【集中連載Vol.2】"いい日"をつくる文具って?キングジム〈HITOTOKI〉女子と文具トーク。

皆さん文具はお好きですか?世の中には、かわいいデザイン、素晴らしい機能を持った文具がたくさんありますよね。きっと、その全てに物語があるはず...。この連載では、ハンズのバイヤー今津がいろいろな文具メーカーに声をかけ、文具女子会を開催。気になる商品の誕生秘話などをお届けします。

第二回目の文具女子会のお相手は、株式会社キングジムでステーショナリーの商品開発を担当されている望月さん。キングジムのブランド〈HITOTOKI〉の人気商品「暮らしのキロク」と「KITTA」の開発秘話について聞きました。

キングジム初のステーショナリーブランド〈HITOTOKI〉とは?

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株式会社キングジム 商品開発部 ステーショナリー課 望月さん

今津:望月さん、本日はよろしくお願いします。

望月:こちらこそ、よろしくお願いします。

今津:早速ですが、まずはキングジムさんについて簡単にご説明いただけますか?

望月:はい。弊社は事務用品メーカーです。大きな柱として、キングファイルやラベルに文字を印刷できる「テプラ」という商品があります。最近は個人向けのデジタル文具や、私が担当しているブランド〈HITOTOKI(ヒトトキ)〉などの雑貨寄りのステーショナリーグッズも多く展開しています。

今津:「キングジム」と聞くとまずファイルやテプラなどを想像される方も多いですよね。

望月:そうですね。個人向けの商品はここ数年で増えたので、やはり「キングジム=テプラ、ファイル」というイメージをお持ちの方は、まだ多いと思います。

今津:望月さんは、なぜキングジムに入社されたんですか?

望月:私、本当に文具が好きなんです。就職活動も文具メーカーしか受けてませんでした。で、縁があってキングジムに入社しました。

今津:なるほど。普段のお仕事ぶりからも、文具熱の熱さはかなり感じていました。そして今は〈HITOTOKI〉というブランドに携わられているんですね。

望月:そうです。2017年4月に立ち上がったブランドで、1年と少しが経ちました。

今津:ブランドが立ち上がったキッカケは何だったんですか?

望月:キングジムの中でも雑貨寄りのステーショナリーグッズが増えてきたので、そういった雑貨をひとくくりにできて、その世界観を発信していけると良いという話になり、〈HITOTOKI〉が生まれました。〈HITOTOKI〉は、日々の中にある小さなしあわせに気づいたり、そのしあわせを大切にしまっておけるようなアイテムを揃えています。

今津:商品開発にはどこからどこまで携わるのですか?

望月:基本的には企画、開発業務、生産、商品のPRツールの制作まで一貫して携わります。デザインの監修、工場での立会いなど商品には最後まで関わるようにしています。

今津:分業せずに、一貫して商品開発をされている分、思い入れも強くなりますよね。
普段、アイデアはどのように集めているんですか?

望月:アイデアを集めるときは、外へ出かけるようにしています。会社にいても煮詰まるだけなので、なるべく街へ出て流行りものを見たり、文具屋さんへ行って、売り場の展開をチェックしたりしています。

今津:チームの方と行くんですか?

望月:一人で行きますね。アイデア集めは一人で悶々としたいタイプなので。大きな展示会などには皆で行きますよ!

今津:そうですよね。よく展示会で皆さんをお見かけします。そういえば、初めてお会いしたのはいつでしたっけ?

望月:今津さんと初めてお会いしたのは、2年前、当時新商品だった「暮らしのキロク」の商談のときですね。

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今津:2年前か。営業の方と一緒に来ていただいたんですよね。
実は当時、営業の方に開発担当で私と同世代の女性がいると聞いて「ぜひ、お会いしたい!」と頼んだんです(笑)。

望月:そう聞いて私も嬉しかったんです。普段、バイヤーさんとお話しする機会はめったにないので、直接商品を見てもらって、ご意見をいただけるのは本当にありがたいなって。でも、実際商品をお披露目するときは、めちゃくちゃドキドキしているんですけどね(笑)

今津:「暮らしのキロク」を初めて見たとき「これ欲しい!」と、ときめいたのを覚えています。ぜひ開発秘話を聞かせてください。

それぞれの毎日に、それぞれのキロクを。「暮らしのキロク」で。

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暮らしのキロク 各450円+税

望月:「暮らしのキロク」は、日々の暮らしのできごとを簡単に記録できるノリ付きメモです。例えば、今日見た映画や、食べたごはん、ダイエットの記録などをメモに書いて、ノートに貼るだけで可愛く記録することができます。2015年の販売当初は12種類からスタートして、今では32種類にまで増えました。

今津:発売当初に比べて随分カテゴリが増えましたよね。開発のきっかけは何だったんですか?

