2022年で3回目を迎えた「アンブレラアワード」。傘メーカーや販売スタッフといったその道のプロが、「自社製品投票NG!」の厳格なルールのもと、年間のナンバーワン傘を決定するガチ企画です。傘ソムリエこと土屋博勇喜さんと、トラベル・ウェザー用品担当バイヤーの佐藤宏樹が、栄えある受賞作を発表!2022年の傘トレンドを振り返ります。
【プロフィール】
傘ソムリエ 土屋博勇喜さん
傘メーカー、株式会社シューズセレクションの仕入・売り場責任者。2019年より傘の魅力を広く伝える世界初の「傘ソムリエ」として活動を始める。傘やレイングッズの開発・監修、商品紹介動画の配信、各種テレビ番組への出演など、傘にまつわる幅広い分野で活躍している。「自分でさして納得した傘だけをお客様に届けたい」という思いから、給与の大半を傘に注ぎ、100本を超えるコレクションを持つ。
ハンズ トラベル・ウェザー用品担当バイヤー 佐藤宏樹
スーツケースの伝道師としてトラベル用品全般の情報発信を行っている。また、アンブレラ・マスターの資格を持ち、傘やレインウェアなどレイン用品の担当バイヤーとしても活躍。
アンブレラアワードってどんな賞?
-今日は栄えあるアンブレラアワード2022をご紹介いただくわけですが、その前に気になることが...。そもそも傘ソムリエとはなんなのでしょう?
傘ソムリエ土屋さん:傘選びをお手伝いするコンシェルジュですね。お客さまのニーズを聞き出して、ぴったりの傘をご提案しています。
佐藤:なぜそんなことが必要なんですか?
傘ソムリエ土屋さん:えっ!?と...。傘って特徴のわかるものがタグしか付いていないんですよね。でもそれを見たからってすべてがわかるわけではないじゃないですか...。
佐藤:はい。「傘って実はいろんな機能があるのに、あまり知られてないんです。それを知らないためにうまく使いこなせない方がたくさんいる、そして使いこなされないまま捨てられていく傘がたくさんある。そんな状況を救いたい。そういう想いで活動している」と彼は言っています。
-佐藤バイヤーは、傘ソムリエの通訳かなにか...?
傘ソムリエ土屋さん:いや...もともと僕はハンズの社員だったので、佐藤さんとは先輩後輩の関係性なんです。常に越えられない壁が横にいる感じで...。
佐藤:いやいや、彼ほど傘業界に貢献できる人間はいないと思っているので、目をかけているんですよ。
-ちなみに佐藤バイヤーはスーツケースの伝道師、ですよね?傘への思い入れというのは...?
佐藤:なにを言っているんですか。私は傘の仕入れも担当なんです。アンブレラ・マスターというちゃんとした資格も持っています。
-失礼しました...!お二人の力関係もわかったところで、本題のアンブレラアワードですが、これはどんな賞なのですか?
傘ソムリエ土屋さん:はじめは僕がツイッターで個人的にアワードをはじめまして、そうしたら佐藤さんから「なに一人でやってんだ、もっとちゃんとやったほうがいい。」とお叱りを受けて(笑)。それでいろいろ相談して、バイヤーの力を借りながらスタートした企画です。
佐藤:私たちも旅道具大賞というのをやっていたので、それの傘バージョンもできると思ったんです。メーカーの垣根を越えて横断的に実施するためにお手伝いしました。
過去の受賞作と2022年の傘トレンドを振り返ろう!
-それが2020年ということで、2022年で3回目の開催ですよね。簡単に過去の受賞作を振り返ってみましょう。
傘ソムリエ土屋さん:2020年の総合1位はurawaza(ウラワザ)。この年の新商品として発売されて、圧倒的な強さをみせましたよね。
佐藤:他社をWスコアくらいで引き離しましたね。
傘ソムリエ土屋さん:ボタンを押すだけで一発できれいにたためるという。裏に形状安定パネルが貼ってあるので、しわくちゃにならないんです。
-濡れた生地を引っ張り出してたたむの、何気にストレスですもんね。
佐藤:裏に技があるからurawaza。軽量タイプが出たり、袋もしまいやすくなったり、マイナーチェンジを繰り返して進化しています。補足すると、きれいにたためるということは、骨に不要な力が加わらず、正しい位置に収まるということ。だから、長持ちするということにも繋がっているんです。
-なるほど!勉強になります。つづいて2021年は?
