土鍋でごはんが炊きたくなる!長谷園の炊飯土鍋「かまどさん」の魅力とは

秋の味覚、新米をさらにおいしくいただきたい皆さん。長谷園の「かまどさん」をご存知ですか?長谷園は三重県にある伊賀焼の窯元で、天保3年(1832年)創業という長い歴史を持っています。そんな長谷園から販売されているのが「火加減いらず・吹きこぼれなし。ガスの直火の炊飯土鍋"かまどさん"」いつものごはんをさらにおいしく炊き上げます。今回は長谷園 8代目当主 長谷康弘さんに、かまどさんの魅力を教えてもらいました。

かまどさんの魅力①本物の味を追求する『作り手』の熱意

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伊賀焼の郷 長谷園 長谷製陶株式会社 8代目当主・代表取締役 社長 長谷康弘さん

ー本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。

--まずは、長谷さんご自身について伺いたいのですが、一度伊賀から離れ東京へ上京されているんですよね。
はい。高校生の時に伊賀を出ました。

--高校生ですか。故郷を離れたのはどうしてですか?
長谷園は今年で186年目。代々引き継がれて私で8代目になります。私は長男なので小さい頃から家を継ぐ気持ちでいたのですが、私の両親は「好きなことをしなさい」と押し付けることはしませんでした。私の故郷は山奥の小さな村なので、そこで事業をしていると周りからもてはやされることも多いのです。そういう環境に居続けるのではなく、一度故郷を離れて外の世界を知ろうと思い、高校から大学、社会人と12年間東京で生活をしましたね。

--実際に離れてみて変わったことはありますか?
当時は都会への憧れがありましたが、実際に生活をしてみると伊賀の良さを改めて感じましたね。田舎暮らしの贅沢さがわかるようになりました。

--故郷の良さは離れるとよくわかりますよね。伊賀にはいつ戻られたのですか?
1997年に戻りました。その2年前に関西で大きな地震があって、会社がどん底の大変な時期でした。

--どのような影響を受けたのですか?
6代目の祖父の代から、伊賀の土の食器づくりには使わない部分を使って、タイルをつくっていたんです。「趣きがあって良い」と評価されて、当時は7割がそのタイル事業で成り立っていましたね。しかし、大きな地震が起きたあと、高層階から伊賀のタイルが崩れ落ちる映像がニュースで映されたんです。伊賀のタイルは重いという特徴があったので、その重さが揺れを助長してしまったんです。

--それからどうなったのですか?
注文があったものが全てキャンセルになり、今まで7割あった仕事がゼロに。残り3割の食器類で生計を立てなくてはいけなくなりました。

--大変な時期に戻られて、どのように会社を立て直されたのですか?
昔から良いものをつくっている自信はあったので、まだ世に出ていない素晴らしい商品を開発しようと動き始めました。それで開発をしたのが炊飯土鍋「かまどさん」です。昔から土鍋はつくっていましたが、土鍋で炊飯というと火加減をしたり、吹きこぼれたりと少し面倒なんですよね。プロの世界では土鍋で炊くおいしさが認められていても、一般家庭ではハードルが高い。だけど、この面倒を無くすことができたら、一般家庭でも土鍋でおいしいごはんが簡単に炊ける。その魅力をわかってくれる人が必ずいる!と思ったのです。

--かまどさんの完成までにどれだけの時間がかかったのですか?
4年ほどかかりました。しかし、完成してからも一般家庭では土鍋でごはんを炊くという習慣がなかったことと、私たちの知名度が低かったことでなかなか認めてもらえませんでした。普通、産地というと良質な資源(粘土)、燃料(赤松)、腕の良い職人、そして商人の4つが揃って形成されるのですが、その中でも伊賀では商人が育っていなくて。なかなかかまどさんの魅力を世の中に伝えられなくて悔しかったです。