望月:社会人3年目の時に、1日1ページの手帳を使い始めたんです。学生の頃にも使っていたのですが、久々に書いてみようかなと思って。でも、実際に使いはじめてみると1日1ページが埋まらなくて(笑)学生の頃は時間もあったので、可愛くデコったりもしていたのですが、社会人になるとゆっくり日記をつける時間もなくなってしまい、思い通りにページが埋められなかったんです。

今津:わかります。私も絵は得意じゃないし、基本文字のみなので、なかなか埋まらないんですよね。

望月:でも書くからには、かわいく記録したいので「手軽にかわいくページを埋められたらな」と思ったんです。

今津:望月さんの実体験が開発のきっかけとなったのですね。当時、1日1ページの日記が流行りはじめた頃でしたよね。そして、この「暮らしのキロク」を皮切りに、1日1ページを埋めるためのグッズが次々と出てきた気がします。

望月:私たちのように、埋めたくても埋まらない人がきっとたくさんいたんですね(笑)

今津:カテゴリはどのように決められているんですか?

望月:最初は自分が欲しいものをリストアップしました。そして、手帳ユーザーさんがSNSでアップしている日記をチェックして、何について、どのような話題を書いているのかをリサーチしました。そして、その中の上位をカテゴリ化したんです。

今津:大変な作業ですね...。今もその方法でカテゴリ決めをされているんですか?

望月:1弾目以降は、お客様の反応やアンケートからご要望を伺って、カテゴリの追加や新サイズの導入を行っています。

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今津:カテゴリを決めるのも大変そうですが、カテゴリごとに一つ一つ項目も違いますよね。

望月:そうなんです。その項目決めも苦労した点の一つです。例えば「ワイン」というカテゴリがあるのですが、私はワインを飲まないので知識がないんですね。だから、本を読んで、ワイン好きの方はどのような内容を書くのかを調べたり、映画も色んなレビューサイトを見て、何についての書き込みが多いのかをチェックしたりしました。

今津:その作業を32種類分...、大変だ...。望月さんも「暮らしのキロク」を使われていますか?

望月:はい。もちろん使っていますよ。

今津:ぜひ見せてください!

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今津:すごくかわいい!さすがですね!

望月:本当ですか!ありがとうございます。
一応、商品は実験的に使うようにしているんです。そこから新しいアイデアや、改善点が見つかるので。

今津:今までに、どのような気づきがありましたか?

望月:「こういうカテゴリがあったら良いな」と思うこともありますし、そのほかに、もう少し違うサイズがあれば便利だなと気づくこともあります。

今津:そうやって、さらなる新商品が生まれるのですね。それにしてもアイテムの使い方がお上手ですね!参考になります。

望月:「1日1枚は貼る」など、ルールを決めると以外に簡単に埋まりますよ。

今津:なるほど、試してみます。

「暮らしのキロク」ヒットの裏に隠された、土壇場の決断。

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望月:今日は、「暮らしのキロク」の初期案を持ってきました。

今津:最初は縦型だったんですね!商談で見たときはもう完成形だったので、初めて見ました。

望月:手帳のポケットに収納できる形とサイズが良くて、縦型にしていたんです。中のフォーマットも全て縦型でつくっていました。でも、縦型だと貼ったときに余白も縦になってしまうので、ショップカードを一緒に貼れなかったり、スペースの微妙な余り具合が気になって、横型の方が良いかもと思ったんです。

今津:なるほど。どの段階でそこに気づいたんですか?

望月:すでに縦型でのデザインがかなり進んでいました。でも、これは肝になる部分だと思い、デザイナーさんに急遽横型に切り替えてもらいました。あの状況で、デザイン変更を受け入れてくださったデザイナーさんには本当に感謝でいっぱいです。

今津:土壇場の判断ですね。今の暮らしのキロクがあるのは、その時の望月さんの判断と、デザイナーさんの理解があったからかもしれませんね。

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今津:こちらも試作品ですか?

