文房具というよりプロダクト?この連載は、元クレイアニメ作家で輸入文具店で働いたのちにハンズにやってきたという異色の文房具バイヤー大島が、愛のあふれる独自の視点で注目の文房具をご紹介していきます!第一回目の今回は、大島バイヤーの自己紹介を兼ねて、私物の文房具や在宅ワークで活躍しているというガジェットをピックアップ。「売れ筋もよいけど、なんかちょっと変わった文房具が好き」というあなたにぴったりの記事かもしれませんよ。
愛とはたとえば、意図せず生まれた「個体差」だったりする
―大島さん、こんにちは。新しく大島さんの連載が始まるということでよろしくお願いします!
大島:こちらこそよろしくお願いいたします。そして記事をご覧いただいている皆さん、こんにちは。ハンズの文房具バイヤーの大島と申します。いきなり個人的な話で恐縮なのですが、私は、月並みな言い方をすると「ちょっと変わった文房具」や、いわゆるベストセラーの文房具でもちょっと変わった視点で楽しめるものがとても好きなんです。なので、この連載では、多くの文房具ファンに人気のトレンド系アイテムもご紹介しつつ、ところどころ私好みのものも盛り込んでいきたいと思いますので、末長くよろしくお願いいたします。
―変わった文房具や変わった視点...。それってたとえばどういうものですか?
大島:たとえば、こちらのメモ帳はものすごく面白いと思っています。
ロディア(RODIA)
左、右:ブロックロディア No.16 605円(税込)
中:ミーティングパッド No.16 715円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いの無い場合がございます。
―あ、〈ロディア〉ですね。そこまで文房具に詳しくない私でもこれは知ってますし、使ったこともありますよ。でも、てっきり知る人ぞ知るこだわりの文房具が出てくると思ったのですが、この超ベストセラーアイテムの一体どこにそれほどの面白さがあるのですか?
大島:ひとつお聞きしたいのですが、この〈ブロックロディア〉を買おうとする際に、いくつかあるサイズの中からこのNo.16に決めたとするじゃないですか。それでいよいよ商品棚から手に取ろうとする時に、どうやって選びますか?
―どうやってって...。普通に積んである一番上のものを取るか、一番上のものは他の人が手に触れているかもしれないので2番目のものを取るとか...じゃないんですか?
大島:それはもったいない!
―もったいない!?じゃあ大島さんはどうやって選んでいるんですか!?
―こわい!!なんですかその選び方!?
大島:〈ロディア〉のよさっていろいろあるのですが、私のお気に入りポイントは、よい意味での「粗さ」なんです。たとえば同じサイズでも一つひとつじっくり見ていると、裁断されている位置が1型ずつちょっと違ってたりするんですよね。だから私はこのように、裁断された部分を一つひとつチェックして、一番グッとくる断面になっているものを選ぶようにしています。
裁断部分がズレていると、隣接する方眼のサイズが正方形でなくちょっと切れていたりするので、全体の印象もほんのちょっと変わるかも?
―それであんなに険しい顔に...。
大島:「粗さ」って、もちろん一般的には決してよいこととは言えないとは思うんです。同じ商品なのに個体差があると使いづらいという意見もあると思いますし、真っ当な意見だとも思います。メイドインジャパンメーカーの多くはこの個体差が限りなく少ないということで、その品質が世界的に評価されてもいますしね。
一方で、私はこの個体差にこそ「愛」を感じるんですよ。言い換えると、愛着ですね。個体差があるって、悪く言えば粗悪品が混ざっている可能性もあるということですが、よく言えば一つひとつが「一点モノ」とも捉えられる。私は後者の視点で見ているので、〈ロディア〉が並ぶ店頭の光景は私にとって宝の山。数多ある個性揃いの面々から自分の気分があがるものを厳選するのがとても楽しいんですよ。ちなみに私は〈ブロックロディア〉の他に、システム手帳のようにリフィルを入れて使えるタイプを愛用しています。国内にはあまりないもので、ハンズでも今は取り扱いがなく、どこかで見かけたらとてもラッキーという感じで恐縮なのですが。
※こちらは大島の私物です
―2種類のノートを使うなんて〈ロディア〉の大ファンなんですね。
大島:ええ。ちなみに先ほど、よい意味での「粗さ」が魅力と言いましたが、それは単なる粗悪品とは大きく違うと思っていて。ガシガシ書けるタフさやデザイン性の高さなど、〈ロディア〉は基本的なクオリティがものすごく高く、それゆえに全世界にファンがいるんです。個性が大事だからといってただ雑につくるのと、プライドをもってほぼ完璧なものをつくりつつ、その中でちょっとした個体差がチャーミングに出ちゃっているのとではまるで別次元のもの。私は〈ロディア〉大好き人間なので、〈ロディア〉に対して変な誤解が生まれないよう、念のためお伝えさせていただきました。
―な、なるほど。