--今では多くの方に支持されていると思うのですが、人気に火がついたきっかけは何だったんですか?
発売して1年ほど経ったある時、ある料理番組で料理研究家の方がかまどさんを私物として紹介したんです。それをきっかけに大きな反響を呼びました。今までどこへ営業に行っても門前払いだったんですが、話を聞いてくれるようになり、一般の方にも認めていただけるようになりました。
それからは「この窯元なら他の商品も間違いないだろう」と、かまどさんを発売する10年、20年前の商品も評価していただけるようになりましたね。かまどさんがなければ、この会社はどうなっていたことか...。

--長谷園さんのものづくりにかける想いが届いたのですね。長谷園さんの企業理念に「食卓は遊びの広場だ」というものがありますが、これもお客様に届けたい想いの一つですよね。具体的にどういうことなのか教えてください。

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「食卓は遊びの広場だ」には、「形にとらわれず卓上で楽しめるもの」をコンセプトに、台所だけでなく卓上でみんなで料理をしてコミュニケーションを深めてほしいという想いを込めています。

--なるほど。だから長谷園さんの商品にはテーブルの上で楽しめる調理道具が多いのですね。普段も家族そろって食事をされるのですか?
そうですね。職人さんとも一緒に食べますよ。また、私が子どもの頃の話ですが、父が世の中から外れた子どもたちを預かっていたことがあるんです。行くあてがない子どもたちに「ここで頑張ってみるか」と声をかけ、一緒に食事をし、生活をしていました。最初は見た目も怖くて、生活も昼夜逆転していた子たちが、一緒に食卓を囲むうちに「ありがとう」と言うようになったり、「俺にも何かできることはないかな」と言い出すようになったり、どんどん変わって行ったんです。私は共に食卓を囲んだからこそ絆を深められたのだと信じています。

--食卓とは成長の場でもあるのですね。
食育という言葉がありますが、うちでは「卓育」と呼んでいて、子どものしつけやコミュニケーションは食卓からはじまると考えています。

かまどさんの魅力②『伊賀の土』と丁寧な手仕事から生まれる

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--かまどさんの素材である土の特徴を教えてください。
伊賀の土は素材が粗いことが特徴です。この土がとれる場所は大昔、湖の底だったのですが、そこで生息していた生物や植物の化石がたくさん混じっているんです。その土を窯で焼くと有機物が燃え尽きて気孔だらけの状態になります。この気孔が鍋を実際に加熱するとき、内側の食材に熱を一気に届けないためのポケットのような役割をして、食材を均一に熱してくれるんです。

--伊賀の土だからこそできることなんですね。
そうです。この特徴を生かしていかないと、他の産地と同じようなものをつくっても、小さな産地の我々は勝負ができないんです。長谷園独自の強みを持ったものをと試行錯誤してできたのがかまどさんというわけです。

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--実際はどのような工程でつくられるのですか?
まず伊賀の土を石膏型に入れて成形します。底の部分をカンナで削り、表面に凸凹を作り火に当たる面積を広げます。そして持ち手をつけるのですが、本体と乾燥の度合いがほぼ一緒にならないと亀裂が入ってしまうので、粘土の状態をそれぞれ同じ状態に保ちながらつけていき、十分乾燥させて窯に入れます(素焼)。そして釉を掛け、再度窯に入れます。

--丁寧に時間をかけてつくられているんですね。実際どれくらいの時間がかかるのですか?
だいたい3週間ですかね。食器などは1週間ほどでできるのですが、かまどさんは内側により熱を届かせないために、分厚くつくっているんです。なので、その分乾燥に時間がかかります。でも、分厚くすることで、おいしいごはんを炊く極意として昔から言われている「始めちょろちょろ、中パッパッ」という温度調整を鍋が勝手にやってくれるんです。

--上蓋と中蓋があるのはなぜですか?
二重蓋にしたのは吹きこぼれを防ぐというのと、圧力をかけるのがねらいです。
しっかり圧がかかるように少し重くつくっています。また、中蓋と上蓋にあいた穴を十字にして蓋を閉めることで、蒸気を逃げにくくし、おいしく炊き上げてくれます。ちょっとしたことで炊き上がりの味がぐっと変わるんですよ。これも何度も色んな角度を試して見つけました。

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--おいしくごはんを炊くための探究心がすごいです!