望月:そうです。最初は全てクラフト紙でつくるという案も出ていました。当時、クラフト素材の付箋は少なかったので、目新しくて良いかなと思ったんですが、いろいろな色があったほうが、使っていて楽しいかなと。だから、クラフト紙に統一せず、それぞれのカテゴリーにカラーを持たせるようにしました。

今津:個人的にも、色とりどりに並んでいるとテンション上がりますし、SNS映えもしそうですよね。
それにしても、たくさんの試行錯誤が伺えますね。特にこだわった部分はどこですか?

望月:表紙、付箋内の文字を全て手書きしている点ですかね。一部フォントを使っている箇所もありますが、相当な時間がかかりました。

今津:全種類ですよね。何故手書きにこだわられたのですか?

望月:後から記入したときに、よりなじむと思ったからです。また温かみのある見映えにしたかったこともあります。でも、修正があるたびに、書き直さなければいけないので、デザイナーさんにも苦労をかけてしまいました(笑)

今津:絶対大変ですよ!中面の文章はどなたが考えているのですか?

望月:恥ずかしながら、私が考えています。

今津:え!?望月さんだったんですか!すごくないですか!?文章で意識したポイントはありますか?

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望月:ラフすぎず、かと言ってかしこまりすぎず、お客さまとちょうど良い距離感を保つことを意識しました。

今津:もはやライターの域!望月さん、すごすぎる!!

高校生の一言から生まれた新しい形のマスキングテープ「KIITA」

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KITTA 各320円+税~

今津:続いて、カード型のマスキングテープ「KITTA」についてお話を聞きたいのですが、開発のきっかけを教えてください。

望月:実は、「KITTA」は高校生と一緒に開発したんです。横浜のある高校の授業に、企業と一緒にものづくりを行うプロジェクトがあって、そこの理事長さんからお声掛けいただいたのが始まりです。生徒さんたちと何もないゼロベースから商品開発をするというプロジェクトで、月一回のミーティング(授業)を2年間続けました。

今津:2年間ですか!かなり大変な授業ですね。生徒さんたちとは、どのように開発を進められたんですか?

望月:まず、文具に関して不便に感じていることはないかを聞きました。すると、「マスキングテープはかさ張るから持ち歩きにくい」という声があったんです。実際に、マスキングテープで筆箱をパンパンにさせている子も何人かいました。その悩みを解消できる商品がつくれたらと思い、新たなマスキングテープの開発が始まりました。

今津:なるほど。

望月:次に、立体的なものではなく、平らにして、そこからどのサイズにすれば持ち歩きやすくなるかを考えました。生徒さんとも話し合った結果、手帳のポケットにも入れられる名刺サイズにして、シールのように一枚ずつ剥がせる仕様にすることに。

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今津:「KITTA」を初めて見たとき、あまりに画期的だったので驚いたのを覚えています。だって、マスキングテープは誰もがロール型だと思っていたでしょ!

望月:そうですよね(笑)

今津:デザインにも高校生の意見が含まれているのですか?

望月:はい。どういうデザインだったら欲しいか、使いやすいかを聞いたり、実際に、柄を描いてもらったりして、生徒さんたちのフレッシュなアイデアを参考にさせてもらいました。

今津:へー!なんだか楽しそうな授業ですね!
高校生たちと開発を進められていた初期のデザインに比べ、第二弾目からは、少し大人向けになった気がしますが、ユーザーさんから何かご要望があったのですか?

望月:「KITTA」を発売して実際に客層を見たときに、ほぼ日手帳やEDiTなどの手帳をお持ちのお客さまが多かったんです。元々は高校生がターゲットだったんですが、その事実を受けて、大人の女性にターゲットをシフトし、デザインの印象も変えました。

今津:確かに、ハンズでも「KITTA」を手に取るお客さまの年齢層には幅がありますね。最近、さらにデザインが増えましたよね。
私、陶器をモチーフにしたシリーズがすごく好きなんです!

望月:かわいいですよね!これは徳永遊心さんという陶芸家の方のデザインなんです。試作段階では「KITTA」と同じ比率の板でサンプルをあげてもらいました。

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今津:すごい!お話には聞いていましたが、実際に実物を見るのは初めてです。こうやって見ると「KITTA」の再現率の高さが伺えますね。

望月:この陶器の質感をマスキングテープで表現するのはかなり大変でした。

今津:でもかなり陶器っぽいですよ!どのような工程でつくるのですか?

