「ダキシメテフタバ」のタオルマフラーに込められた想いとは? 

浅野撚糸株式会社と福島県双葉町のコラボレーションで生まれたタオルシリーズ〈ダキシメテフタバ〉をご存じですか?東日本大震災から10年の節目を迎える今、そこに込められた想いや描く未来について、浅野撚糸の専務取締役である浅野さんにお話を伺いました。新色にもご注目ください!

〈ダキシメテフタバ〉でつながる、双葉町の現在と未来

浅野撚糸といえば、"魔法のタオル"とも称される〈エアーかおる〉シリーズで知られ、50年以上の歴史を持つ、岐阜県に本社を置く撚糸製造・タオル販売の会社。そんな浅野撚糸と福島県双葉町のコラボレーションは、なぜ実現したのか。そして、〈ダキシメテフタバ〉の魅力と価値、描く未来とは...。

―今日はよろしくお願いします。

浅野さん:こちらこそ、よろしくお願いします。

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浅野撚糸株式会社 専務取締役 浅野宏介さん

―新色が登場するということですが、その前にまず、〈ダキシメテフタバ〉とは?というところから教えてください。

浅野さん:はい。〈ダキシメテフタバ〉は、〈エアーかおる〉シリーズの中のひとつで、東日本大震災で被害を受けた福島県の双葉町と、弊社の共同開発によるタオルシリーズです。2020年の4月に販売がスタートしました。

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エアーかおる ダキシメテフタバ タオルマフラー 各2,200円(税込)
新色(左からナチュラル、ローズ、チャコール、ネイビーブルー)です。

―どんなきっかけで共同開発に至ったんですか?

浅野さん:2019年のことですが、経産省の生活製品課から福島の復興に関連する企業誘致のお話をいただいたのがきっかけです。同年の7月に、経産省の企業トリップとして福島県内の放射能の影響を受けた地域を初めて見学しました。いくつかの市町村を回ったんですが、その中でも双葉町の状況は特に厳しく、町が震災当時のままでした。住民も帰って来ることができていない(2022年より帰還開始予定)ので、我々が進出したとしてもどうなるのか...という心配はありました。

―そんな厳しい状況を見ながら、なぜ双葉町への進出を決めたのでしょう。

浅野さん:誘致の見学の際に町長が自ら案内してくれたこと、その見学に行く前に双葉町側から「ぜひ来てほしい」とアプローチを受けていたこと、そして何より、なかなか復興が進まない中でも、町長をはじめとした役場の方々がすごく前向きで元気だったことが決め手です。そういう方々と一緒に取り組めるというのは二度と無いチャンスだと思いましたので、2023年の開業を目指して工場などの拠点を双葉町につくろうと決めました。

―決断はかなり悩まれたのでないでしょうか。

浅野さん:いえ、見学に行った帰りにはもう「双葉町に決めよう」という話になって、即決でしたね。その後10月に調印式を行い、福島の復興はまだ終わっていないということを発信していこうと決意しました。現地の状況については、我々も実際に行かなければ知らずに終わっていたと思います。「がんばれ福島」という気持ちで、マイナスからゼロ以上に、プラスの方向へ新しい町をつくっていく、その手助けが〈ダキシメテフタバ〉を通してできればと思っています。

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―双葉町側はどんな理由で浅野撚糸さんにアプローチしたのでしょうか。

浅野さん:建設や道路などの復興事業の会社は町づくりが完了するまでのつきあいですが、弊社はその後も現地で事業を継続できる会社であり、しかも最終製品を持っていてメディアでも取り扱われていたということで、双葉町側の思惑と合致したようです。

―当初から、工場などの建設を含めたお話だったんですか?

浅野さん:そうですね、住民が帰ってきた際の働き先の確保という面も含めて。でも当初、我々としては5,000㎡くらいの土地で撚糸事業だけをやろうと思っていたんですが、フタを開けたら双葉町の方から2.8ヘクタール(約28,000㎡)というとてつもない広さの土地を用意されて、絶対ここを使ってくれと(笑)

―想像がつかない広さです!

