ハンズのシューケアマイスターが靴にまつわる「あの人」に会いに行き、聞きたいことや知りたいことを深掘りしてトークを展開する連載企画。第2回目の今回はシューケア女子対談!株式会社R&Dが展開するM.モゥブレィ認定シューケアマイスター公式ショップ「FANS.エキュートエディション新橋」の井上伊吹さんを訪ねました。
※シューケアマイスターとは:「一般社団法人 日本皮革製品メンテナンス協会」が主催するシューケアマイスター試験に合格した、知識とスキルを兼ね備えたシューケアに関するスペシャリストのこと。
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ちょっぴり異色のシューケア女子トークは、どんな展開に...?
今回のホストとなるハンズのシューケアマイスターはこちら!
ハンズ新宿店 シューケアマイスター 阿部
そして今回のゲストはこちら!
株式会社R&D シューケアマイスター事業部
FANS.エキュートエディション新橋 シューケアマイスター 井上伊吹さん
―お二人はこれまでに面識はあったんですか?
阿部:今日が初対面です。私が一方的に存じ上げていて、ぜひお会いしたかったんです!
井上さん:うれしいです!R&Dの女性シューケアマイスターはボーイッシュな方が比較的多いので、女性らしい感じでとても新鮮です(笑)
―シューケアというと男性のイメージがありますが、お二人はどうしてこの道に進まれたんでしょうか。
井上さん:私は元々、アパレル関係で10年ほど働いていたんですが、その頃から革製品がすごく好きで。でもお手入れのことはよくわからないままで。新しい仕事を始めようと考えた時に、革製品が好きだし、せっかくなら自分でお手入れができたらよいなという気持ちでこの道に入りました。
阿部:元々、靴は好きだったんですか?
井上さん:無類の靴好きというわけではないですが、普通にファッションとして好きでしたね。
阿部:私は高校を卒業してから服飾の学校に通いました。そして就職してから初めて革靴を買ったんですが、シューケア担当の先輩にその靴を磨いてもらったらものすごくきれいになって。そこで衝撃を受けてハマりましたね。
井上さん:最初にどんな革靴を買ったんですか?
阿部:実は今日、履いてきているんです。井上さん:なんと!
阿部:こういう話が出るかなと思って仕込んでおきました(笑)
井上さん:素晴らしい(笑)。そしてかわいい!
―井上さんは「靴磨き女子部」の活動もされているそうですが、どんな活動内容なんですか?
井上さん:靴磨きをしている女性がまだまだ少ないので、もっと靴を磨いてほしい、革靴を愛してほしいという思いを込めて、R&Dの女性社員が集まって立ち上げた活動です。SNSやイベントを通して、女性に向けて靴磨きの楽しさを発信しています。
阿部:インスタは私もチェックしています!靴磨き女子部が監修したセットなども販売していたり、とても楽しそうですよね。
女性ならではの楽しみ方も、この仕事ならではの「あるある」も
阿部:私はこの仕事を始めてから、靴をより引き立たせるために靴下にこだわるようになったんですが、井上さんは何か変化はありましたか?
井上さん:以前はスニーカーばかり履いていて、「履いて、潰して」みたいなことを繰り返していました。でもお手入れを覚えて革靴の魅力に目覚めてからは、それまでパンツスタイルが多かったんですが、休みの日にワンピースとかを着て革靴と合わせるようになりましたね。革靴を主役にして、上をかわいい感じにして、より女子らしく(笑)
阿部:最近は明るい色の革靴も増えているので、女性らしい服装とも合わせやすいですよね。
井上さん:だから女性にも気軽に革靴を楽しんでほしいんです。お手入れについても、女性はメイクに慣れているので同じような感覚と言うとすぐに伝わるし。
阿部:シューケアやレザーケアって、よくメイクに例えられますもんね。たしかにクリームの量の加減や色の乗せ方は女性の方が上手い気がします。
井上さん:下地を塗る時とか、アイシャドウを指で乗せる時とか、自然と身についている感覚があるので、それを無意識に活かせているのかもしれません。
―では、お手入れの際に一番こだわるポイントはどこですか?