傘ソムリエ土屋さん:2021年はIZA(イーザ)です。この年の新商品でした。
佐藤:男の日傘として出てきたんだよね。なんで売れたと思いますか?
傘ソムリエ土屋さん:コンパクトで軽いというのと、カラビナが付いていたり男性の好きなガジェット感がありますよね。この頃から男性日傘がメディアで扱われはじめたというのもあると思います。
佐藤:ふむふむ...それだけ?
傘ソムリエ土屋さん:えっ!?あと...キャンペーンモデルで起用されていたのが窪塚洋介さんだったんですよね。男性モデルが日傘を差しているというのに親近感をもっていただけたのかと。
佐藤:そうね。それと、持ち物の変化というのもあると思うんです。パソコンがタブレットになったり、荷物が小さくなってきたんですよね。リュックも薄マチのものが流行りましたし。その中で、傘もコンパクトで軽いものが求められるようになった。そういう時代のニーズにあわせて必然的に売れたんだと思います。小さいものって広げた時も小さいわけですが、これは通常の日傘の50cmにくらべて5cm大きい55cmなんです。大判とまではいかないけど、男性にも十分使っていただけるサイズだったのが受けたのかなと。
左(2020アンブレラアワード1位):
urawaza 折りたたみ傘 各4,290円(税込)、自動開閉 各5,280円(税込)
右(2021アンブレラアワード1位):
IZA スーパースリム 各4,620円(税込)
-なるほどよくわかりました。過去の受賞作を振り返っていただいたうえで、2022年の傘トレンドとしてはどんな傾向が?
傘ソムリエ土屋さん:ビニール傘の種類がすごく増えましたよね。長く使えるおしゃれビニール傘みたいな。
佐藤:なるほどなるほど...?それはなんで?
傘ソムリエ土屋さん:先輩、なんかさっきからすごい詰めてくるじゃないですか...。年間で6,000~8,000万本くらいビニール傘の消費があるなかで、SDGsの観点から「捨てられないビニール傘」をつくろうみたいな機運もあったと思います。これまでそういうビニール傘をつくっているメーカーさんって数えるほどしかありませんでしたが、ここ数年ですごく増えましたよね。
佐藤:そうだね。少し前からおしゃれビニ傘のトレンドは兆しがあって、ひとつはSNSの影響もありそうだよね。かわいくて映えるビニール傘。あとは、傘だけでなくファッション業界の定説として、大きな災害や混乱のあった後は明るい色や柄物が流行るという傾向があるから、少しひとの動きが出てきはじめた2022年は、持っていて楽しくなるようなものがトレンドとして出てきた感じがありますね。
いよいよ、アンブレラアワード2022を発表!
-2022のトレンドがわかったところで、いよいよランキングの発表をお願いします!
傘ソムリエ土屋さん:第三位は、G-ZERO(Gゼロ)!いやー、強いですね。2021年も2位でした。
-これはどこがすごいのでしょう!?
傘ソムリエ土屋さん:ちょっとギアチックな、リップストップナイロンの仕様になっているんですね。
-???
傘ソムリエ土屋さん:いや、あの、パラシュートクロスと同じような編み方で...。
-??????
佐藤:あなた、専門用語すぎるって!パラシュートに使う生地と同じ編み方をして、裂けにくい丈夫な生地にしているんですよね?
-なるほど!それで生地が強くなっているということですか?
傘ソムリエ土屋さん:そうです。メーカーさんのYouTubeでは電動ドリルでも穴が開かないという実演をやっていましたよね。遮光、遮熱効果のためでもありますが、裏にもコーティングがされています。中骨から先骨までカーボンが使われていますね。
佐藤:カーボンというのはどんな素材なのか説明してもらえます?
傘ソムリエ土屋さん:飛行機とか、ロードバイクのフレームに使われたりする素材です。軽くて強度があるのが特徴です。
佐藤:釣竿とかにも使われるよね。
-釣竿!よくしなって丈夫ということですね!わかりやすい!