大島:あと、〈ロディア〉のノートはサイズの豊富さも魅力ですよね。それはつまり、一人ひとりの使用シーンに合わせたぴったりのものを選べるということ。商品に自分を合わせるのではなく、自分に商品を合わせられるのがよいですよね。ちなみに、私は先ほどご紹介した〈ブロックロディア〉を横書きにして使っています。こんな感じで。
大島:最近はすっかりリモートワークとなっているので主に自宅で仕事をしているのですが、メーカーさんなどと商談のお電話をする時に、ノートパソコンを広げながらメモをする機会がとても多いんですね。その時に、〈ブロックロディア〉のNo.16をそのままタテづかいすると、パソコンを遠くに置かないといけないので、画面が見にくい。かといってタテづかいできるような、より小さいものにすると、今度はメモスペースが少ないから使いづらい。ということで、No.16をヨコにして使っています。アイテムとしてはとてもシンプルなので、こういう風に使っても全く違和感がないのも人気たる所以の一つだと思います。
ロディア(RODIA)ミーティングパッド No.16 715円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いの無い場合がございます。
他にも、会議や打ち合わせなどに最適な専用フォーマットの〈ミーティングパッド〉もおすすめとのこと。日付、テーマ、メモをそれぞれ書くスペースがあらかじめデザインされているので仕事の効率化に役立ちます。
学研 オサムグッズ
左:ノート 385円(税込)
右:付箋 418円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いの無い場合がございます。
複数のノートを仕事用、プライベート用で使い分ける大島が、主にプライベートで使うノートとしてあげたのがこちら。イラストレーターの原田治さんの作品が大大大好きらしい。
定年退職後はクレイアニメ作家になる野望がある
―〈ロディア〉の他にはどういった文房具がお好きなのですか?
大島:特にリモートワークがメインとなってから大活躍してて、「買ってよかった」と思っているのがこちらのバッグインバッグとポーチです。
上:マークス TOGAKURE バッグインバッグL 3,190円(税込)
下:デルフォニックス(DELFONICS)インナーキャリング メッシュM 1,870円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いの無い場合がございます。
―鮮やかなカラーリング!
大島:そうでしょう!もちろん機能面にも満足しているのですが、このカラーがやはりグッときますよね。最高じゃないですか?このテンション高い感じ。どちらもカラー展開が豊富で、これ以外にもっと無難と言いますか、白とか黒みたいなポピュラーなものもあるのですが、私はもうこの色にクラクラきちゃいましたね。あと、私はガジェット系の小物はどちらかと言うとダークカラーで揃えがちなのですが、そうするとカバンの中が真っ暗なんですよ。でも、このド派手カラーならカバンの中でも目立つ目立つ。パソコンや携帯電話など、よく使うものをここに入れているので、すぐに見つかってサッと取り出せるのはとてもよい。
―個性的なカラーはそういう効果も持っているのですね。
大島:より細かいことを言うと、まず〈マークス〉のバッグインバッグの特徴は、ポケットやファスナーがタテ・ヨコのどちらでも使えるようになっていること。なので、リュックでもショルダーバックでも問題なく使えるのが嬉しいですね。あと、個人的に高ポイントなのが、軽いこと。ほんの数グラムとか数十グラムの話かもしれませんが、いつも使うものだから、ちゃんと軽さにこだわっているのはやはり使い勝手がよいですよ。
タテからもヨコからも出し入れできるようになっています。
大島:〈デルフォニックス〉のインナーキャリングもとても軽いのがお気に入りポイントで、メッシュ素材でできているのがその秘訣。メッシュだとペラペラで使いづらいんじゃないかと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ちゃんと自立しますし、側面の生地が2重になっているので型崩れしにくくなっています。ポケットの多さや持ちやすいサイズ感など、細かいところにも気を配っていて総合力がとても高い。非の打ち所がないガジェットケースだと思います。ほんと大好き。
―〈デルフォニックス〉さんは高いデザイン性でも人気ですよね。
大島:そうですね。日本のメーカーですが、セレクトショップとしてさまざまなアイテムを集めているから面白いですよね。〈デルフォニックス〉の文具はどことなく海外文具のようなパキッとしたデザインが特徴だと個人的に感じていて、どのアイテムもすごく心に響いてきますね。ハンズでお買い上げいただけると嬉しいのですが、ぜひ〈デルフォニックス〉さん自身の店舗にも足を運んでいただきたい。ハンズとは違う面白さがありますから。
―ところで、大島さんはハンズに入社する以前は海外で働いていた時期があると聞きました。「海外文具」も大島さんのお気に入りだと思うのですが、そうなったきっかけは海外で働いていたからなのですか?
