お料理に欠かせない「包丁」。皆様は、しっかりお手入れできていますか?「切れればよいのよ」と思っている方、もったいない!切れ味のよい包丁を使うと、お料理が快適に、おいしくなるんです。ここでは、おすすめの包丁と、研ぎ方についてご紹介。ハンズ キッチン用品担当バイヤーの秋津が、老舗の包丁メーカー〈貝印〉を訪ねました。
奥深い包丁の世界
「包丁が変われば、料理が快適になり、そして食材の味が変わる」。そう話すのは、〈貝印株式会社〉研究開発部の林さん。一般家庭から企業まで、さまざまな人におすすめの包丁やその研ぎ方をレクチャーする包丁マイスターです。今回は、ハンズのキッチン用品担当バイヤー秋津が、イチオシの包丁と正しい研ぎ方についてたっぷり聞きました!
秋津:はじめまして、秋津です。本日は、包丁について学びにやって参りました!林さん、どうぞよろしくお願いします。
林さん:よろしくお願いします。本日は、みっちり指導させていただきます。
左:貝印株式会社 包丁マイスター 林さん
右:ハンズ キッチン用品担当バイヤー 秋津
林さん:ところで、秋津さんは普段どのような包丁をお使いですか?
秋津:三徳包丁を使っています。包丁は種類が多く、どれを使えばよいのか分からない、というのが正直なところです。
林さん:なるほど。では、まずは包丁の種類についてご説明しましょう。包丁は、本当に種類が多いので、今回は「洋包丁」の牛刀と「和包丁」である出刃包丁と刺身包丁の3つに絞ってご紹介します。
上から 刺身包丁、出刃包丁、牛刀包丁
林さん:和包丁のほとんどは片面だけに刃がついています。片面に角度がついていて、もう片面は平なんですね。また種類が豊富で日本各地でいろんなカタチや用途のものがあるんです。日本刀のようなカタチをしていたり、両刃だったり、「何これ!どうやって使うんだ!?」という包丁がたくさんあります。
秋津:なぜカタチが違うのでしょう。
林さん:日本は各土地によって鍛冶屋があります。海や山、その土地の食材に合わせて包丁をつくります。刺身包丁も関西と関東でカタチが違うんですよ。関西型は先が尖っていて柳の葉のようなカタチをしています。そのことから、「柳刃包丁」と呼ばれることも。関東型は先が四角く「蛸引(たこひき)」と呼ばれています。カタチは違いますが、どちらも細長いという共通点があります。
秋津:なぜ、細長いのですか?
林さん:刃物は滑らせるように切るのが基本です。お刺身は柔らかくて崩れやすいので、身に負担がかからないよう、できるだけ触れる回数を少なくするのが理想。1回で切るために、長さが必要なんです。
秋津:なるほど。
林さん:洋包丁は名前の通り海外から輸入してきた包丁です。和包丁は基本片面だけに刃が付いているのに対し、洋包丁は両面に刃がついています。もともと洋包丁は、肉専用の包丁として使われていました。牛刀などが代表的な例ですね。
秋津:三徳包丁も両刃ですよね。
林さん:三徳包丁は、牛刀や菜切り包丁の利点を組み合わせたもの。お肉、お魚、お野菜と、三つの用途で使える。つまり、三つの徳があることから三徳包丁と呼ばれるように。ちなみにこの呼び名は〈貝印〉から発生した言葉なんですよ。
秋津:そうだったんですね!さすが老舗の刃物屋さんだ。
よい包丁の条件とは?
秋津:よい包丁の条件を教えてください。
林さん:単によく切れればよいという訳ではありません。たとえば、切れ味だけの話で言えば研ぎ方でおおむね決まるので、きちんとした研ぎをすれば100円の包丁もある程度は切れるようになります。大事なのは「刃持ちのよさ」。よい材料と焼き入れの技術で刃持ちのよし悪しは決まります。長く使いたい方は、その点にも注目いただくとよいです。
秋津:なるほど。〈貝印〉にはいろいろな種類の包丁がありますが、中でもおすすめの包丁はありますか?
林さん:〈関孫六 茜〉というシリーズは、リーズナブルな値段ながら実力十分の包丁が揃っています。刃体はサビに強い「ステンレス三層鋼」を使用。刃材に切れ味の持続性に優れた芯材に高硬度のステンレス刃物鋼を、そして両側面には研ぎがしやすいステンレス材を使っています。切れ味が長続きして、さらに研ぎのお手入れがしやすいので、長く使うことができます。
左から:貝印 関孫六 茜
牛刀 21cm 4,752円(税込)
牛刀 18cm 4,356円(税込)
三徳包丁 16.5cm 4,356円(税込)
小三徳包丁 14.5cm 3,960円(税込)
ペティナイフ 12cm 3,565円(税込)
秋津:牛刀に三徳包丁、ペティナイフ...。本当にいろいろな種類がありますね。
林さん:料理に対する関心度や料理をする頻度で、最適な包丁は変わります。包丁はパーソナルな道具なので、使う目的やご自身の体型に合わせて選んでみてください。
料理好きにこそおすすめしたい包丁
秋津:いろいろな種類の包丁があることは分かりましたが、正直どれを選べばよいのか...。
林さん:秋津さんは、よくお料理をされますか?
