純喫茶マニアは、喫茶店をどう楽しむのか?純喫茶ファンミーティングを開催しました

レトロな雰囲気の店内、一人でお店を切り盛りするマスター、おいしいコーヒーやスイーツ...。店主のこだわりが店の個性として色濃く反映される喫茶店は、明治末期の誕生から今の時代までたくさんの人に愛されてきました。

ハンズでは、喫茶店を特集した〈2020年 純喫茶 週めくりカレンダー〉を発売。日本各地の喫茶店47店舗を集約した、純喫茶好きにはたまらない一冊です。
発売を記念して、〈純喫茶カレンダー〉をご購入、イベントにご応募いただいたハンズクラブ会員様にお集まりいただき、ハンズ本社にて「純喫茶ファンミーティング」を開催しました。

今回お話しいただくのは...

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左:純喫茶コレクション・東京喫茶店研究所 二代目所長 難波里奈さん
東京喫茶店研究所という架空の研究所を引き継いで日本各地の純喫茶を巡り、「純喫茶コレクション」という名義でSNSを中心に純喫茶の魅力を発信している。
純喫茶コレクションTwitterアカウントはこちら>>

右:いか文庫 店主 粕川ゆきさん
お店も売る本もない架空の本屋「いか文庫」を運営。街の本屋でイベントやワークショップを開催したり、雑誌やラジオ、テレビなどでおすすめの漫画や本の紹介をしたりしている。
いか文庫公式サイトはこちら>>

粕川:皆さん、本日はお越しいただきありがとうございます。ハンズ喫茶へようこそ。千葉県の銚子から3時間もかけて来てくださった方もいるようで大変感動しております。皆様、たのしい時間を過ごしましょう。

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抽選で選ばれたハンズクラブ会員の皆様

難波:そして私は国内計47店舗の喫茶店情報を集約した〈2020年 純喫茶 週めくりカレンダー〉の監修をしました難波と申します。よろしくお願いいたします!

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2020年版・卓上 ハンズ限定 純喫茶 週めくりカレンダー 1,500円+税
※2020年度版は販売終了いたしました。

難波:私は「東京喫茶店研究所」という架空の研究所を引き継いで、所長として純喫茶の魅力を発信しています。この活動は一人で行っているのですが、こうやって集まってくださる皆様やSNSで純喫茶のことを発信してくれる方々を勝手に所員だと思い、日々感謝しています。
今日お集まりいただいた皆様には、〈名曲・珈琲 新宿らんぶる〉さんのケーキをご用意しました。ぜひ召し上がってください。

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難波:そして今回は「架空」つながりで「エア本屋 いか文庫」を運営する粕川さんにもお越しいただきました。

粕川:「エア本屋 いか文庫」店主の粕川です。エアギターならぬ、エア本屋!お店も売る本も存在しない架空の本屋を運営しています。

主に街の本屋さんにいか文庫コーナーをつくってもらい、その時々のテーマに合わせた本を紹介しています。私も喫茶店が好きなので本日はお邪魔させていただきました。それにしても〈2020年 純喫茶 週めくりカレンダー〉には魅力的なお店がたくさんありますね。喫茶店のどこに魅力を感じられますか?

難波:一番は空間です!日本各地をまわっていろんな喫茶店に出会いましたが、お店一つひとつに個性があります。外観、テーブル、椅子、照明、壁紙、食器などの、色合いや柄、フォルムに個性があるところが好きです。

そしてお店のマスターのことも尊敬していまして。朝早く起きて、掃除、調理、接客、会計を一人でこなすんですよ。こんなに大変なのにコーヒーが500円だなんて、それでいいの!?という気持ちになります。パワフルな姿を見ていると元気づけられますし、「お店を続けてくださってありがとうございます!」と心から思います。

粕川:そんな風に考えたことありませんでした。私はただ「おいしい」「落ち着く」くらいに思うだけだったので。難波さんの純喫茶愛にすでに飲み込まれそうです(笑)。

難波:カレンダーまでつくってしまうくらい純喫茶を愛していますから!

