【連載】文房具への異常な愛情 〜Story03.ハイタイドはトレンドの波にも乗っている〜

元クレイアニメ作家で輸入文具店で働いたのちにハンズにやってきたという異色の文房具バイヤー大島が、愛のあふれる独自の視点で注目の文房具をご紹介していく連載企画。第3回目の今回、取り上げるのは〈ハイタイド〉。新商品をはじめとしたアイテムの魅力をじっくりと掘り下げます!

今回は〈ハイタイド〉のオフィスにやって来ました!

―大島さん、こんにちは。連載も3回目。今回はどんな文房具を取り上げるんでしょうか。

大島:今回は、〈ハイタイド〉さんの東京オフィスにお邪魔します。ハンズ限定品をはじめとした新作も登場するので、そのお話を聞きたいと思います。

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ハンズ 文房具バイヤー 大島
取材当日の東京オフィスは展示会を開催中でした。さっそく魅入る...。

―〈ハイタイド〉というと、おなじみの〈penco〉ブランドに代表される日本メーカーですよね?

大島:その通り。扱っているアイテムが、輸入文具好きな私の琴線に触れるものばかりなんですよね。今日はその魅力の秘密に迫るために、こちらのお2人にお時間をいただきました。よろしくお願いします!

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株式会社ハイタイド 営業部 左:安達さん 右:園田さん

安達さん・園田さん:よろしくお願いします!

―ではまずは〈ハイタイド〉の紹介を簡単にお願いします。

安達さん:1994年に福岡で設立され、今年で27年目になる文房具メーカーです。「ハイタイド」は英語で「満潮」という意味なんですが、創始者がサーファーで、いつも"満たされていたい"ということで名付けたそうです。

大島:いいなぁ、そのハッピー感。アメリカにも展開されてましたよね?

園田さん:はい、ロサンゼルスにショップがあります。福岡にショップをつくり、その次が東京じゃなくて、いきなりロサンゼルスでした。

大島:かっこいい!それもサーファーのノリだ(笑)

安達さん:(笑)会社の始まりはダイアリーからでした。当時、海外のようなかっこいいものが日本にあまりなかったということで、創始者がそれをつくりたいという想いで開発したのが始まりです。

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こちらが創業当時からあるダイアリー。現在の品名は〈ミニットマネージャー〉。

大島:今でも人気の超定番。これから始まったんですね。

園田さん:〈ハイタイド〉のアイデンティティです。デザインも当時からほぼ変わっていません。これをスタート地点として、今では文房具をつくりながら、インテリアやアウトドアなど、割と自由にさまざまなジャンルのものを展開しています。

安達さん:〈ハイタイド〉の中にコンセプトの異なる複数のブランドがあることも、その自由さの表れですね。

―大島さんは、〈ハイタイド〉にどんなイメージを持っていますか?

大島:私の中では"シティボーイ"ですね。昨年、渋谷の「MIYASHITA PARK」にショップをオープンされましたが、スケーター達がいるあの立地の感じこそが、まさに〈ハイタイド〉さんのイメージです。

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―ブランドの中では、どれが印象的でしょうか。

大島:やっぱり一番馴染みがあるのは〈penco〉だなぁ。初めて見た時は「海外の商品だろう」と思い、後から日本のメーカーだと知ってびっくりした記憶があります。私の中では完全に「ハイタイド=penco」です。

安達さん:〈penco〉はかなり初期からありますからね。創始者がアメリカ製のボールペンを見たことがきっかけで、「pen company」略して「penco」という名の架空の会社から仕入れているという想定でスタートしたんです。

大島:そういう由来だったのか。面白い。

園田さん:根底にあるものは今も変わらず、海外のブックストアにあるような、ちょっとノスタルジックな文房具をつくっています。

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大島:あと、〈penco〉と言えばクリップボードですよね。〈penco〉の代名詞と言っても過言ではない、ロングセラーかつベストセラーです。

安達さん:おかげさまでクリップボードは弊社の商品の中でも常に人気1位2位という感じで、ずっとご好評いただいています。

大島:使い勝手がよいし、デザインも素敵だし、カラーも他社のものと比べて豊富だし、文句なしです!