望月:まず、マスキングテープと同じ比率の板をつくってもらい、その板を撮影します。そして、そのデータを実際のマスキングテープに落とし込むという流れです。陶器なのでツヤが出るから、光ってしまって撮影に時間がかかりました。

今津:そこまでするとは。そもそも、陶芸家の方にご依頼しようと思ったのは何故ですか?

望月:徳永さんがつくられている器や湯のみがステキで、そのデザインが「KITTA」になったら絶対欲しい!と思ったんです。

今津:完成品は徳永さんもご覧になったのですか?

望月:はい。見ていただいて、「こんな風になるとは!」と喜んでいただけました。SNSでのお客さまの反応も良かったですし、文具の展示会などで販売しても、このシリーズをまとめ買いされる方も多かったです。

今津:マスキングテープだと手に取りやすくなるから、ファンの方にはたまらないですね。

望月:そう思います。徳永さんもそうなのですが、私には大好きなイラストレーターさんがいまして。

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望月:こちらのデザインをしていただいた方で、カードやパッケージ、テキスタイル用のイラストも描かれている大森 木綿子(おおもり ゆうこ)さんというイラストレーターさん。本当に大ファンで、いつか何かの企画でご一緒したいと思っていた憧れの方です!

今津:じゃあ、夢が叶ったんですね!

望月:はい、とても嬉しかったです。もう2回ほどデザインをしていただいています。一番右にある「チョウ」というシリーズは、箔押しのデザインがされていて、私のお気に入りなんです。全てのシールに蝶が飛んでいるのがポイントです。

今津:本当だ。繊細なデザインですね!気になった作家さんがいたら、誰にも相談せずにお声かけされるんですか?

望月:はい。もちろん事前にかなり調べますが、誰かに許可はとっていません。

今津:自由ですね!

望月:本当に自由に働けるので会社には感謝しています。本当に好きな作家さんたちだからこそ、その世界観を壊すことはしたくないので、最後まで責任を持ってデザインの監修はするようにしていますし、社内にはデザイナーもいるので、そこは安心して私も声をかけさせていただいています。

形、デザイン、随所に散りばめられたこだわり

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望月:「KITTA」の初期案も持ってきました!今津さんには、ご相談もしていたので、見たことあるものあると思いますが。

今津:そうですね。懐かしいです。こういうのは手作業でつくられるのですか?

望月:はい。カッターで切って手づくりします。

今津:さまざまな試作がありますが、今の形に落ち着いたのは何故ですか?

望月:試作段階では、ちゃんとフタが閉じなかったりと、いくつか問題がありました。その問題を解決する形を探していて、見つけたのが紙マッチだったんです。見た目もかわいいし、しっかりとフタは閉じるし、紙マッチを参考に今の形に落ちつきました。

今津:なるほど。このパッケージのイラストにも意味があるんですよね。

望月:はい。これワシなんですが、何故ワシかと言うと「KITTA」が和紙を使っているからなんです。
そして、このワシ、「K」のポーズをとっているんですけど「KITTA」の「K」なんです!お客さまには、なかなかご紹介する機会がないので、気づいている方がどれだけいるのかは不明ですが(笑)

今津:こだわりが細部にまで宿っていますね!今回、2つのアイテムをご紹介いただいて、キングジムさんの物づくりに対する姿勢にかなり感銘を受けました。
これで、女子会はお開きとなりますが、本日の文具女子会はいかがでしたか?

望月:すごく楽しかったです。普段はお伝えしきれていない商品の魅力も、お届けできました。ありがとうございます。

今津:こちらこそありがとうございます!

最後にひと言、いただきました◎

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見なれたものに、ひと手間加えたり、何気ないものに、ひと言を添える。そういう小さな工夫で「いい日」は増えると思うんです。そういう小さな積み重ねから生まれる、しあわせづくりのお手伝いをこれからも〈HITOTOKI〉の文具と一緒にしていきたいです。

次回予告

今津がいろは出版株式会社の開発者と女子会を開催。試験や資格の目標を週や月ごとに計画できる、スタディプランナーについてお話を伺います。お楽しみに!

―――「文具女子会はじめました。〜物語のある文具の話」連載記事―――

【集中連載Vol.1】バイヤー今津、文具女子会はじめました。「物語のある文具の話」
【集中連載Vol.3】きっと勉強が好きになる!?いろは出版 プランニング好き女子と文具トーク
【集中連載Vol.4】システム手帳のイメージが変わる!マークス ノートづくり好き女子と文具トーク。

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