粕川:では、純喫茶カレンダーの楽しみ方を教えていただけますか?

難波:ページをめくるたびに心が踊るような、癒されるような、そんな気持ちが味わえる一冊です。自分がこの空間にいることを想像したり、実際に足を運んだりしていただけたらうれしいです。
また、「4/13は喫茶店の日」など喫茶店にまつわる豆知識も入っているのであわせて楽しんでみてください。

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粕川:遊び心があっていいですね!

難波:ではここからは、私が恋した喫茶店を一部ご紹介します!
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一目惚れした内装、名物のハンバーガー?

難波:最初にご紹介するのは東京の武蔵小金井にある「KEN コーヒー&パブ」さんです。
店内に入ってまず目に飛び込んでくるのが壁一面のタータンチェック柄。

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粕川:全面タータンチェック柄のお店は珍しいですよね。

難波:そうなんですよ!初めて見たときはすごく感動しました。マスターにお話を聞いてみると50年くらい前のイギリス製らしく!わざわざ取り寄せるなんて、かなりこだわっていますよね!
また、マスターのこだわりはメニューにも。「うちの店はハンバーガーが人気だよ」とおすすめしていただいたので注文したら、想像とは違うハンバーガーが出てきました(笑)。

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粕川:ん?これはサンドイッチ?(笑)

難波:ですよね(笑)。でも、マスターは「ハンバーガーだ」とおっしゃっていました(笑)。
具はちゃんとハンバーガーだから、開発当時はバンズが無くて食パンを代用したのかな、そして令和になった今までこのスタイルで来たのかも...とか想像すると愛しくなっちゃいます。味は文句なしのおいしさです!皆さんにもぜひ味わっていただきたいです!

お客様を楽しませるための、おもてなし精神に脱帽

難波:続いてご紹介するのは、石川県小松市にある「パーラー アコ」さん。
扉を開けると美しいジャズの音色とともに大きなスピーカーが出迎えてくれます。

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難波:マスターはジャズが本当に好きで、お客様にいい音で自慢のレコードを聞いてほしいと、スピーカーの配置にまでこだわっているんです。客席に座れば最高の音楽を最高の音で楽しむことができますよ。
普段はお客様ファーストでレコードを流しているので、閉店後はよくひとり客席に座って贅沢な時間を堪能しているそうです。

粕川:なんだか微笑ましいですね。

難波:そしてトキメキはもう一つ!店内にあるメニュー板がたまらないんです。

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難波:昭和の喫茶店を思わせる独特な字体や「楽しいお飲みもの」という言葉選び。これを見ているだけでご飯三杯は食べられますよね(笑)。この他にも店内に貼り出されているマスターの格言など、お客様を楽しませる工夫がたくさん詰まっているんです。

粕川:どんな格言なんですか?

難波:その日は「生きているだけでラッキー」のような内容でした。元気をもらえますよね。辛いことがあってもここへ行くと絶対元気になると思う!何度でも訪れたい場所です。

夢に見るほどパーフェクトな喫茶店

難波:続いて山口県防府市にある「純喫茶 エトワル」さん。
まずご覧いただきたいのが外観です。大きな窓から見える丸みを帯びたレースのカーテンは昭和の喫茶店の象徴。窓の向こうに広がる世界を想うと胸がドキドキします。

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難波:店内も期待を裏切りません、いや期待以上です。一本足の象牙色の椅子にはときめかずにはいられませんし、壁に飾られている大きな絵はまるで美術館にいるような気分にしてくれます。

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難波:コーヒーはお家でも飲めますが、わざわざ喫茶店へ足を運ぶのは「味」だけではなくこだわりの「空間」を楽しめるから。
絵やインテリアが何百万円しようともコーヒー一杯の値段は変わらないじゃないですか。だけど内装にお金をかけるのは「お客様を楽しませたい、少しでもゆっくりとくつろいでほしい」というマスターたちの気持ちだなと。そういう心意気にグッと心を掴まれます。

粕川:どこを取っても絵になりますね。

難波:夢に見るほど大好きな空間です。そしてぜひ召し上がっていただきたいのがマンゴーパフェ。(※季節限定)

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粕川:わ!すごくおいしそう!