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ハイタイド
penco クリップボードA5サイズ 495円(税込)、 A4サイズ 660円(税込)
※〈A5サイズ〉は店頭にてお取り寄せ対応のみ行っている商品です。
ミニットマネージャー A5サイズ
※写真の〈ミニットマネージャー〉は今年発売予定の参考商品です。
※2021年3月始まりの〈ミニットマネージャー A5サイズ〉は各2,090円(税込)で、一部店舗でのみ発売中です。

〈penco〉から新たなアイテムが登場しました!

―それでは、こちらの新商品の紹介をお願いします。

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ハイタイド penco
左:バレットボールペン ライト 各660円(税込)
右:ドラフティングペンシル 2,310円(税込)
ドラフティングボールペン 2,420円(税込)
バレットボールペン 各3,300円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いの無い場合がございます。

安達さん:「バレット(弾丸)」の形をした〈バレットボールペン〉は、通常はコンパクトですが、書く時にキャップを逆側に付けると長くなって持ちやすくなります。ボディがカラフルな〈バレットボールペン ライト〉は、わずか8gという軽さも自慢です!

大島:めちゃめちゃ軽い!

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園田さん:アメリカのボールペンをイメージしたデザインですが、一般的な4C規格の0.7mm油性ボールペンの芯を使っているので、替え芯も手に入りやすくて長く使えるのもポイントですね。

大島:このカラーバリエーションもよいですね。どこか王道じゃないところが。

安達さん:開発時には候補が50色くらいあったんですが、社内で人気投票が行われたんです。その意見が反映されたのかはわかりませんが(笑)

大島:(笑)ちょっと言葉は悪いですが、個人的にはこのチープな素材感もすごく好きです。バッグに入れていても邪魔にならないし、いつも持ち歩きたいペンですね。

園田さん:ちなみに、ゴールドとシルバーの〈バレットボールペン〉は、ボディが真鍮でできています。

大島:ずっしり重たくて、まさに弾丸だ。これはこれで高級感があってよいですね。専用パッケージ付きなのでギフトにもぴったりです。

―では〈ドラフティングペンシル〉と〈ドラフティングボールペン〉はどんなアイテムですか?

園田さん:製図用のペンをモチーフにしたシャープペンとボールペンです。

大島:製図用のペンって、よく小中学生がお小遣いを握りしめて買いに来るんですよね。絶対に製図には使わないと思うんですが(笑)きっとDNAに組み込まれているんです、こういうメカっぽいものに惹かれる何かが。

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安達さん:たしかにいましたね、こういうのを普通に使ってる子。

大島:あいつ何かすげぇの使ってるよ、みたいな(笑)

―こちらはかなりコンパクトサイズですね。

園田さん:手帳などと一緒に持ち運べるようにコンパクトにしました。ボディはすべて金属ですが、グリップ部分は滑らないように加工されています。

大島:ボールペンには針のようなペン先を使っているので細かいところも書きやすいし、このずっしり感もあわせてプロユースな感じでそそられますね。

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―さらに、7月に発売される新商品もあるとか?

安達さん:はい、こちらです。

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ハイタイド penco ボウルペン 各990円(税込)
※7月発売予定です。

大島:いいですねぇ、これ。名前もダジャレで(笑)

安達さん:弊社では商品開発する時に、アメリカのノベルティや蚤の市にあるような雑貨などからイメージを持ってくることが多いんですが、これもメジャーリーグの球場とかにあるおみやげ用のボールペンに着想を得ています。

大島:なるほど。

安達さん:80年代的な香りがするし、単純にかわいいし。ということでボウリングに行き着いたんですが、この形のペンはアメリカにもなくて、型から起こしてつくりました。

大島:何より木製なのが素敵です!感触もよいし、木彫り好きの私にはたまりません!

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―書き心地はどうですか?

大島:子どもがクレヨンを握り書きするような感覚で持てて、しかもペン先には重みがあるので、見た目以上に書きやすいですね。

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安達さん:ちょうどよい太さを見つけるまでに何度も調整を重ねました。

大島:見た目はおもちゃみたいなのに、ちゃんとペンとして書きやすいものになっています。しっかり"シティ"な感じは残っていて、私の中の"penco観"とドンピシャです。

大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part1

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ハンズとのコラボによるダイアリーカバーも登場!