傘ソムリエ土屋さん:先輩!私を先に言わせて自分のほうがうまいこと言おうとしてるじゃないですか!
-仲良くやりましょうね・・・。
佐藤:G-ZEROの開発に関わったのはコパコーポレーションというのは実演販売士の会社なんですよ。そこがキモだと私は思っています。コロナ禍でお店にいけない時期が長かったじゃないですか。知られてないって、存在しないのと同じこと。そのなかで、認知させることに長けている人たちが関わったというのがいちばんのポイントかなと思います。先ほどのドリルの実演もそうですし、軽さを表現するために風船で浮かせたりしていましたね。そういったキャッチーな表現で発信することで、しっかり届いたんですよね。こう、傘を広げるように、多くの人に情報を広げたんですよ。
傘ソムリエ土屋さん:本当にやめてくださいよ、僕よりうまいこと言うの...やりにくいわ...。
-では、気を取り直して、つづいて第2位は!
傘ソムリエ土屋さん:IZA(イーザ)です!
佐藤:ディフェンディングチャンピオンならず!ですが堂々の2位ですね。G-ZEROのユーチューブと同じで、IZAも多くの人に発信したことで届いたブランドですよね。窪塚洋介さんに続いて2023年はオダギリジョーさんがイメージモデルをされています。
傘ソムリエ土屋さん:傘の広告で芸能人を起用するというのは斬新でしたよね。POPも、機能だけを紹介するものから、モデルが使っているシーンを見せることで、イメージつきやすくなったんでしょうね。
佐藤:今年はコンパクトなのに広げると大きいという新商品が出たので、2023年はチャンピオン返り咲きも狙えるかもしれないですよ。
IZA ZA010 LARGE&COMPACT 各4,400円(税込)
傘ソムリエ土屋さん:従来の55cmでも男性は十分使えるサイズ。ただ58cmになるとリュックを背負う人でもしっかりカバーできるのがポイント。骨の数も5本から7本になって、強度も高くなっています。5段折でコンパクトに折りたためますし、これは期待できますね。
-ではいよいよ、第一位の発表をお願いします!
傘ソムリエ土屋さん:旅する喫茶です!!
旅する喫茶 meets Wpc.
クリームソーダ 折りたたみビニール傘 各3,080円(税込)、ビニール長傘 各2,970円(税込)
佐藤:これはもう、先ほどの「気分が上がるものが流行る」という話と、レトロブームがあいまった、時代の申し子的な存在でしたよね。
傘ソムリエ土屋さん:間違いないですね。SNSの使い方もうまかったですし、圧倒的でした。さくらんぼのチャームが付いていたり、折りたたみのほうは持ち手がアイスクリームをイメージしていたり、細かいところまで本当にこだわっています。
-ちなみにこれはお持ちじゃないですよね...?
傘ソムリエ土屋さん:え?全色・全種類持ってますよ?
-それは、実際に差して使っておられる?
傘ソムリエ土屋さん:もちろん。金木犀(オレンジ)がお気に入りです。佐藤さんは新緑(グリーン)が似合いますよ。
佐藤:は、はい。
傘ソムリエ土屋さん:ソーダ感がちゃんと表現されているんですよね。しかも雨に濡れた時に本当にシュワシュワした感じに立体的に見えるんですよ。発売当時なかなか手に入らなかったですもんね。
佐藤:ひとり一本限りって数量制限を設けた傘なんて、これまでなかったですよ。もともと3色発売されて、秋に2本追加されたんだよね?
傘ソムリエ土屋さん:はい、もう、この子めっちゃかわいいんですよ...(うっとり)。差していて楽しいですもん。このチェリー感とか...うふふ。
佐藤:・・・
傘ソムリエ土屋さん:ちょっと、なに引いてるんですか!
傘ソムリエの個人賞と、佐藤バイヤー注目の新作は?
-なんだかへんな空気になってきたので、話を変えましょうか。傘ソムリエ、なんでも受賞を逃したけれど個人賞をあげたい傘があるということで?
