お気に入りの靴を履いているときに、突然靴底がベリッとはがれてしまった経験をしたことがある人は多いのではないでしょうか。実は、底がはがれた靴はセルフで修理できる場合があります。今回は、靴の底がはがれたときの修理方法を解説します。予防方法もご紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。
靴の底がはがれる理由とは?
下駄箱から取り出して履いたときや外出中などに、突然靴の底がはがれた経験をした人は多いでしょう。実は靴の底がはがれる原因となるのが「加水分解」です。
加水分解とは、水を吸収することで素材の組織が分解していく反応のこと。特に水分に弱い性質を持つ素材は加水分解が起こりやすいとされています。
一般的な靴の底(=ソール)には、摩擦に強くてクッション性が高いポリウレタン素材やウレタンゴムが採用されています。これらの素材は加水分解が起こりやすく、湿気や雨水を吸収することで靴底がはがれたり、ベタつきやひび割れなどのトラブルにつながってしまうのです。
なお、使用状況や靴本体のつくりによって異なりますが、一般的にポリウレタン素材やウレタンゴムを用いたソールは製造から3〜5年程度で加水分解が始まるとされています。
靴の底がはがれたときのセルフ修理に必要な道具
突然靴の底がはがれたときにも、必要な道具さえあればセルフ修理も可能です。ここからは、靴の底がはがれたときのセルフ修理に必要な道具をご紹介します。
靴用接着剤
はがれた靴の底のセルフ修理に必須の道具が、靴用接着剤です。靴の補修を考えてつくられており、商品によっては靴本体の修理だけでなく、アッパーやヒールの修理に特化したものもあります。
また、同じ靴用接着剤でも、商品によってゴムや布、金属などといった素材との相性がある点には注意しましょう。セルフ修理のために靴用接着剤を購入する場合は、修理箇所の素材と接着剤の対応素材が合っているかを確認しておくことをおすすめします。
布・ブラシ
靴本体やはがれた靴の底に付着した汚れを落とすために、布やブラシも必要です。靴に汚れがついたまま修理を始めても、接着剤が上手く定着せず、修理後も靴の底がはがれやすくなってしまいます。
ブラシといっても何でもよいわけではなく、ブラシの毛が硬すぎると靴の素材によっては傷がついてしまう可能性もありますので、下記を参考に用意してみてください。
汚れを落とす場所 | ブラシの種類 |
靴の表面(全体) | 馬毛ブラシ |
靴のはがれた面 | 豚毛ブラシ、竹ようじ、不要な歯ブラシ |
いろいろな種類のブラシを用意するのが大変であれば、豚毛ブラシがひとつあれば全体に使用することができます。ただし豚毛ブラシは硬いので前述したとおり、靴の素材によっては傷がついてしまう可能性もあるので注意しましょう。
紙やすり
加水分解によってはがれた靴の底は、凹凸ができていることが多いです。そのまま接着剤でソールを貼り付けても上手く接着できない場合がありますので、極端な凹凸であれば紙やすりで整えましょう。
ただし紙やすりで凹凸をなめらかにし過ぎると、接着剤の接地面が少なくなってしまい逆効果です。ある程度はざらつきが残る程度に整えた方が接着が強力になりますので、やり過ぎないように注意しましょう。
修理箇所によって適切な番手(=粗さ)は異なりますが、番手の数字が高いほど目が細かくなります。
交換用パーツ
セルフ修理の際には、はがれた靴の底の代わりとなる交換用パーツも必要です。修理箇所や靴のサイズにあわせた大きさの補修用ゴムパーツやゴム板、パンプスなどのかかとが壊れた場合はヒールの交換用パーツも準備しましょう。
【状態別】セルフでできる!靴の底がはがれたときの修理方法
靴の底がはがれたときは、ただ接着剤で貼り付けるのではなく、修理部分や靴本体の状態にあわせて適切な方法を取ることが大切です。ここからは、靴の底がはがれたときの修理方法について状態別に解説していきます。
ヒール部分のラバーがはがれたときの修理方法
ヒールのラバー(=トップリフト)がはがれた際には、交換用のリフトを用意すれば修理できますが、左右の高さが合うように微調整することが重要です。修理の際にはトンカチを使うため、手元に注意してくださいね。
ヒール部分のラバーがはがれたときの修理方法
- ペンチでヒールの先端のラバーを取り外す。
- ゴムを取り外した部分の穴に、交換用リフトの金具部分を正しい向きで差し込む。
- トンカチで叩いて金具部分を押し込んでいき、左右の靴が同じ高さになるように調節し、固定させる。
- 差し込んだリフトのはみ出した部分・高さが合わない部分は紙やすりで調整する。