ちなみに、少し脱線しますが、冷やご飯の保存や温めには「陶珍」がオススメです。電子レンジは重さと水分に反応して食べ物を温めるのですが、陶珍の蓋を水に濡らすことで、蓋の水分に電子レンジのマイクロ波が反応し熱蒸気化します。なので、食材の水分を奪うことなく、おいしい状態のまま温め直せるのです。すのこを中に入れると蒸し野菜もできますよ。

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かまどさんの魅力③『小さな産地』だからこそできるサービス

--かまどさんは蓋や本体を別々に購入できるんですよね?
はい。恐らく業界では初だと思います。というのも、大きな産地は粘土から形にする生地屋、それを焼く窯屋、そして問屋というように分業しているんですね。しかし、うちは小さな産地なので製造から販売まで一貫して行っています。これを強みにできないかと考え、パーツ販売をすることにしました。

--実際にお客さまから「パーツ販売をしてほしい」との声があったのですか?
かまどさんをご購入いただいたお客さまにアンケートをとったんです。大半の方が喜んでくれていたのですが、一割くらいの方が何らかの理由でかまどさんを使っていないという回答が返ってきました。その一割の中でも最も多かった理由が「上蓋を割ってしまったので、もう使っていない」という声だったんです。

--なるほど。それでパーツ販売をすることになったんですね。

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でもパーツ販売はなかなか大変で、同じ規格でつくっていても窯に入れた場所や乾燥の具合によって収縮率が違うんです。だからお客さまから三合炊きの上蓋の注文があっても、お持ちの本体とぴったり合わない場合があったり。そうするとおいしく炊けないので、お客さまに本体の直径を測っていただき、そのサイズにはまるものを工場内から探してお届けしているんです。

--お客様に合ったものを、一つずつ選ばれているんですね。
最初は面倒だと言う声もあったのですが、「かまどさんを喜んで使ってくれているお客さんを大切にしよう」と説得をして社員も納得してくれました。

--長谷園さんの「つくり手は真の使い手であれ」という信念にも繋がっていますね。
そうですね。やはり、つくりっぱなしにはしたくないので、お声をいただいたらしっかり形として答えていきたいと思っています。何より、地道な努力が、使い手であるお客さまの信頼にも繋がっていると信じています。

※東急ハンズオリジナルかまどさんは、パーツ販売に対応しておりません。予めご了承ください。

最後に 長谷園がお客さまに届けたい想い

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--180年以上続いている長谷園さんですが、これからも大切にしていきたいことはありますか?
まずは自分たちが「うまい酒が飲みたい、うまいご飯が食べたい」という想いを大切に、そこから派生したモノづくりをしていきたいなと。卓上でみんなが楽しめる調理道具をこれからもつくっていきたいと思います。

--最後に、お客さまにメッセージをお願いします。
お客さまには、本当のおいしさを届けたいです。コンビニのごはんも今はすごくおいしいですが、本物の味というのがあります。少しでも多くの方にそれを知っていただきたいですね。かまどさんはしっかり仕事をしますから、家族の一員として迎えてもらえたら嬉しいです。

まとめ

家庭でも土鍋でごはんを簡単に炊けるようにした「かまどさん」。それを実現した背景には、「作り手の熱い想い」「良質な伊賀の土」「丁寧なサービス」という長谷園ならではの理由がありました。この秋は、ぜひかまどさんを使って、楽しく、おいしい食卓を囲んでみてはいかがでしょうか。

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東急ハンズオリジナル かまどさん(白 アイボリー)250台限定 10,000円+税

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