傘ソムリエ土屋さん:はい。これ、なんで受賞できなかったか不思議だったんですよ。「そなえる傘」です。出た時すごいと思ったんだよな〜。
そなえる傘×ハンズ 晴雨兼用折畳傘 60cm 各3,850円(税込)
-そなえる、というのは?雨にそなえる?
傘ソムリエ土屋さん:いや、違います。すべてにです!!
-いきなり自信満々...
傘ソムリエ土屋さん:これまず傘袋のプリント部分の色の変化によって、UVが確認できる仕様になってるんです。だから、色が変わったら日傘を差しましょうね、ということ。あと、ここに緊急用の笛が付いています。袋からすごいです。傘もすごく凝っていて、まず縁がリフレクターになっています。裏はコーティングされているので遮光・遮熱性もあり、日傘になる。さらに、オチョコになってもすぐ元に戻る耐風構造です。まさに全部載せっていう感じ。
傘ソムリエ土屋さん:通常商品は親骨55cmと男性にはちょっと小ぶりなんですが、ハンズコラボの製品は親骨60cmなんですよね。あと、ネームバンドも本体に留められてプラプラしないのもいい!これもっと流行っていいのにと思うんですけどね...。
佐藤:でもすごく売れましたよ。手元が抗菌仕様になっていたり、パッケージの素材にもこだわっていたり。コロナ禍になって「なにごとにも備えよう」という動きが出たんですよね。その流れで生まれた、時代を反映した商品でした。
傘ソムリエ土屋さん:2022は残念でしたが、次回に期待です!
-最後に佐藤バイヤーが、2023のアンブレラアワードに選ばれそう!と注目している傘があるそうなので、ご紹介いただけますか?
佐藤:これですね、アデリア。2022で1位をとった「旅する喫茶」からのいい流れを受けて、今年はこれが注目なんじゃないかと。これまでやっぱり傘に"コレクションする"という概念がなかったと思うんですが、これはいくつも集めたくなりますよね。食器や雑貨もあるシリーズなので、トータルで揃えたくなります。
アデリアレトロ×エスタ 長傘 各3,520円(税込)、ミニ傘 各3,520円(税込)
傘ソムリエ土屋さん:わぁ〜!まじアデリア。やばい。佐藤さんこれかわいい〜。
佐藤:レトロな感じがかわいいよね。機能的な面でいうと、この傘はかなり深いかたちだけど、縁がビニール素材だから前が見えて安全だよね。
傘ソムリエ土屋さん:僕個人的にはこの折傘が気に入りましたね。グラスみたいなルックスもかわいいし。曲がりハンドルだから長傘感覚で使えますね。骨もポリカーボネートを使っていたり、風にも強いつくりになっています。ここに小窓が付いていたりして、めっちゃ凝ってますよね。かわいいだけじゃない!
佐藤:デザインだけでなく、機能的な良さに気付くとはさすが傘ソムリエ!これは数に限りがあるのでどうぞお早めに!
-来年度のアンブレラアワードも楽しみですね!本日のまとめに、傘ソムリエ、2022年の受賞作にソムリエっぽい一言をお願いします!
傘ソムリエ土屋さん:ええ・・・
佐藤:ワインでいう、「濡れた子犬のような」とか「腐葉土のような」みたいなやつだよね?
-そういう、ソムリエらしいやつでお願いします。
傘ソムリエ土屋さん:うーん...、わかりました...!
傘ソムリエの名コメントで振り返る、アンブレラアワード2022
第一位:旅する喫茶 meets Wpc.クリームソーダアンブレラ「哀愁漂う美傘」
第二位:IZA(イーザ)「中目黒のセレショの遅番スタッフ」
第三位:G-ZERO(Gゼロ)「十種競技の学生チャンピオン」
おわりに
時代背景を捉えながら、さまざまなトレンドが生まれている傘の世界、いかがでしたか?現在はハンズと一部のショップで展開されている「アンブレラアワード」ですが、今後は全国規模のイベントに拡大すべく進化を続けていきます!アンブレラアワードを開催してくれるショップさんも随時募集中!いっしょに傘業界を盛り上げていきましょう!
深堀りしたら、くらしが豊かに、もっと楽しく!ヒントマガジンプラス>>
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