【新宿店】【万年筆対談】ペンドクター×万年筆店主  「これって万年筆の話!?」対談

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 こんにちは。新宿店4F「一杯の珈琲商店」店主の向井です。

今回は文房具の万年筆の話題です。

万年筆修理のプロ・ペンドクターの宍倉潔子さんと、
新宿店8階「万年筆のエフピー堂」池内店主の対談をお届けします。

 ペンドクターとは、万年筆の修理や調整を行うスペシャリスト、
いわば万年筆のお医者様です。
文房具のお医者様は、いったい何を診ているのでしょうか?

その謎を解き明かしていくうちに、意外な展開の話題になりました・・・

ペンドクターも店主も、最初は万年筆が怖かった!?
 
向井(司会) 
今日は、女性初の「ペンドクター」宍倉潔子さんにお越しいただきました。

店主対談という事で「万年筆のエフピー堂」店主の池内店主、
筆記具担当の経験もある「世界にひとつだけの商店」熊谷店主に集まってもらいました。

万年筆のスペシャリスト対談です。
では、宍倉さん、続いて池内店主も自己紹介をどうぞ。

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宍倉(「ペンドクター」)
株式会社サンライズ貿易の宍倉です。
万年筆の修理を行う「ペンドクター」という称号で活動をしています。
もともと人が好きで、「接客の仕事をしたい」という事で百貨店の文房具売り場に勤めていました。
万年筆に本格的に取り組むようになったのは、
高級筆記具担当になった事で万年筆に興味をもったのがきっかけです。

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池内(「万年筆のエフピー堂」店主)
東急ハンズ新宿店8階「万年筆のエフピー堂」店主の池内です。
緊張しております(笑)。
私も文房具売り場で高級筆記具担当になったことから万年筆の世界に入っていきました。
最初とてもディープで何となく怖い(苦笑)印象がありました。
なので、今は「気軽に試せる」「相談出来る」をモットーにしています。

向井 
お二人とも仕事で担当になったことが万年筆に取り組むきっかけなんですね。
「最初は怖かった」という池内店主の感想は意外でしたが。

池内 
お客様からの質問も深そうだし、必要な商品知識も深くて。
知識を持てたとしても、どんなふうに接客したらいいかも良く分からない(苦笑)。
この気持ちは、自分自身で実際に買って使ってみたり、
お店巡りをするなど勉強する事で克服していきましたね。

宍倉 
私も最初は「怖いなあ」と感じた事もあります。
初心者の方の中には、使い方が良く分からない事で、過度な不安をお持ちのケースもあります。
そういう場合、たとえ話を使いながら分かり易く解説するようにして、
その方の不安を解消して差し上げるようにしてますね。

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池内 
結論から申し上げますと、「万年筆は怖くありません!」
私もはじめは知らなかったのでその想いを踏まえてご案内するようにしていますし、
店頭で実際に試し書きできますので、お気軽に試していただきたいですね。

宍倉 
万年筆の価値は価格ではなく、使う方の手に「合う・合わない」です。
ぜひ気軽に「試して欲しい」「使って欲しい」ですね。

向井 
なるほど。
ちなみに、宍倉さんも担当したことが万年筆にハマるきっかけとの事ですが、もともと興味をお持ちだったのでしょうか?

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宍倉 
私は元々書く、という行為が好きでお手軽価格の文房具を選ぶのは好きでした。
「ちょっといい文房具が欲しいなぁ」と思っていたところで、ちょうど担当になったのが、きっかけになりましたね。
万年筆が好きになるって、「時が来た」って感じで必要な時期に巡り合うというか、出会ってしまう感じのようで。
私も必要な時期に「ピピっ」ときて、出会った感じです。

池内 
もともと好きになる、「ピピっ」とくる要素をお持ちだったんでしょうね。

向井 
熊谷店主は元筆記具担当として参加してもらっています。
筆記具の魅力ってどんなところにあるのでしょうか?

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熊谷(「世界にひとつだけの商店」店主)
以前、横浜店勤務時代に筆記具担当をしていました熊谷です。
万年筆はアプローチがいろいろあって、そこにいれるインクや書く紙などいろんな要素がその人の好みで組み合わさって奥が深い世界だと思います。
ハマるといろいろ試したくなるし、さらに好きな人同士だと「何でこれ買ったの?」「こんなところに惚れて買ったの!」という話で盛りあがれますしね。

池内 
こういう話題がのびのび喋れるのは、楽しいですね!
1日では足りませんよ!(一同笑)。

万年筆へのディープな「愛」を語る・・・

向井 
最近は万年筆を使ってみようと、始められる方が増えているそうですね。
どのような方が、使い始められているのでしょうか?

