた部分を埋めていきます。
[使うもの]透漆、刻苧綿、木粉、プラスチックヘラ、竹ヘラ、定盤、*ごはん粒、*カッター、*ウエス(木綿布)
①ごはん粒をプラスチックヘラでよく練り、ペースト状にします。
②ペースト状のごはんと同量の透漆をよく混ぜます。
③刻苧綿、木粉の順に加え、よく混ぜます。
④耳たぶくらいの固さになったら「刻苧漆」の完成です。
⑤刻苧漆を欠けた部分に竹ヘラで詰め、指で形を整えましょう。
【ポイント】木粉を指になじませてから押さえると、刻苧漆が指につきにくく形が整えやすいのでおすすめ。
⑥箱に入れて1週間ほど乾燥させます(欠けではなく割れの場合は2週間程度)。ここでも試し紙に塗って乾燥したかを確かめましょう。
乾燥後、出っ張っている部分はカッターや砥石などで削って平らにします。
【ポイント】削っているときに、刻苧漆がぽろっと取れてしまうことがあるので要注意。もし取れても、捨てずに透漆でもう一度接着すれば大丈夫です。
3.錆漆(さびうるし)付け/錆研ぎ
より美しく仕上げるために、「錆漆」で細かい穴や小さい段差を埋めます。
[使うもの]透漆、砥粉(とのこ)、プラスチックヘラ、竹ヘラ、砥石、定盤、*水、*ボウル、*ウエス(木綿布)
①砥粉に水を加え、ペースト状にします。
②漆を見た目で5割程度加えて練り合わせたら「錆漆」の完成です。
③竹ヘラで均一にうすく塗り、しっかり乾燥させます。目安は4~5日程度。
④乾燥後、ボウルなどに水を入れ浸しておいた砥石で、錆漆が平らになるよう丁寧に研ぎます。塗らしたウエスで拭いたあと、一晩ほど乾燥させましょう。
4.塗り/塗りの研ぎ
下地全体を覆うように弁柄漆を塗ることで、防水などのコーティングの役割を担います。
[使うもの]弁柄漆(べんがらうるし)、砥石、*ボウル、*水、*ウエス(木綿布)
①弁柄漆をうすく均一に塗ります。塗り終わったら3~4日乾燥させましょう。
【ポイント】厚く塗り過ぎると、垂れたりしわができる原因になるので、ゆっくりとうすく塗ることがコツ。
②乾燥後、ボウルなどに水を入れ浸しておいた砥石で、弁柄漆が平らになるよう丁寧に研ぎ、塗らしたウエスで拭きます。研ぎ終わったら一晩ほど乾燥させます。
※塗りと研ぎは、繰り返し行っても構いません。強度が増し、塗った面もきれいに仕上がります。
5.金粉蒔き
いよいよ仕上げです。金粉を蒔いていきましょう。
[使うもの]弁柄漆、真綿、金粉、*白い紙
※余った金粉は再利用できますので、下に紙をひいて作業してください。白い紙なら落ちた金粉も見やすいです。
①前回と同じように弁柄漆をうすく均一に塗ります。塗りムラがあると金粉にもムラが出てしまうので、ゆっくりとうすくに塗るように心がけて。
塗り終わったら箱に入れて30分ほど置きます。少し乾かすことで、金粉のノリがよくなります。
②30分ほど経ったら箱から取り出し、真綿に金粉を付け、優しくそっと乗せるようにまぶしていきます。余分な金粉は真綿で集めてまた使えるので、思い切ってたっぷりとつけるのがおすすめ。終わったら3〜4日乾燥させます。
【ポイント】時間が経つと下地の弁柄漆の色が出てきてしまうことがあります。慌てずに、下地が出てこなくなるまで金粉を足してあげましょう。
③乾燥を確認し、濡らした綿棒で余分な金粉を取り除きます。
【ポイント】しっかりと乾燥していないと、磨いたときに金粉がとれてしまう場合があるので要注意。
6.金粉固め/磨き
最後に、金粉を定着させます。
[使うもの]透漆、メノウ、*ティッシュペーパー
①透漆を金粉の上に塗ったら、すぐにティッシュペーパーで押さえるようにして拭き取ります。ティッシュペーパーの位置を変え繰り返し、漆がつかなくなくなったら、一晩ほど乾燥させます。
②乾燥後、メノウで金の部分を磨き、全工程終了です。
ついに完成!ブルーの器に金色がよく映えます。欠けが埋まっただけでなく、金継ぎの部分がアクセントになってデザインとしても素敵。
おわりに
今回使用した〈金継初心者セット〉には、使いやすい道具が揃っているので、初めての金継ぎでも安心して作業を進められました。工程ごとに漆を乾燥させたりと、完成までには思ったよりも時間がかかりますが、時間と手間をかけたぶん、より愛着がわいてきます。金継ぎを施した器は、きっと前とは違う表情を見せてくれるはず。大切な器を繕ってあげれば、これからもずっと長く使っていきたいものになりますよ。
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