大島:うーん、どうでしょうね。それもあるかもしれませんが、昔から文具が好きで人気のものには一通り触れてきたので、興味の向かうところがだんだんニッチになってきた結果の海外文具かもしれません。
―文具を好きになったのはいつからなんですか?
大島:はっきりと好きになった出来事などはないのですが、もともと芸術系の大学に通っていたので文具には親しんできました。先ほど話題に出た、海外で働いていたというのは、大学を卒業してすぐのことなんです。大学ではずっと映画をつくりたくて、いろいろ模索したのちに「クレイアニメ」が面白いと思い至ったんですね。
それで、好きなクレイアニメ作家さんがたまたまイタリアのミラノで活動していたので、その方にちょっと手紙を書いて送ってみたんですよ。「クレイアニメのスタジオを見学させてください」って。最初は返事がこなくて、でも諦めずにもう1回送ってみたら、ある日いきなり電話がかかってきたんです。そこで「やる気があるなら学生ビザを取って語学留学としてきてごらん」と言われたので、二つ返事で行きますと返事しました。で、大学卒業後にすぐミラノに行ったら、見学どころかもう「ここで働きなよ」となって、そこでもすぐ「ありがとうございます」と承諾し、かれこれ2年くらい働いてから日本に帰ってきました。
―なぜ2年で帰ってきたのですか?
大島:あまりにも低賃金で「これ以上はもう生活できない」となったんです。ただ、クレイアニメそのものはずっと面白かったし、今でもそう思っています。私が手紙を書いた作家さんは現在80歳くらいだったかな?それで今もなお第一線で活躍しているので、私もハンズを定年退職したらクレイアニメ作家を再び目指したいなと密かに思っています。
※こちらは大島の私物です
大島のリュックに付いているのは木彫りの熊のキーホルダー。「木彫りの熊といえばやはり北海道。最近はなかなか行けないが、機会があれば是が非でも行きたい」とのこと。
〈BIC〉のノリの軽さは好きにならずにはいられない
―イタリアからの帰国後はどうされたのですか?
大島:基本的に自分の好きなものに関わる仕事しかしたくないと思いながら職探しをした結果、輸入文具店で働くことになりました。楽しくガツガツと働いていたら、ある時から支店の店長に任命されまして。それで裁量を持ってやりたいようにやったりして、それはそれは本当に楽しい日々だった...。ただ、事業編成の都合でそのお店を畳まざるを得なくなってしまって、路頭に迷ってしまったんですよね。で、また職探しをしていた時に、ハンズの募集があったので応募して無事に入社したという感じです。2016年のことですね。
―いろいろなところを渡り歩いてきたのですね。
大島:それで新宿店の文具コーナーを担当し、去年の4月までずっとお客様と接してきたのちに、バイイング業務に興味が強く湧いたので異動願いを出させていただきました。ちなみに、新宿店から異動する際に一緒に働いていた仲間たちがこのシャープペンをプレゼントしてくれたんですよ。
ぺんてる 万年CIL ケリーハンズ限定モデル 2,750円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いの無い場合がございます。
―シャープペンなのにキャップ式なんですね、珍しい。
大島:そうなんです。スタイリッシュなデザインなのでそう見えないかもしれませんが、〈ケリー〉そのものが生まれたのはなんと1971年というかなり歴史のあるペンなんです。そして、このペンの製作時のコンセプトが「万年筆のように持ち歩けるシャープペン」というものだったんですね。なので商品名には万年筆+PENCIL=「万年CIL」という造語がつけられています。
やはりさすが仲間と言いますか、私のツボをビシッと押さえてくれているなあと思うチョイスで、もちろんお気に入りですね。もうなんとなくお察しかもしれませんが、このキャップを付けたり外したりという行為がとても愛おしいんですよ。
―やはりそうでしたか(笑)