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池内 
小・中学生で始められる方が多くて、結構いい万年筆をお持ちで驚くことがあります。
お年玉を貯めて買われたり、大人から譲ってもらっているようですが、
普通に勉強で実用的に使っているようです。

宍倉 
親御さんや学校の先生が使っていて、
憧れて万年筆の世界に入ってくるようですよ。

池内 
その入り方、自然でいいですね。

宍倉 
私も職場の先輩がとても達筆で、「ああいう字が書けるようになりたい」という想いがありました。
手に馴染んできた万年筆を使うと、
実際自分の思い通りの字が書けるようになっていくんです。

池内 
私も万年筆だと、意識する事もあって自分の思い通りの字が書けるようになりました。
ボールペンを使うと、さっぱり上手く書けないのですが(苦笑)

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向井 
どのような方に万年筆の世界に入ってきて欲しいですか?

池内 
やはり、沢山書く方だとおもいます。

宍倉 
万年筆は流行に関わりなく、「新たに使いだす人」「使うのをやめる人」がそれぞれいて、絶えず一定の人々が使っている道具です。
その世界は、独自の時間で進んでいるのだと思います。
ペーパーレス化という事が話題に挙がりますが、
私は、「手書きは心」つまり「愛」だと思っているので、
今後も無くならないと思います。

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向井 
今日は、実際に宍倉さんの万年筆コレクションをお持ちいただいています。

素人目にも凄いことが分かりますが、どのような基準で選ばれているのですか?

宍倉 
自然の流れで集まってきたといいますか、全部毎日、使うんですよ。
「ご機嫌いかが?」なんて感じで。

池内 
僕も毎日チェックしてますね。
「そろそろインクが少なくなってきたぞ、やった!」みたいな感じで。

向井 
「インクが減って嬉しい」というのは初めて聞きますが(笑)!?

宍倉 
インクを使い切った達成感と、新しい色のインクが入れられる喜びですね!!

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向井 
これだけ愛情を持って接していれば万年筆もさぞ嬉しかろうと思います。
先ほど人と共に万年筆も成長する、というお話がありましたが、
万年筆のコレクションも時期が来たら「次の人に手渡す」ということはあるのですか?

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宍倉 
もちろんです。
「次の人に手渡した方がふさわしいな」という事になりましたら、
「自分の手から離れて信頼できる後輩に渡していく」というのはあります。

池内 
自分も同じく、家族に渡したものがありますよ。

熊谷 
私も父から受け継いだ一本があります。
父が使っていたものなので、育っていて(馴染んで)使いやすいんです。
良い万年筆はそうやって受け継がれて行きますね。
 
宍倉 
万年筆って、「人」に似ているんです。
使っていないと「すねるし、寂しがる」んですね。

向井 
「便利・楽ちん」というだけでない、
「手間をかけて育てていく」という話は
人付き合いの極意にも通ずる所がありそうですね。

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宍倉 
そうですね。「便利・楽ちん」なだけだったら、見切るのも簡単です。
「手間暇をかけるからこそ」というのはあると思います。
万年筆は使って育てていく事で、自分の体の一部のようにもなりますし、
自分の分身や家族・パートナーに例えられるお客様もいらっしゃいます。

熊谷 
万年筆への「愛」を感じますねえ・・・。

万年筆の修理を通じて、ペンドクターは何を「診て」いるの?

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向井 
だいぶ深い話になってきましたね(笑)。
ここからは万年筆の修理のお話を伺います。

素人の素朴な疑問です。
具合の悪い万年筆を送ってもらって工房でまとめて修繕するという方が効率いいような気もしますが、
わざわざ各地に出かけていく理由は何ですか?

宍倉 
私の性格からして、一つの場所でじっと留まっていることができないといいますか、待っているのが性に合わないんですね。
ただ工房で待っているだけなら出会えていない数のお客様に出会えていると思いますし。

池内 
「自分で出かけていって出会っていく」というのが羨ましいです!
当店でも宍倉さんのペンクリニックを年1回開催するのですが、
お客様の笑顔と満足度が高くて、
「いいお仕事だなあ・・・!」と隣で見ていて思います。

宍倉 
ありがとうございます。
私は、他のペンドクターとは異なりメーカーの製造畑からではなく、まず販売からスタートしました。
特定のメーカーの商品に捉われずに一ユーザーとして自分のお金で買ってたくさん使っていることが、自分の強みだと思っていますし、
そこはどのペンドクターにも負けない自負があります。

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池内 
宍倉さんに見ていただいた万年筆は、凄く書き味が良くなって、お気に入りの一本になるんです。
手は正直なもので、書きたくなるし、書ける機会が来ると「ラッキー」って思うぐらい。
筆圧かけなくても、スルスルかけるんです。

熊谷 
「ペンドクター」って、素敵なお仕事ですね!
自分もやってみたい、と思われる方もいるのでは?