リフトが上手く固定できない場合は、ラバーを外したときの穴に接着剤を流し、交換用リフトを差し込んで固まるまで押さえておくだけでもOKです。
靴の底がはがれてソールに穴が空いたときの修理方法
靴の底がはがれた際に、ソール部分に穴が空いてしまった場合には、穴の大きさにあわせた補修・交換用パーツを使えば簡単に処置が可能です。補修・交換用パーツを貼り合わせたあとは、はがれるのを防ぐために靴用接着剤で補強を加えておくのがおすすめですよ。
補修用パーツが用意できない場合には、靴用の補修材を直接塗って硬化させるだけでもOKです。補修材を使うと、靴を履いたときに違和感が出ることもあるため、その場合は紙やすりで整えるようにしましょう。
靴の底がはがれてソールに穴が空いたときの修理方法
- 布やブラシで靴の底の汚れ・水気を落とす。
- 紙やすりで、穴の周り・すり減った部分をなめらかに磨く。
- 穴の外側から補修・交換用パーツを置いてみて、フィットする位置が見つかったら、黒いペンで印をつけておく。
- 補修・交換用パーツの裏に靴用接着剤を塗布し、印にあわせて貼り合わせる。
- しばらく乾燥させたら、補修・交換用パーツの周りに靴用接着剤を塗り、さらに乾燥させたら完了。
靴の底のつま先部分のソールがはがれた場合の修理方法
靴の底のうち、つま先部分のソールのみがはがれた場合も、はがれた部分の処理をしっかりすることで簡単に修理が可能です。交換用のゴム板を貼り付ける前に、紙やすりではがれた部分を下処理することで接着剤が密着する力を高められます。
靴の底のつま先部分のソールがはがれた場合の修理方法
- はがれた部分の周囲を紙やすりで軽く削る。
- 靴の裏側に古い接着剤の跡が残っている場合は、ヘラなどでやさしく取り除く。
- はがれた部分に接着剤を塗布し、靴の形にあわせてカットしたゴム板などを貼り合わせる。
- 完全に固まるまで乾燥させたら、紙やすりで表面を磨いて完了。
靴の底からソール全体がはがれた場合の修理方法
靴の底からソール全体がはがれた場合も、接着剤と紙やすりで修理が可能です。接着剤が床に付着しないように、新聞紙やダンボールなどを敷いておきましょう。
靴の底からソール全体がはがれた場合の修理方法
- 布やブラシで靴全体の汚れや水分を落とす。
- 紙やすりで靴の裏側を軽く削り、古い接着剤の跡をヘラなどで取り除く。
- 靴用接着剤を靴の裏側に塗布し、はがれた靴の底を貼り合わせる。
- 接着剤が完全に硬化するまで乾燥させたら完了。
靴の底がはがれたときの修理におすすめのアイテムをご紹介!
靴の底がはがれたときには、便利アイテムを使うことでより簡単に修理できるようになります。ここからは、靴の底がはがれたときの修理におすすめのアイテムをご紹介します。
接着後はラバーのようなやわらかさを発揮【ロックタイト 黒ゴム接着剤】
|
〈ロックタイト 黒ゴム接着剤〉は、水に濡れるものの補修に適した耐水性の高い黒ゴム用接着剤です。速乾タイプで、乾燥後もゴムの柔軟性があるため、靴の底がはがれたときの補修にも活用できます。
ラバー・革靴の底がはがれたときにも便利【ダイナトロン 黒ゴム接着剤】
|
〈ダイナトロン 黒ゴム接着剤〉はゴムやキャンバス布、皮革まで、さまざまな素材に使える接着剤です。乾いたあともゴムのようにしなやかな仕上がりになるため、靴の底の補修にも便利なアイテムです。
はがれた靴の底や陶磁器などさまざまな素材に対応【セメダイン スーパーX ナチュラ】
|
〈セメダイン スーパーX ナチュラ〉は、多彩な素材に対応できる多用途接着剤です。熱や水に強く、約-40〜120度の温度環境に対応できるため、屋外でも使用できます。
硬化後も肉ヤセせず、はがれた靴の底の凹凸にもフィットします。垂れにくく垂直面にも使えるため、セルフ補修にも使いやすいでしょう。
はがれた靴の底もスピード接着!【コニシ ボンド ウルトラ多用途 S・U ブラック プラパック】
|
〈コニシ ボンド ウルトラ多用途 S・U ブラック プラパック〉は、金属や硬質プラスチックなどの多彩な素材に対応した接着剤です。独自開発したシリル化ウレタン系樹脂「SUポリマー」を採用したことで、スピーディに接着します。
10mm・20mm・35mmの3つの塗り幅で塗布できる高性能ヘラが付属しているため、修理箇所にあわせてさまざまな使い方ができますよ。
透明で本体からはみ出しても目立たない【コニシ ボンド くつピタ クリヤー】
|
〈コニシ ボンド くつピタ クリヤー〉は、素早く接着して雨にも強い靴用接着剤です。靴のつま先やかかとの補修・接着に特化しており、硬化後は透明になるため、たとえはみ出しても修理箇所が目立ちません。
靴の底の劣化・はがれを予防する3つの方法とは?
