【開発秘話】想いをつなげて12年。暮らしとつながる水筒「&bottle」誕生。

開発に12年という長い歳月をかけた水筒が今年発売されました。その名は「&bottle」。発案者である編集者の藤本智士さんが、ふとしたきっかけで水筒の魅力に気づいたところから、このプロジェクトはスタートしました。今回、開発のきっかけや、水筒にかける藤本さんの想いを伺いました。

●藤本智士さんのプロフィール
編集者。1974年兵庫県在住。『Re:S』『のんびり』編集長。著書に『風と土の秋田』『ほんとうのニッポンに出会う旅』共にリトルモア、『魔法をかける編集』インプレス。『ニッポンの嵐』『るろうにほん 熊本へ』など手掛けた書籍多数。

モノづくりやイベントづくりも、等しく編集である。

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―まずは素朴な疑問なのですが、編集者である藤本さんと水筒。一見関係がないように思うのですが、どういったつながりがあるのでしょうか?

まず僕の会社の名前は「Re:S(りす)」といいますが、これは「リ・スタンダード」という言葉の略です。もともと、新しいふつうを提案するというコンセプトで、同じ名前の雑誌をつくっていたことに由来しています。

―新しいふつう。

そうです。そのコンセプトは、常に自分の編集活動の軸にとなっています。Re:Sの創刊号で水筒の特集を組んだんですね。以降、当時はデジカメ全盛の時代でしたけどフィルムカメラの良さにフォーカスしたり、ワープロを取り上げたりもしました。

―どの製品も、どこか懐かしさを感じますね。

今は、世の中のサイクルの速さが尋常じゃないじゃないですか。十分使えるモノでも、まだそんなモノ使っているの?みたいなプレッシャーを感じるような。そういった空気の中でモノを買うことが個人的にイヤだったんですよね。

―そのスピード感が。

その速いサイクルの中で、落としているものをひろいあげてちゃんと見せていく、ということをしたいと思ったら、そこに水筒があったんです。

―なるほど。その想いが水筒づくりに結びついたと。

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僕にとっての「編集」は、本や雑誌をつくることだけじゃないんです。だから、時にメーカーさんとのモノづくりや、いろんな地方に行ってイベントを立ち上げたりということも含まれるんですね。編集者とモノづくりってなかなかつながらないとは思うんですけど。

― 一般的なイメージではそうです。

広い意味での編集と僕は言っているのですが、モノなりコトなり、そのビジョンがあって、そのために何をすればいいのかというのが編集だと思っています。なので、方法もその時々で変わるんです。

―では、そもそも水筒に興味を持ったきっかけはなんだったのでしょうか?

一番のルーツを辿ると、Re:Sで水筒の特集をするより前に、『すいとう帖』というダジャレみたいな本をつくったことがきっかけになったんです。

偶然か、運命か。水筒との強い縁。

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―『すいとう帖』は、どんな本だったのでしょうか?

当時僕は大阪の西天満という街に事務所を構えていたんですが、たまたま大阪は魔法瓶が地場産業として根付いている土地で。

―そもそも、水筒にゆかりのある土地だったと。

その事務所の1階ではカフェも営業していたのですが、普通に変なお店で(笑)。そこにある日一人の女の子が入ってきて、座るなり、自分の水筒のお茶を飲んだんですよ。

―注文もせずに(笑)

さらに、水筒のコップに入れたお茶を「飲む?」って僕に差し出してきて(笑)、「ありがとう」って、飲んだらキンキンに冷えていたんですよ。
その冷たさに「すごい!」と思って、その足で心斎橋の東急ハンズに行きました。どこで水筒を買ったことが、魔法瓶を意識した最初の出会いなんです。

―勇気ある女の子がきっかけをくれたんですね(笑)。

あと、事務所の近所に大阪天満宮という有名な神社があったんです。そこに「大阪ガラス発祥の地」って書かれた石碑があって、「え?こんなところでガラスが生まれたの?マジで?」と思って神主さんに聞いてみたら、ガラスの発祥の地ではなくて、大阪硝子という会社の発祥の地でした。

―わはは(笑)

実際、大阪天満宮のまわりにはガラス職人さんが多かったようで、その職人さんたちがつくっていたのが、真空管と真空瓶。で、真空管をつくっていた人たちが松下電器やシャープで、真空瓶がいまのタイガー、象印なんだと聞いてびっくりしたんです。

―はー、現代につながりました。

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たまたまお茶をもらったことが始まりですけど、魔法瓶発祥の地みたいな土地で僕は魔法瓶がすごい!と感じたんだと思ったらすごくテンションがあがって(笑)。

―聞いているだけでもあがります(笑)

それですいとうの本をつくろうと、魔法瓶工業組合というところにお邪魔して、タイガー魔法瓶70年史とか、象印何十年史みたいな社史を借りて帰って勉強してつくったのが、『すいとう帖』なんです。その本がご縁で、魔法瓶業界とのつながりができたんです。

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その本がご縁で、魔法瓶業界とのつながりができました。

魔法瓶のように、想いを温め続けた12年間。

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僕にとって幸運だったのは、&bottleの開発に関わってくださった方たちが、魔法瓶への愛情が深い人たちだったことで。ただ、開発はまあ、山あり谷ありでした。

―12年という歳月は......想像を超えています。

中でも、最初の女の子との出会いがやっぱり印象深くて、コップについては、かなり試行錯誤しました。

―それはデザインをということでしょうか?