浅野さん:こちらとしても断るに断れなくなってしまって(笑)もうそれであれば、観光事業の活性化にもつながるような、双葉町の名物ともいえるランドマーク的なものにしようということになり、工場と店舗を複合した拠点「アサノフタバ SUPER ZERO MILL(仮称)」を2023年の開業を目指して建設させていただくことになりました。

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「アサノフタバ SUPER ZERO MILL(仮称)」の完成イメージ

―そこで〈ダキシメテフタバ〉が製造されるということですね。

浅野さん:本来であれば、現地で糸の製造を始めてから〈ダキシメテフタバ〉のブランドをスタートするのが順序です。でも東日本大震災発生から10年の節目を迎えるにあたり、町長や役場の方々からのたっての希望を受けて、商品の開発と販売を先行して行いました。

新色が登場するタオルマフラーは、使い勝手や機能にも注目!

―では〈ダキシメテフタバ〉の商品としての特徴を教えてください。他の〈エアーかおる〉シリーズと同じ特殊な糸を使用しているんですよね?

浅野さん:はい。弊社が開発した世界初の特殊撚糸工法による、繊維の間にたっぷりと空気を含んだ糸「スーパーZERO®」を使用しています。先ほどお話しした「アサノフタバ SUPER ZERO MILL(仮称)」の外観デザインにも取り入れた、弊社の代名詞です。

―タオルとしての特徴は、他の〈エアーかおる〉シリーズと同じと思ってよいですか?

浅野さん:抜群の吸水性や速乾性、軽さ、洗濯しても持続するふわふわ感、毛羽落ちの少なさといった特徴は同じです。それに加えて、他の〈エアーかおる〉シリーズには備わっていない、純銀糸による抗菌・防臭効果や汗消臭効果を半永久的に備えています。アイテム数はサイズ違いで6つですね。

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―その中から新色が登場するのが、浅野さんが首に巻いているタオルマフラーですね。

浅野さん:〈ダキシメテフタバ〉のメインと言えるアイテムです。幅14cm長さ90cmというサイズは、他の〈エアーかおる〉のシリーズには無い〈ダキシメテフタバ〉だけのもので、お客様からもご要望の声も多かったんです。

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―このタオルマフラーは夏冬兼用とのことですが。

浅野さん:水に濡らして絞ると気化熱によって冷却効果が出るので、夏場は首に巻くとすごく涼しいんです。化学繊維のクールタオルと比べても、ひんやり感が長く持続しますし、汗拭き用としても便利ですね。そしてもちろん冬場には本来のマフラーとして使えるんですが、実は某有名ブランドのカシミヤマフラーよりも保温力があるというデータも実証されているんですよ!カシミヤやウールのマフラーと違って自宅でも気軽に洗えるので、清潔さも保てます。

―気化熱というと、化学繊維のクールタオルの方が優れている印象がありますが、その点に関してはいかがでしょうか。

浅野さん:化学繊維はあまり吸水せずに表面に水を走らせる力があり、それを素早く乾かすことができるので瞬間的な気化熱効果はすごくあるんですが、首に巻いてのクーリング効果は長く続かないんです。一方〈ダキシメテフタバ〉は素材が綿なので、水を長く保有できる分、クーリング効果も長く続くんです。

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―なるほど。スポーツの時などにも活躍しそうですね。

浅野さん:ジョギングやジムワークなどの運動をしながらという面では、片方の端が輪になっているので、そこに通して首に巻けるのもポイントですね。普通のタオルを首に巻くと、走っているうちに段々とズレたり落ちたりしてきますが、それがないんです。

―たしかに巻きやすくてズレないのは便利です。このサイズ感にはどんなこだわりがあるのでしょうか。

浅野さん:いくつか試作して、マフラーとしては長めがよいということになったんですが、長すぎるとタオルとしては不便で。このサイズがちょうど使いやすいという結論に至りました。マフラーとしては短いと言われることもあるんですが、このサイズ感が一番フィットすると思っています。巻きながらでも手に取って汗を拭きやすいですし。

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―新色にこの4色が選ばれた理由はなんでしょう。

浅野さん:タオルではありますが、身につけるものなので、ファッションとしても取り入れやすい4色をタオルマフラーにだけ追加しました。従来の3色はタオルとしてはよいけれど、マフラーとしてはちょっと身につけづらいという声もあったので。ベーシックな色をチョイスしました。

―たしかに自然に取り入れやすいカラーですね。ところで販売開始からある3色には少し珍しい名前がつけられています。それらにはどんな意味が込められているのですか?