宍倉 
ペンドクターのお仕事自体は体力・精神力を物凄く使うので、
あまりお勧めはしていないんですよ(苦笑)。

技術というよりは、依頼主の気持ちを読む力がとても大事な仕事です。
何を望んで修理をご依頼されているか、ということですね。

中には修理できないものもあります。
その場合、いかに納得していただける説明をして差し上げるか。
思い入れのある品の話ですから、依頼主の方のお気持ちを察するのが大切です。

熊谷 
まるで病院の「告知」みたいですね・・・。

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宍倉 
万年筆は「人」と同じなんですよ。
使わないと寂しがるから、使ってあげないといけないし、
打ちどころが悪いと致命傷を負ってしまうんです。

ただ、手を掛けてあげるだけ返ってきますし、裏切らない道具だと思います。
「手をかけていく」というのが物への愛情です。

そして、ひとと一緒に成長していく道具なんです。
育てることで魅力が出てくる。
ペンドクターというのは、ペンに触る訳で、それはその依頼者の「心に触る」と思ってやっています。

先ほどお話しましたが、ご希望通りの修理ができないケースもあります。
理由のご説明をする訳ですが、自分のポリシーとして、「自分が実際に体験したことしか言わない」ようにしています。
例えば「自分で買って、実際に試す」ということです。
自分が体験したことを自分の言葉で言うことで、
依頼者の方に納得していただける言葉になると考えています。

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池内 
「単なる技術の話だけ」ではないんですね。
対面修理でおこなう理由が分かりました。
 私もこの間、宍倉さんからアドバイス受けたのですが、
説得力が凄くて、納得しました。
「人の内面に触れる」というのはカウンセラーのようでもありますね。

熊谷 
単なる万年筆のお話ではなくなってきましたね(一同笑)。
深いなぁ・・・!

宍倉 
一人として同じ人がいないように、万年筆も同じ一本はありません。
それだけに大切な一本をお預かりしている自覚を持ってやっています。

さらに人の内面に触れつつ進めますから、クリニックを終えると、
どっと深いところからの疲れを感じることはありますね。
でも、お客様からの感謝の言葉で取り戻すことができていると思います。
 
向井 
それだけのことをされながら、仕事だけではなくて、
発散の場である趣味も文具ってすごくないですか?

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宍倉 
私、公私の隔てがないんですよ(笑)。
お客様から良く、「素ですよね!」って言われるんです(笑)。

いい事も悪い事もこだわらずに自然に受け止めるようにしているんです。
こだわって、「これでなきゃ」ってやってしまう方が、
疲れてしまうと思うんですよね。仕事だからといって自分が無理に変わるというのも、変だと思いますし。

なんでも受け入れるようにしているので、人には合わせやすい方だと思います。
仕事も趣味も自然体でいる事が、
何事も無理なく長続きさせる秘訣だと思っているんですよ。

向井 
宍倉さんのその軽やかな姿勢が、自然で多くの方からの依頼という信頼に繋がっているのだと思いました。

いやー、今回は万年筆から出発してだいぶ深い話になりましたね。
お話は尽きませんが、最後に一言どうぞ。

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池内 
今日はとても勉強になりました。
繰り返しになりますが、「万年筆を気軽に試していただきたい」と思います。
きっと楽しんでいただけると思います。

熊谷 
楽しい世界が一つ増えますよ!

宍倉 
仕事で使うというのもいいのですが、
ゆったりとした手書の楽しみを万年筆で味わっていただきたいです。
ゆっくりじっくり自分に向き合う贅沢な時間を過ごしていただけると思います。

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○万年筆対談、いかがでしたでしょうか?
宍倉さんのペンクリニックの情報は、
サンライズ貿易様のWebサイトにてご確認ください。

サンライズ貿易様のWebサイト

https://www.sunrisenet.co.jp/

※東急ハンズ新宿店での次回のペンクリニックは来年秋頃の開催予定です。 

写真:小松貴史
文責:向井(『一杯の珈琲商店』店主)

新宿店4F 一杯の珈琲商店

珈琲を実際に挽くこともできるのでぜひお越しください。本当は鉄道が好きなのですが、そこにはあまり触れないでください。

新宿店6F 世界にひとつだけの商店

私達の店は「クラフト」がテーマですが、「私でもつくれるんだ」と感じていただければ嬉しいです。例えば、銀の線を巻くだけでアクセサリーをつくれたり、クラフトの材料になるとは思えなかった素材をアレンジしてかわいい小物をつくれる、ということを体験していただいたり、つくり方の提案をさせていただければ、と思います。ぜひ「これからものづくりをしてみたい」という女性に足を運んでいただきたいです。

新宿店8F 万年筆のエフピー堂

万年筆って敷居が高いって思われがちですが、持った時の優越感に浸れるし、人生が豊かになれる気がします。万年筆にはそれぞれメーカーのこだわりやストーリーがあるもの。そんなエピソードを交えながら、あなたに合った万年筆を一緒にお探しいたします。

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