国内有数の重要な漁港として国に定められている、島根県の浜田漁港。そこで獲れる魚の中でも"未利用魚"に目をつけ、有効活用した水煮缶シリーズ〈今朝の浜〉をご存知ですか? そこにはどんな思いが込められているのか。同シリーズを島根から発信している、株式会社シーライフの河上さんにお話を伺いました。
【目次】
国内有数の漁港で、漁業の課題と未来を見つめながら
株式会社シーライフ 専務取締役 河上清貴さん
―まずは会社の紹介を簡単にお願いします。
河上さん:島根県浜田市にある、創業16年目の水産加工会社です。"時代を先取りした食文化の提案"を経営理念に掲げ、日々変わっていく食生活やライフスタイルに対応しながら、地域になくてはならない会社になろうというビジョンを持って活動し、未来を見据えた新しいチャレンジをしています。
―拠点となる浜田漁港やその海にはどんな特徴があるんですか?
河上さん:浜田漁港は、特に重要な漁港「特定第三種漁港」として国から定められている13港のうちのひとつです。日本海の暖流と寒流がぶつかる場所が漁場で、四季を通じていろんな魚が獲れますが、その代表格が浜田市の市の魚にも指定されている「のどぐろ」ですね。
―浜田漁港に限らず、近年の漁業にはどんな課題があるのでしょうか。
河上さん:全国的に水揚げ量が減っています。またそれに伴って漁業に従事する人も減っていて、若い担い手が少ないのも大きな課題です。そしてそれは浜田漁港も同様。弊社はそこに向き合い、地元密着で、自分の会社だけでなく地域の水産業全体をよくしたいという思いで活動しています。
〈今朝の浜〉はどんな商品?その特徴と誕生経緯について
―今回ご紹介いただく〈今朝の浜〉シリーズの特徴を教えてください。
河上さん:市場で売れ残ってしまったり、そもそも市場にも並ばなかったりする魚は"未利用魚"と呼ばれ、その量も多いために漁業関係者にとってはひとつの課題となっています。それを有効活用したのが、この〈今朝の浜〉シリーズです。その日の朝の水揚げや市場の状況次第でつくられるものも変わるので「今朝の浜」と名付けました。
シーライフ 今朝の浜
とびうお、いろもの、れんこだい、えてかれい、えぼだい 各540円(税込)
※数に限りがございます。在庫状況は店舗にお問い合わせください。
―どういう経緯で商品化に至ったのでしょうか。
河上さん:数年前、弊社で缶詰事業を開始することになり、初めはのどぐろなどを使って試作を繰り返していたんですが、試作にのどぐろはちょっともったいないなと思って。そこで未利用魚を思い出し、つくってみたらおいしくできたんです。漁師や仲買人から「未利用魚をどうにかしたい」という相談を受けていたこともあり、これはつくる価値があると感じて商品化をスタートさせました。
―なるほど。いまの時代に合った考え方の商品ですね。
河上さん:2018年の発売当初は見向きもされませんでしたが、SDGsが叫ばれ始めたここ1〜2年で注目を集めるようになりました。サステナブルで地球にやさしいことをしていると、各所で取り上げてもらえるようになって。
―製造はどのように行っているんですか?
河上さん:小さな加工場で、魚を切る、缶に詰める、機械で蓋をする、といった工程を1缶1缶手作業で行っています。なので、1日に何万缶も製造する大きな工場とは違い、1日に製造できるのは頑張っても300缶ほど。味付けも、素材自体の味を味わえるよう、地元産の天然塩を軽く振ったシンプルなものにしています。
河上さん:そして一番の特徴でありこだわりは、一般的な缶詰のような冷凍の魚は使わず、冷凍していないフレッシュな魚を使っているところです。毎日揚がる魚を新鮮なうちに加工し、缶の中に鮮度や旨味を閉じ込めているので、味には自信があります。
シリーズ5種類の特徴。そして「いろもの」とは?
―シリーズ5種類の特徴を教えてください。
河上さん:まず「とびうお」は島根県の県魚に指定されていて、「あごだし」で知られるとおり出汁がおいしい魚です。〈今朝の浜〉は生の魚を詰めて熱を加えているため、1缶1缶が小鍋のようなものなので、その出汁が詰まっています。青臭さもないので食べやすいと思いますよ。
―「えてかれい」はどんな魚ですか?
河上さん:かれいは浜田を代表する魚で、8月〜2月の時期に獲れる脂の乗ったものは「どんちっちかれい」というブランド魚として売り出しています。ただ、時期から外れたり、サイズが小さかったりすると買い手がつかないことがあり、それらをこの缶詰に使用しました。特徴は肉厚な身ですね。
―鯛は2種類ありますが、それぞれの特徴は?
河上さん:皮が赤い「れんこだい」は真鯛などと比べると少しイメージが落ちるところがありますが、旨味成分が多くて、すごくおいしい出汁も取れる魚です。「えぼだい」は身が柔らかくてクセがないのが特徴。最近は高級干物としても扱われていて、缶詰で食べることは少ないと思います。
―「いろもの」はひとつの魚種ではないんですよね?
河上さん:はい。ハンズさんとのお話の中で生まれた商品で、いろんなものが入っているので「いろもの」と名付けました。決まった魚種ではなく、日毎にランダムで4〜5種類が入っています。実際に港や市場で最後に余る魚はカゴの中でごちゃ混ぜになっているので、そういう部分を缶詰で表現した感じですね。
―何が入っているかは開けてみてからのお楽しみと。
河上さん:日によってだけでなく、同じ日に製造したものでも中身のバランスは違いますからね。いろんな魚を食べてほしいという思いがあるので、「いろもの」は正にそれをカタチにしたものです。
―〈今朝の浜〉のおすすめの食べ方を教えてください。
河上さん薄味に仕上げているので、料理の素材としてお使いいただくのがよいかと。出汁たっぷりの汁も全て使えるので、炊き込みご飯はおすすめですね。個人的には、魚自体を味わいたいのでシンプルにわさびだけとか、醤油を少しつけたりが好きです。
〈今朝の浜〉で描く未来。島根の海から届ける思い
―〈今朝の浜〉で、どんな未来のイメージを描いているのでしょうか。
河上さん:〈今朝の浜〉に使われている未利用魚は何10種類もありますが、早く未利用魚から卒業してもらいたいんです。のどぐろのように、一本立ちしたおいしい魚として広く認知されるようになってほしくて。そのためにはまず、どうやって手に取っていただくか。その入り口としてこの缶詰があると思っています。
―自分の名前で売れる魚に、ということですね。
河上さん:浜田漁港はいろんな魚が獲れるのも特徴なので、そこに目を向けてもらいたいという思いがあります。そして皆さんの目が、メジャーな魚だけでなくいろんな魚に向くようになれば、全国の漁業関係者も助けられ、水産業の未来へとつながっていくはずです。〈今朝の浜〉がその一端を担い、皆さんが出会ったことのなかった魚や産地に興味を持つきっかけになればと、島根の海から願っています!
おわりに
未利用魚という課題を解決するためのひとつのヒントとなる〈今朝の浜〉。魚本来のおいしさに加え、そこに込められた思いまで、じっくりとご堪能ください!
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