秋津:ええ。料理は割と好きですね。
林さん:それなら〈牛刀 21cm〉がおすすめですよ。〈牛刀〉はお料理が好きな人ほど使っていただきたい。なぜなら、刃渡りが長めなので、刺身包丁としても使え、切っ先の鋭さがあるのでさばきもできる。1本でいろんな使い方ができるんです。女性や手の小さい方は18cmがおすすめです。
秋津:包丁選びに迷ったら、とりあえず〈三徳包丁〉。というイメージでしたが、料理好きには〈牛刀〉だったんですね。
林さん:〈三徳包丁〉ももちろん使いやすい包丁ですが、より料理を楽しみたい人は〈牛刀〉。また、〈牛刀〉と併せて揃えるなら、飾り切りがしやすい〈ペティナイフ〉がおすすめです。この2種類があれば快適に料理ができます。
包丁の正しい研ぎ方とは?
秋津:続いては、包丁のお手入れについて。どれくらいの頻度で包丁は研ぐべきですか?
林さん:頻度は特になく、切れ味が悪くなったらその都度手入れをしていただきたい。たとえば、トマトを切ろうとする時、皮がぐにゃっとへこみプツンッと切れたら既に重症なので、そうなる前がお手入れ時。よい状態の時は、触れただけでスッと刃が食材に入るんです。
秋津:刃が触れただけで!体感してみたいです。
林さん:それでは、正しい研ぎをマスターして、よい切れ味を体験してもらいましょう。お手入れには、〈コンビ砥石セット〉と砥石のメンテナンス用に使う〈面直し用砥石〉をご用意ください。
貝印
上:コンビ砥石セット 3,135円(税込)
下:面直し用砥石 3,036円(税込)
※こちらの2点は、値下げ対象外となります。
林さん:〈コンビ砥石セット〉は「中砥石」と「荒砥石」がコンビになっています。ただ単に切れ味の落ちただけの包丁の手入れは「中砥石」のみで、刃こぼれをした包丁の手入れは、「荒砥石」と「中砥石」の両面を使って手入れします。
林さん:今回は中砥石のみを使って、一般家庭で多く使われている洋包丁の研ぎ方を説明します。まずは砥石を15分ほど水につけてご準備を。砥石には見えない気泡があるので、それを水で埋めることで滑らかに研ぐことができるんです。
・・・15分後
林さん:それでは、研いでいきましょう。研ぎには大事な5つのポイントがあるんです。一つずつ、説明しますね。
秋津:よろしくお願いします!
【ポイント1】刃の角度を一定に保つ
林さん:1つ目のポイントは研ぐ時に、砥石に対する刃の角度を変えないこと。一定の角度で研ぐことが重要です。そのために意識したいのが包丁の持ち方。利き手でハンドルを握り、人差し指を「みね(背)」に添えて、親指を刃元に乗せる。こうすることで、角度が安定しやすくなります。
※親指を刃元にのせる時は、危険ですので刃を触らないように注意してください。
林さん:そして刃を約45~60度程度斜めに置き、ハンドルを握っていない方の手で研ぎたい部分に人差し指と中指の2本を軽く当てます。
林さん:そして、刃こぼれしにくく、よく切れる刃に仕上げるには、包丁を砥石にあてる角度を15度程度に保つこと。男性であれば小指の爪の付け根くらい、女性であれば小指の第一関節くらいまでが砥石と包丁の隙間に入るくらいが、だいたい15度です。
秋津:どれくらいの力加減で研いだらよいですか?
林さん:強く力を入れる必要はありません。撫でるプラス腕の重さが乗る程度で十分に研げます。力やスピードよりも角度を変えないことを意識してください。また、砥石の縦幅をいっぱいに効率よく砥石を使って研ぐことがポイントです。
秋津:それはなぜですか?
林さん:中央だけで研ぐとその部分だけがへこんで、砥石自体のカタチが変形してしまい、研ぎにくくなってしまうんです。
秋津:なるほど。
林さん:また、切っ先近くを研ぐ時も注意が必要。先端にかけて刃がカーブしているので、1cmずつ細かくズラして研ぐと、元の形状をキープできます。
【ポイント2】仕上がりは「バリ」が出ているかで確認!
林さん:よく「何回研いだらよいですか?」という質問をいただきます。しかし、研ぎは回数ではありません。では、どのように仕上がりを確認するのか。それはある程度研ぐと刃先に現れる、「バリ」をチェックすること。
秋津:「バリ」とは一体?