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こちらがこだわり抜かれた&bottleのコップ。

本当にコップの意味から考えました。コップがつくことで何がいいのか、みんなは何を求めているのかとか。粘土でコップをつくってみたりもしましたし。でもそこで僕が一回ちゃぶ台をひっくり返したことがあって(笑)。やっぱり一番いいのは自分が持っているコップだから、むしろコップはいらないとか言い出して。

―(笑)

その発言のせいで、また2年くらい頓挫したんですけど(笑)。そんなことを繰り返しながら、12年かかっちゃったのかなというのはあるんですが、僕は当初考えていたことが、自然と時代にマッチしたからこそ、今発売することができたんじゃないかなとも思っています。

―結局やりたかったことができたと。

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今は一人で楽しむものが増えていく一方で、共有やシェアという考え方も広まってきていると思うんです。この&bottleも、ちょっとシェアしたくなる感じを大事にしていて。時代の空気にあっているのかなって思うんですよね。

―なるほど、当初の想いが年月を超えて現在のニーズにマッチしたんですね。

時間はかかりましたけど、タイガーさんもずっと変わらず気にかけてくれて、打ち合わせも重ねていました。きっと、このまま消えないだろうという熱量っていうんですかね。それこそ魔法瓶のように、ずっと保温してきたみたいな感覚はあります。

こだわってつくったモノだから、販売にもこだわる。

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すいとうの形についていえば、プロダクトデザインを担当したタイガーさんのデザイナーで渡辺さんという方がいて、その人だけは当初からずっと変わらずに関わってくださりました。その点は、すごく大きいですよね。

―この形にたどりつくまで。

そうです。だからデザインや機能へのこだわりはちょっと半端ないですよ。注ぎ口にしても、例えばペットボトルのフタって、水だと160度くらい、お茶だと360度、炭酸だったら720度というように、回転させる度合いが飲み物によって違うんですけど。

―それは意識したことがありませんでした。

それでこの&bottleは160度、水と一緒のところ でファーストステップが開くように設計されています。

―なるほど。身の回りの飲み物に近い開け心地といいますか。

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このフタのネジの仕組みもそうですし、先ほどのコップもそう。タイガー魔法瓶として、真剣に魔法瓶に向き合ってこられた結晶です。

―みなさんで考え抜かれたわけですね。

その上で、メーカーとして届けたいモノがつくれた、ということが何より大きいですね。今は売れるか売れないかでモノづくりが進むことも多いなと感じているのですが。せめてRe:Sとして関わるプロダクトは、そういうものにはしたくないなと思っていましたから。だからこそ定価で買って欲しいという思いがあります。

―安いから手に取るということではなく。

安いことが価値になってしまうと、長くつかうという価値が薄れる。僕は、ちゃんとしたものをちゃんとした金額で買ってほしいと思っているので。

―そうなると、販売するお店も限られてくるのでは?

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たしかに狭まることはあると思います。でも、その売場をどう確保していくかを考えることも編集ですから。実際、僕たちRe:Sとしても、本屋や、カフェなど、普段水筒を置いてないお店にも紹介しているので。やっぱり売場というのは最高のメディアだと思いますし。

―マーケットを広げることも編集なんですね。

はい。&bottleという商品が水筒というジャンルにとらわれることなく、日本のモノづくりや売り場に対して、何かしら風穴を開けられたらと思って取り組んでいます。

人や暮らしとつながる。だから「&」bottle。

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いろいろな暮らしのシーンとつながる。それが「&」に込められた想いです。

ーいよいよ発売された&bottleですが、今どんな想いでいらっしゃいますか?

今はお水のペットボトルも、500mlで120円とかするじゃないですか。高くなったねえなんて言ってるガソリンでも1リットル170円とかなのに、ずいぶん高いですよね。そういう意味でも、暮らしにやさしいですから。この&bottleを使うことでそこを書き換えていければと。それが、新しいふつうの提案です。

― 一度コップに入れるという行為も、ペットボトルとは異なりますもんね。

そうです。注ぐ行為があることで、落ち着くというか、よりゆとりのある時間を過ごせるといいますか。みなさんそれぞれの暮らしの相棒になってくれたらいいなという思いで、商品名を「&bottle」と名づけたので。
あとはもっといろいろなところで目に触れてもらうきっかけをつくりたいので、他のメーカーさんと「○○&bottle」という形でコラボレーションできたらなという思いもあります。

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―まさに、いろいろな人とつながるための「&」ということだったんですね。私も、今後の「&」の展開を楽しみしています!今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

おわりに

水筒を持つ暮らし。そんな「新しいふつう」を広めていきたいと語る藤本さん。そのスタートが小さな日々の感動だったことに、改めて毎日の暮らしを考え直すきっかけをもらったような気がしました。ぜひみなさんも、東急ハンズの店頭で、&bottleを手に取ってみてください。そして、こだわりの水筒から、藤本さんの想いを感じてみてくださいね。

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