井上さん:最初の汚れ落としですね。前に乗せたクリームをきちんと取って、革をすっぴんの状態に戻してあげないと、新しいクリームも入っていかないので、まずはそこを意識しています。ベースづくりが肝心。
阿部:同感です。仕上がりの良し悪しの半分くらいは汚れ落としで決まると言っても過言ではないですからね。あと私はお客様に必ず「仕上げのブラッシングと乾拭きはしっかりやってください」とお伝えしているんですが、仕上げまで丁寧にというのは自分でも意識しています。
井上さん:ブラッシングって楽しいですよね。無心になって、ボーッとしながらでもできるし。
阿部:いつまでだってできますよね。たまにブラッシングしながら店内を歩いている時もあります(笑)
井上さん:あの...私だけかもしれないんですが...この仕事を始めて、それまでぴったりサイズで着ていた革ジャンが右腕だけパンパンできつくなっちゃったんです。たぶんブラッシングのしすぎですよね...?
阿部:同じです!私も前に着ていたワイシャツが右腕だけパツパツで擦れるようになりました。左はならないのに。
井上さん:やっぱり!なりますよね!わかり合えてよかったです(笑)
阿部:もう目に見えてわかっちゃうレベルで(笑)。女性の方が男性より元々の筋肉が少ないからなんでしょうか。"靴磨きあるある"ですね。
接客で心がけていることは?そしてお気に入りのアイテムは?
―客層も違うと思いますが、接客の面ではどんなことを心がけていますか?
阿部:初心者のお客様は、雑誌で見たからといった理由で商品を選んで、自分で納得して買っていない方も多い気がしていて。それだと結局使わなくなってしまうかもしれないので、ちゃんと使い続けてもらえるように、「難しくないですよ」と伝えつつわかりやすく説明するように心がけています。
井上さん:私も「いろいろ必要です」と言って最初からハードルを上げないように、スタートはこれさえあれば大丈夫というものだけを紹介して、それで楽しかったら次のステップに進みましょう、というスタンスですね。
阿部:「これもあると便利です」と言いたい気持ちをグッとこらえて(笑)
井上さん:そうそう(笑)。あとウチのお店の場合、自分の靴が磨かれているのを見ているうちに自分でもやってみたくなったというライトな感覚の方も多いので、はじめから多くをおすすめするのは避けています。
阿部:ハンズの場合は、自分でお手入れするための目的買いのお客様がほとんどです。新しい靴を買ったとか、すでにトラブルが起きているとか、その解決策を求めているお客様が多いですね。
井上さん:そこは真逆ですよね。ウチの場合はスーツのお客様が履いている靴を磨きに来るというのが大半です。元々、新橋は"靴磨きの聖地"とも呼ばれていてまわりにも同業者がいくつかあったりするので、「靴は磨いてもらうもの」という感覚の方が多いのかも。
―では、そんなお二人のお気に入りのアイテムを教えてください。
井上さん:もう圧倒的にこの〈デリケートクリーム〉ですね。靴にもバッグにも使える保湿メインの革用クリームです。とりあえずこれを塗っておけば間違いない(笑)M.モゥブレィ デリケートクリーム 1,100円(税込)
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阿部:ハンズでも鉄板の人気商品です!店頭でも「デリケートクリームを塗って保湿してください」というアドバイスは頻繁にします。
井上さん:万能ですからね。ムラにもならないし、色も選ばないし、ひとつあれば革製品には何でも使えます。M.モゥブレィの商品の中で私が最初に使ったのがこれなので、個人的な思い入れもあるんです。
阿部:私のお気に入りは〈紗乃織刷子〉ですね。
M.モゥブレィ 紗乃織刷子 手植え 17,600円(税込)
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阿部:四角いけど角がなくて、側面に溝があるから握りやすくて、手植えでつくりもしっかりしていて。こちらは白馬毛タイプですが、〈紗乃織刷子〉シリーズは間違いないですね。
井上さん:ちょっとお値段は張るのでマニア向けとも言えますが...誰にでも使いやすいブラシで、ギフトにもおすすめです。
阿部:こだわればこだわるほど、沼にハマっていくんです...。でも、お気に入りのものを使って磨いている時間って、普段と違う時間が流れる感じで心地よいですよね。
SDGsが後から追いかけてきた?二人にとって「靴磨き」とは?