難波:生マンゴーを使ったこだわりのパフェで、新鮮なマンゴーが入った時しか注文できないスペシャルメニューなんです。ソフトクリームと濃厚なマンゴーのハーモニー。これで1,000円程だからびっくりですよね。

粕川:東京では考えられないお値段ですね。

難波:本当ですよ。誰か「純喫茶 エトワル」への直行便をつくってくれないかな...。

お気に入りの席で味わう喫茶店の定番メニュー

難波:続いては群馬県高崎市にある「喫茶 コンパル」さん。
商品サンプルが並ぶショーケースを見ると幼い頃を思い出すようで懐かしい気持ちになります。そして入り口へ向かうまでの階段の壁に描かれたこのカラフルなライン! この先にどんな空間が広がっているのだろうと思うと居ても立ってもいられません。

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難波:広くて大きな窓がある店内は解放的。席数も多いのでぜひお気に入りの場所で満喫していただきたいです!

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難波:私は窓際の席を選びました。草花がたくさん置いてあるのですが、美しく見せるためのものではなく、勝手に増えてしまった感があふれ出ていてたまらないんですよね。

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粕川:本当だ(笑)。植物のチョイスも絶妙ですね。テーブルや椅子なども昭和の雰囲気を感じられていいですね。

難波:クリームソーダに使われているグラスも昭和につくられたものでした。

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難波:このぼってりとした重厚感、デコラティブな見た目がよき時代を反映していますよね。

粕川:ええ、グラス一つで贅沢な気分になりますね。

難波:贅沢といえば、ここのプリンアラモードはかなりすごいですよ!

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難波:プリンとたっぷりのフルーツが味わえる一品です。プリンはマスターの手づくりなのですが、決まったレシピがないらしくいつも味が違うんです(笑)。この日は少し塩が多くて(笑)。それもまた愛おしくて、今度きた時も絶対食べようと誓うのです。

粕川:この「ゆるさ」「自由さ」は喫茶店ならではな気がします。

難波:そうですね。ここのマスターは本当にチャーミングな人なんです。「L'Arc〜en〜Ciel」と書かれたキャップをかぶられていて...。

粕川:ファンなんですかね?

難波:聞いてみたら「知らん」って(笑)。お客様からもらったものをかぶっているみたいなのですが、その姿が可愛くて。

粕川:きっと素敵な人なんだろうなと。お会いしてみたいです。

難波:ぜひ群馬へ行かれる際は立ち寄ってみてください。

階段の先に広がるのは甘美な誘惑の世界

難波:最後にご紹介するのは福井県福井市にある「王朝喫茶 寛山」さん。
まず、看板に書かれた「王朝」という文字に「なにここ!」となりませんか?「王朝」と聞くと甘美な印象がしますよね。きっとこの言葉に心を掴まれて、当時福井中の人がこの店に集まったんじゃないかな(笑)。

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難波:さらに魅力的なのがこの階段です。下を覗いても奥が見えないんですよ。降りた先にどのような世界が広がっているのかとドキドキが止まりません。

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粕川:これは気になりますね!

難波:階段を降りるとまたびっくり!楽園を思わせるような壁画が出迎えてくれます。

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粕川:異世界感がすごい!

難波:そうなんです!ここは福井だよね!?と自分に問いかけました。
店内は広々としていて高級感があります。なんと柱が53本もあるんですよ。徹底した世界観づくりに感心します。

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粕川:宮殿みたいですね!喫茶店と一括りにいってもお店によって全然印象が違うのでおもしろいです。ところで、心をグッと掴まれるお写真は難波さんが撮影されたんですよね?