大島:人によってはキャップの付け外しという行為はただの無駄だと思うかもしれませんが、私としてはもはや「侘び寂び」の領域に感じると言いますか、四季の自然な移ろいの中で生まれては無くなっていく美しさに通じるものがあるように思うんですよ。
キャップを外してヘッドに付け直した様子。こうすることによって重心が後ろになるため、書きやすさがアップするのだとか。「万年筆もそうですけど、キャップを付けて初めて完成されたバランスになるというのがCOOL、かっこいい」と大島バイヤー。
―はあ...。(いよいよちょっとわからなくなってきたぞ)
大島:あと、付け外しという所作は私にとってある種のスイッチにもなっているんですね。リモートワークをされている方々がよく抱える悩みに、仕事とプライベートの切り分けが難しいということがありますよね。私もその悩みを持っていたのですが、ペンのキャップを外してヘッドのところにカチッと付けるこの一瞬で気持ちを切り替えられるようになったんです。よく、スポーツ選手が集中力を高めるために「ルーティン」を行うことがあると聞きますが、それと同じことです。
―これまでご紹介いただいた文具はどれも個性的ですが、何よりも個性を発見する大島さん自身の視点が面白いような気もしてきました。
大島:いえいえ、そんなことないです、やはり愛を感じられるポイントを商品が持っているからこそですよ。たとえばこちらのペンは今回の記事の最後にぜひご紹介したいと思っていたのですが、もう愛着を持たずしてどうするんだってくらいの魅力が詰まっていますよ。
BIC 4色ネオンボールペン 385円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いの無い場合がございます。
―蛍光イエロー...!
大島:そう!4色ボールペンで黒・赤・青ときたら、まあ普通は緑とかじゃないですか。そこを黄色で、しかも蛍光色という、飛びに飛んだアイデアなのがたまらないですよね。それで軸の色もまさかの蛍光イエロー合わせにしちゃって、もうこのペンの主人公は蛍光イエローじゃんみたいな。
しかも、このペンは仕事でガンガン使っているんですけど、正直蛍光イエローはほぼ使ってなくて。なんでかって、細字なんでほぼ見えないという(笑)黒・赤・青は1.0mmで黄色は1.6mmと、ちゃんと意識してつくられてはいるものの、それでもまあ細い。もちろん〈BIC〉なので基本的な書き心地はよいのですが、実用的かどうかが怪しいアイデアをポンと放り込んじゃうこのノリの軽さが最高ですよね。これだから海外文具を発掘するのがやめられない...!
―(やっぱり大島さんの視点もちょっと面白いよなあ(笑))
大島バイヤーの編集後記
大島:私の連載記事をご覧いただきありがとうございました。記事の中で、私はもともと芸大に通い、その後クレイアニメ作家になったとお話させていただきましたが、その関係でイラストを描くのが趣味でして。この連載では最後に「編集後記」として、記事内での特にイチオシの文具を私のイラスト付きでご紹介したいと思います。今回は、こちら!
大島:これはほんとにおすすめで、文具なのに文具以上の魅力を感じさせてくれる名品ですよ。発色のよさも絶妙で気分が上がること請け合いなので、常に使いたいときっと思うはず!
ということで、次回もちょっと変わった、愛のある文具などをご紹介できればと思うので、よろしくお願いいたします。
【おまけ】
大島バイヤーが過去に描いたイラスト作品。これらの作品を展示するイベントも過去に実施したことがあるらしい。
※工場生産遅延の影響で入荷日の遅れや商品仕様の変更が生じる場合がございます。
※掲載商品は一部店舗では取り扱いがない場合がございます。取り扱い状況については各店舗へお問い合わせください。
※掲載商品は、一部の店舗ではお取り寄せになる場合がございます。
※一部価格・仕様の変更、および数に限りがある場合もございます。
※掲載写真には一部演出用品が含まれます。
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