浅野さん:せっかくの共同開発なので、双葉町側に色やコンセプトを決めていただき、その中で生まれた名前をつけました。「フタバサクラ」には、県外からも観光客が訪れるほどきれいだった双葉町の桜への想いが込められています。「フタバマリーン」は、今は泳げなくなってしまいましたが、「きれいな海100選」にも選ばれた双葉町の海に由来しています。そして「フタバグリーン2020」は、地元の双葉高校の野球部がかつて何度も甲子園に出場した時のユニフォームの色が由来ですが、これは町長の想いが強かったですね(笑)

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―フタバグリーンにだけ「2020」が付いていますが...?

浅野さん:フタバグリーンに関しては、徐々に明るい色にしていこうかなという考えがありまして。段々と明るい双葉町に、という意味を込めてバージョンアップしていこうかと思っています。

〈ダキシメテフタバ〉を通して、伝えたいこと、できること

―そもそもの質問になりますが、〈ダキシメテフタバ〉という名前にはどんな想いが込められているのでしょうか。

浅野さん:弊社の社長が名付けたんですが、思いついたというか、天から降りてきたというか。我々も直感で、すごくよいと思いました。双葉町に進出することを決めた時、町を元気にするという想いで我々が双葉町を「抱きしめに行く」つもりだったんです。でも、双葉町の役場の方々の強烈なエネルギーによって、実は我々が「抱きしめられている」と感じさせられたという意味も込めています。

―深い意味合いですね。実際に行って触れてみないと、わからない感覚です。

浅野さん:そうですね、役場の方々はものすごく前を向いています。とにかく双葉町にはすごいエネルギーがあるんです!

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―初めての視察が2019年7月で調印式が10月、販売開始が2020年4月、そして今に至るまで、ものすごいスピード感ですが、何が一番大変でしたか?

浅野さん:企画自体は急ピッチでしたが、製造の面で苦労したということは無くて。難しかったことというと、プロモーションの仕方ですね。工場などを建設する場所の一部に「ダキシメテフタバの森」というものをつくる計画があり、売り上げの一部をその森への植樹の費用にしようと思っているんですが、そのPRを表立って行ってよいものかという疑念がありました。また、被災地をネタにしているという捉え方をされる可能性もあるので、広告に関しても表現が難しく...。最終的には、町長と弊社社長の似顔絵とコメントを入れた新聞広告を出したんですが、言葉の選び方も含めて、そういった面ではすごく悩みましたね。

―そうですよね、非常に繊細な問題です。ひとつ間違えば、バッシングの対象にもなりかねません。

浅野さん:4月11日に販売開始で、新聞広告も当日に掲載予定だったんですが、新型コロナウィルスの影響が世の中に大きく出始めた頃で、そのことも判断を難しくしましたね。販売当日の新聞広告は急遽とり止めて、6月に改めて新聞広告を出しました。ここまで思うようにPRできていない部分はありますが、東日本大震災から10年という節目を迎えますので、これからが〈ダキシメテフタバ〉を広く知っていただく一番の機会かなと思っています。

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2020年6月11日に日本経済新聞に掲載された新聞広告

―〈ダキシメテフタバ〉を販売していくにあたって、ハンズには何を期待しますか?

浅野さん:ハンズさんは時代の流れの最先端を常に発信されています。そんなハンズさんに、まずは商品としてのよさをしっかり評価していただけたのはとてもうれしいことですね。その最先端の機能面はもちろん、この商品に込められた想いも一緒にお客様に伝えていっていただければと思っています。

―では最後になりますが、お客様へのメッセージをお願いします。

浅野さん:もうすぐ東日本大震災発生から10年の節目を迎えますが、福島全体の復興はまだまだ途中で、ゼロ地点にも戻っていないという状況です。まずはそういった現状を、商品を通して少しでも伝えていければと思っています。そして、弊社の現地の拠点が開業した際には、ぜひ双葉町を訪れてみてほしいです!

おわりに

タオルとしての優れた機能、福島の復興支援という背景。いろいろな想いが込められた〈ダキシメテフタバ〉には、手にすることで優しい気持ちになれる、そんな魅力が詰まっていました。新色が登場するこの機会に、ぜひチェックしてみてください!

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