難波:ええ。カレンダー掲載の写真は私が撮影しました。

粕川:そうなんですね!素敵に撮るコツを教えてください!

難波:後でトリミングするのではなく、この1枚にかける!という気持ちでシャッターを切ります。そのために、影やゴミが入っていないか、ガラスに映り込みがないかを徹底的に確認してから撮ります。空いている席に人が座ってしまわないか、お料理が冷めてしまわないか、時間との戦いです(笑)。

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粕川:まさに、後でトリミングすればいいやと思っていました(笑)。次から意識してみます!

純喫茶・本に夢中になった理由とは

粕川:なぜこんなにも喫茶店に夢中になったのですか?

難波:10年ほど前、会社に行きたくなくて精神的に辛い時期があったんです。朝起きてすぐに「早く帰りたい」と思うほど億劫で。家から会社まで電車で30分かかるのに自転車で行こうとして、でも途中で間に合わない!と焦って自転車を乗り捨てて結局電車に飛び乗ったり。とにかく変な行動ばかりとっていました。

そんな頃、喫茶店へ行くようになってぼーっとしたりマスターや常連さんとお話をしたりするようになったんです。だんだん心が穏やかになっていくのがわかりました。当時の自分を支えてくれたのは喫茶店やマスターたちの存在が大きかったなと。そこからもっとたくさんの喫茶店に出会いたいと思うようになったんです。
粕川さんはどうして本の世界へ?

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粕川:私も難波さんと少し似ています。もともと「ヴィレッジヴァンガード」で働いていて、そこで師匠に出会い「本の売り方」、具体的には商品の紹介をするPOP(ポップ)の描き方を教わったんです。
もともと本や漫画は好きだったのですが、「売る」ということの楽しさを知りました。そこからどんどん夢中になって寝る間も惜しんで働いていたんです。

でもそういう生活を続けていると心が病んできてしまって。そんな時、よく通っていた喫茶店のマスターが私のことを褒めてくれたんです。他のお客様に「この子POPが描けるんだよ!」って。世界がパーッと明るくなりました。マスターのおかげで前向きになれて、いか文庫を立ち上げるきっかけにもなりました。

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難波:喫茶店ってあたたかいですよね。お店に行けば、家族でも友人でもない適切な距離感のマスターや常連さんがいると思うとすごく心強い。

難波さんがセレクトしたお土産をご紹介

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難波:今日、お集まりいただいた皆様に感謝を込めてお土産をご用意しました!純喫茶好きの皆様にぴったりのアイテムですよ。
まずはこの〈ミニがま口〉。これはお守りです。私や粕川さんのように皆様も喫茶店が心の支えだと思います。もし、落ち込むような日があればいつだって喫茶店に逃げ込めるようにここにコーヒー代として500円玉を入れておきましょう。お財布が無くてもこのお守りさえあれば、いつでも元気になれるはずです。
そして、〈つばめノート〉と〈わたしのペン〉。喫茶店のマスターやママさんは面白いお話をたくさんしてくれます。人生の参考になる格言がいつ飛び出すかわかりません。喫茶店へ行くときはノートとペンをカバンに潜ませておいてください。

おわりに

心を穏やかにしてくれる純喫茶。今回のお話を参考に、皆様もいろんな喫茶店と出会ってみてはいかがでしょうか。

イベントに参加されたお客様からは「楽しくてもっとお話を聞いていたかった」「2021年も純喫茶カレンダーを販売してほしい」というお声を多数いただきました。ご参加いただき、ありがとうございました!

ハンズでは、今後もハンズクラブ会員様向けにさまざまなイベントを企画しています!ぜひチェックしてみてくださいね。
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喫茶店写真 撮影:難波里奈

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