林さん:刃先に引っかかりが出るんです。「刃返り」「返り」「まくれ」とも言います。指を包丁の刃先に対して垂直に滑らしてください。
秋津:本当だ!髪の毛1本分くらいでしょうか。引っかかりを感じますね。
林さん:このバリが全体に感じられたら、片面の研ぎが完了した証です。
【ポイント3】両刃の洋包丁はもう片面も研ぐこと
林さん:包丁を逆さにして反対の刃も研ぎましょう。
秋津さん:研ぐのは片刃だけでよいのかと思っていました。
林さん:和包丁であればそれで問題ないのですが、両刃の洋包丁はもう片面の刃も研ぐことが重要です。片面だけ研ぐと和包丁のように片刃になってしまいます。
持ち方は、利き手でハンドルを握り、親指を「みね」、人差し指を刃元付近に。
林さん:研ぎの要領は同じです。砥石に対する刃の角度を15度にキープするため、小指を入れて確認しましょう。
林さん:アゴ付近を研ぐ時は、包丁が砥石に対して直角になるようにします。
秋津さん:反対側は、斜め45度にしないんですね。
林さん:ええ。刃を外側に向けてアゴ付近を研ぐ時は、直角にしないとハンドルと砥石が干渉してしまい良い刃角(15度)で研げません。先ほどと同じく、バリが出るまで丁寧に研ぎましょう。
・・・十数分経過
【ポイント4】バリを取る
林さん:全体にバリが出ていることを確認したら、新聞紙を広げて両面をこすり、バリを落とします。
秋津:注意すべきポイントはありますか?
林さん:たまに、砥石を使って落とそうとする人がいますが、おすすめしません。うまくできず、せっかく研いだ刃が台無しになることも。新聞紙がないご家庭は、古いデニムやふきんなどで落としてください。
これで、研ぎの作業はおしまいです。さ、試しに切ってみてください。
秋津:では。
秋津:おお!力を入れずとも、トマトに触れただけでスーッと刃が入っていきます!これは、すごい!!楽しくて、クセになりそうです(笑)
感動する秋津。
林さん:研ぎはこれで終了ですが、まだやるべきことが残っていますよ。
秋津:まだ、何かあるんですか?
【ポイント5】砥石のお手入れまでしっかりと
林さん:砥石のメンテナンスも必ず行ってください。なぜなら、研ぎをすると砥石がへこみます。そのままにしておくと、次研ぐ時に丸っ刃に研げてしまって切れない包丁に仕上がってしまうんです。
秋津:なるほど。せっかく時間をかけて研いでも、逆に悪い状態になるのは本末転倒ですね。では、メンテナンス方法を教えてください。
林さん:砥石のメンテナンスには必ず〈面直し用砥石〉を使ってください。まずは、砥ぎの目印として鉛筆で砥石の面いっぱいに波線(〰)を書きます。次に水を付けて平らになるまで削ります。鉛筆で書いた跡が消えたら平らになった証です。洋包丁を普通に研いだ程度であれば掛かっても数十秒で終わると思います。しかしへこみをそのままにして溜めてしまうと直すのに大変な時間がかかります。
秋津:包丁のお手入れは、研ぎから砥石のメンテナンスまでがセットなんですね。
林さん:ええ。砥石を購入する方は、〈面直し用砥石〉も一緒に揃えることをおすすめします。
包丁が変わると、料理の美味しさが変わる
秋津:これまで、見よう見まねで研いだことはありましたが、正しいやり方で実践したのははじめてでした。切れ味がよいと、料理が楽しくなるだろうなと。
林さん:そうでしょう。そもそも切れ味がよいと何が嬉しいって、料理がおいしくなることです。よい包丁は食材の繊維を壊さずに切断できます。
たとえば、ピーマンを切った時に余計な苦味が出なくなったり、玉ネギを切っても成分が飛び散らないので涙が出なかったり。料理も快適に、そして食材をおいしく調理できるようになります。皆様には、この感動を味わっていただきたい。
秋津:それは体験してみたいですね。包丁の手入れは、丁寧にやればやるだけ自分にプラスに返ってくる気がして、なんだかハマりそうです!
林さん:ぜひ、これからも研ぎを極めてください。
秋津:はい!林さん、本日はありがとうございました!
おわりに
年末に向けて身の回りの整理をする人も多いはず。毎日使う包丁に目を向けて、お手入れや品物にこだわってみてはいかがでしょう。
※工場生産遅延の影響で入荷日の遅れや商品仕様の変更が生じる場合がございます。
※掲載商品は一部店舗では取り扱いがない場合がございます。取り扱い状況については各店舗へお問い合わせください。
※掲載商品は、一部の店舗ではお取り寄せになる場合がございます。
※一部価格・仕様の変更、および数に限りがある場合もございます。
※掲載写真には一部演出用品が含まれます。
※商品価格等の情報は、掲載時点のものです。