―昨今、SDGsが関心を集めていますが、シューケアとの関係性についてどうお考えですか?
井上さん:本革の靴はお手入れすれば何十年も履けます。そういう意味ではSDGsそのものではありますが、それは元々あった形で、何と言うか当たり前というか...。
阿部:ですよね。言われてみればそうだよね、という感じで、ことさら今になって意識することでもないのかなと。
井上さん:お手入れしながら大切に使う。使い捨てにしない。まさにそれってシューケアに当てはまることだから、言ってしまえば「SDGsが後から追いかけてきた」感じですね。
―なるほど。では商品特徴としてSDGsの要素を含むアイテムを教えてください。
阿部:そういう観点で言うと、こちらの〈ヒノキドライ〉ですね。天然木曽ヒノキの端材を有効活用した、靴の中に入れる除湿乾燥剤です。
M.モゥブレィ プレステージ ヒノキドライ 1,870円(税込)
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井上さん:環境にやさしいし、繰り返し使えるし。言われてみればSDGsだ。そういった意味では、こちらの〈デオドラントパウダー〉も同様ですね。
M.モゥブレィ プレステージ デオドラントパウダー 1,980円(税込)
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阿部:処分されてしまうホタテの貝殻を有効活用した消臭パウダーですね。ホタテの貝殻が持つ成分が、靴の中を菌が繁殖しにくい環境にしてくれます。
井上さん:どちらも最近になって出始めた商品ではなく、SDGsへの関心の高まりに合わせて注目され始めた感じです。でも、その特徴をきちんと理解して使えば、意識もさらに高まるかもしれないですね。
―シューケアとSDGsは、元から親和性が高かったんですね。
井上さん:世間の流れ的にも、本当に気に入ったものを長く使っていこうという感覚の人が増えているので、ぜひシューケアも気軽に始めてみてほしいです。
阿部:手間をかけた分だけ返ってきますからね、きれいになったり、ニオイが取れたり。こちらからの一方通行ではなく、靴の方からもしっかり応えてくれるのがシューケアの醍醐味だと思います。
―では最後に質問です。お二人にとって「靴磨き」とは何ですか?
井上さん:私にとっては"楽しみ"ですね。もう単純に、やっていてすごく楽しいし、飽きないですから。仕事でもあり、趣味でもあり、私の毎日に欠かせないものです。
阿部:私は...かっこよく言うと"原点"かな。この靴から始まって、それが仕事になって。自分が初めて磨いてもらった時の感動をお客様にも同じように届けたいですし、スタート地点に立ち返るという意味でも"原点"です。
井上さん:そういえば、今日は意図せず示し合わせたように二人ともウィングチップですね。
阿部:ホントだ!
井上さん:レディースサイズの革靴ってかわいいんですよねぇ。
阿部:こういう会話を女性同士でもっと楽しみたいです!これを機に今後も交流よろしくお願いします(笑)
井上さん:ぜひぜひ!一緒にシューケア女子の世界を盛り上げましょう!
撮影協力:FANS.エキュートエディション新橋(港区新橋2-17-14 JR東日本 新橋駅構内)
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おわりに
今回は、女性ならではの感覚や感性が楽しいシューケア女子対談をお届けしました。次回の連載3回目は〈ジェイソンマーク〉の新ショップを訪問するスニーカー編をお届けします。乞うご期待!
【連載】シューケアマイスターの「あの人に会いたい!」vol.1 靴磨き世界チャンピオン 長谷川裕也さん編
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