―さらに今回、ハンズとのコラボアイテムも登場したんですよね?こちらの特徴や開発経緯なども教えてください。

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ハイタイド×ハンズ penco ダイアリーカバー
B6サイズ 各3,500円(税込)、 A5サイズ 各3,600円(税込)

園田さん:1年ほど前に、ハンズのPB開発担当の方から何か新しいことがしたいねという話があって、それならダイアリー関連で何かをつくりませんかと。そして、弊社に元々ある「キャリータイト」という丈夫なターポリン素材のケースシリーズをカバーにしたらという話になりました。

大島:なるほど。機能的にはどんな特徴があるんですか?

園田さん:一般的なダイアリーカバーは、両側のポケットに手帳の表紙と裏表紙を差し込んで使います。でもこれは、片側が筒状になっているんです。ここが一番の特徴ですね。筒状の部分は両方向から差し込めるので、メインの手帳の逆側からマンスリーのガントチャートなどを差し込んで、一緒に使えるんです。

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大島:2冊使いする人も増えていますからね。これは便利かも。

安達さん:マジックテープも縦の幅いっぱいだと剥がしにくいので、感覚を空けて付けることで開閉しやすくしました。

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大島:ちょっとした工夫ですが、たしかに開けやすい。

―大島さんの第一印象はどうですか?

大島:何と言うか、発売から5年経つような、ずっと前からある感覚です。安心感があって、自然な溶け込み度がすごい。でもだからこそ、ただ置いておくだけでなく、背景のストーリーとかこだわりの部分をきちんと伝えたいですね。

園田さん:それはぜひ!ハンズさんは機能性を求めるお客様が多いので、そういう部分と〈penco〉のブランドカラーを上手くマッチさせられたと思っています。

大島:今後はアクセサリー類が充実すると楽しいかもしれませんね。背の部分全面をマジックテープにして、そこにポケットみたいなものを付けられるとか。カスタムする感じで、これをベースに何かをプラスすれば、さらに広がりそうな予感がします。

園田さん:なるほど。参考にさせていただきます。

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大島:あとは、もうちょっとハンズ色を出しても...せめてパッケージにロゴくらいあっても、なんて思ったり...。

安達さん:そちらも今後の課題に...(笑)

大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part2

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トレンドの波にも乗る、それが〈ハイタイド〉の魅力

―いずれのアイテムにも共通しますが、デザインの個性だけでなく、使い心地や機能にもこだわっているところがポイントですね。

大島:機能美ですね。そこが日本のメーカーらしさです。

園田さん:そうですね、そこは強くこだわっています。

大島:〈ハイタイド〉という1つのメーカーが、異なるイメージの複数のブランドで、アイテムを出しているのが面白いんですよね。スタイリッシュなものをつくっているメーカーが急に悪ふざけをする、といった感じで。

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安達さん:異なるイメージのアイテムを隣に並べても、意外と違和感がないんです。それは〈ハイタイド〉という芯が通っているからだと思っています。

大島:文房具って、実用と嗜好の中間だと思うんです。〈ハイタイド〉さんは、遊び心をしっかりと伝えながら、心のゆとりを持った商品づくりをされているので、私の中では"文房具の真髄"だなと思っています。

園田さん:うれしい評価ですね。

安達さん:よくも悪くも〈ハイタイド〉自体の名前はあまり浸透していません。私も入社してから、身近に〈ハイタイド〉の商品がいろいろあることに気付いたくらいですから。でもそれが、さまざまな人の心に入り込み、ついつい手に取ってしまう魅力になっているのかなと思います。

大島:さりげなくみんなが使っていて、時代が変わっても魅力は変わらない。トレンドって、ぐるぐる回っていると思うんです、昔のトレンドが巡り巡って再びやってきたり。そういった波に〈ハイタイド〉さんは上手く乗っているんですよね、サーファーだけに。

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(してやったり感)

安達さん:ありがたいお言葉です(笑)

大島:お後がよろしいようで(笑)今日はありがとうございました!

大島バイヤーの編集後記

〈ハイタイド〉さんは大人が真面目に本気で少年少女の妄想を商品に仕上げている。これは私の思う文房具の在り方と同じだなと感じました。今日も波乗りしながら少年は妄想に耽っている、そんな会社でした。

おまけ

この日の大島のリュックにぶら下がっていたのは「ロディアのメモのキーホルダー」。こちら、大島の手による自作です。文房具への(ちょっと変わった)愛は、いつでも、どこまでも...。

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※こちらは大島の私物です。

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