靴の底がはがれてしまうと、使用感を大きく左右します。実は普段の生活でできる簡単な方法で、靴の底の劣化やはがれを予防できますよ。ここからは、靴の底の劣化・はがれを予防する3つの方法をご紹介します。
①靴の保管時は湿気を避ける
靴を保管する際には、湿気を避けることが大切です。靴の底がはがれる原因となる加水分解は、靴の底が水分を吸収することで起こるため、保管場所の湿度が高いと靴が劣化しやすくなってしまいます。
下駄箱に除湿剤を入れておくのはもちろん、雨の日に履いた靴はしっかり水気を拭きとったり、風通しのよい場所で陰干しを行い保管することも大切です。
②定期的に履く
靴を定期的に履くことも、劣化や靴の底のはがれを防ぐ方法の一つです。靴はパーツ同士の接着部分をはじめ、さまざまな場所に隙間があります。隙間には空気が入り込んでおり、定期的に履いて歩くことで空気の交換を行ったり、靴底の水分を分散させることで加水分解を抑制し、靴の底がはがれたり、劣化したりするのを防げます。
また、同じ靴をずっと履くのではなく、複数の靴をローテーションしながら履くのがおすすめです。1日履いた靴は、汗などの水気を乾燥させるために使わない日を設けることで、しっかり乾燥させることができます。靴を休ませている間に靴用の乾燥材などを入れておくことで、より靴を長持ちさせることができるでしょう。
③正しい歩き方を心がける
外出する際には、正しい歩き方を心がけることも靴の劣化防止につながります。つま先に体重がかかる歩き方や、靴の裏を地面に擦るような歩き方だと、靴の底の一部分だけに過度な負担がかかってしまうため、ソールがはがれたり穴が空いたりすることがあります。
特にランニングなどの激しい運動をする場合は注意が必要です。歩くときや走るときには、足裏全体に体重がかかるように心がけましょう。
靴の底がはがれたときも、簡単な修理方法で落ち着いて対応しよう!
常に摩擦や湿気などの影響を受けているからこそ、靴の底ははがれやすい部分です。今回ご紹介した修理方法や予防方法も参考にしながら、実際に靴の底がはがれたときにも落ち着いて対応できるようにしましょう。
監修者
永田 新 ※1「シューケアマイスター」とは:「一般社団法人 日本皮革製品メンテナンス協会」が主催するシューケアマイスター試験を合格した知識とスキルを兼ね備えたシューケアに関するスペシャリストのこと。 |
【おすすめの関連記事】
スエード靴の汚れの落とし方!簡単なケア方法やおすすめアイテムもご紹介>>
靴磨き世界一に聞く!革靴の"最高に美しい"磨き方とお手入れ プロの手順や道具も解説>>
靴磨きの道具は育つんやで!>>
※工場生産遅延の影響で入荷日の遅れや商品仕様の変更が生じる場合がございます。
※掲載商品は一部店舗では取り扱いがない場合がございます。取り扱い状況については各店舗へお問い合わせください。
※掲載商品は、一部の店舗ではお取り寄せになる場合がございます。
※一部価格・仕様の変更、および数に限りがある場合もございます。
※掲載写真には一部演出用品およびイメージ画像が含まれ、店舗でお取り扱いがない場合がございます。
※商品価格等の情報は、掲載時点のものです。