【連載vol.4】定番モノは文具沼への入り口 〜トンボさんに突撃編〜

「文具沼」という言葉を、ご存知ですか?文具の魅力にハマって抜けられない...むしろ抜けたくない、という状態を「文具沼にハマる」といいます。この連載は、文具沼にハマった事務用品バイヤーの大瀬が、あなたを深い深い文具沼へと誘(いざな)う物語。
第四回は、文具界の重鎮、〈トンボ鉛筆〉さんに突撃。普段からトンボさんの文具を愛用する大瀬が「一度行ってみたい」ということで、意気揚々とインタビューしてきました!

ただの新商品ではない。そこには脈々と続く歴史が流れている

―大瀬さんこんにちは!今日は文具と言えばこのブランド、〈トンボ鉛筆〉さんに色々とお話を聞けるんですね!いやぁ、楽しみだな〜!ねえ、大瀬さん!

大瀬:
そうですね。

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トンボのTになることでワクワクを全身で表現する大瀬バイヤー。

―言動と身体のテンションが噛み合ってないんですけど...。
大瀬:ふふっふっふっふ。

―笑い方も変だし。まあ、とにかく上機嫌ということですね!今回は大瀬さんたっての希望でトンボさんにお伺いしますが、何か理由があるのですか?

大瀬:これまでお伺いしてきたブランドさんと同じく、個人的にとても好きで、普段の仕事でも使わせていただいているものが多いからです。なので、携わる方々にお会いし、ぜひ一度御礼をしたいと思っています。

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質問に答えつつトンボさんの本社にズンズン入っていき、エントランスにディスプレイされているトンボさんの鉛筆を眺める大瀬バイヤー。

―なるほど。今日は感謝の心溢れるインタビューになるのですね。では早速行きましょう!...と、ここかな?こんにちはー!よろしくお願いします!

〈トンボ鉛筆〉の皆さん:ようこそいらっしゃいました!!こちらこそよろしくお願いします!
大瀬:よろしくお願いいたします。

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今回お話しいただく 株式会社トンボ鉛筆の皆さん。ご紹介は後ほど。

―本日は、文具、特に歴史ある定番品が大好きな大瀬バイヤーがぜひ、いつもお世話になっているトンボさんにお礼をしたいとのことでやってきました!ところで大瀬さん、いつも使っている文具は何なのですか?

大瀬:これです。

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トンボ鉛筆 シャープペンシル モノグラフ0.5 350円+税

―え...?

大瀬:あとはこれですね。

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トンボ鉛筆 テープのり ピットエアー 400円+税

―あの...大瀬さん、この2つはいつ生まれたのですか?

大瀬:〈モノグラフ〉は初代が登場したのが2014年、〈ピットエアー〉は2019年ですね。

―定番品...というほど歴史が長くない...!?大瀬さん、一体どういうことなんですか!?

大瀬:木を見て森を見ず。

―...え?

大瀬:確かにどちらも生まれてからそんなに日は経っていません。ただ、〈モノグラフ〉には〈MONO消しゴム〉が搭載されているのですが、トンボさんが消しゴムを発売したのは1969年です。
また、〈ピットエアー〉はテープのりですが、トンボさんは1971年に国産初の口紅型固形のりとしてピットシリーズを世に出しました。のりジャンルとしてはそこから歴史が始まっているんですよ。

―なるほど...比較的新しいアイテムに見えても、実はそこに脈々と続く歴史があるのですね...失礼いたしました...!

大瀬:長い歴史と、そこで培ってきた技術や経験があるからこそ、骨太なアイテムを次々と生み出すことができる。私はそう思っています。
そういう意味では、私は今現在、商品づくりに携わっている方々はもちろん、これまでMONOシリーズやピットシリーズの歴史を築いてきた方々にも、この場を借りて厚く御礼申し上げたいです。皆さん、素晴らしいものをつくり、守ってきてくださって誠にありがとうございます。これからも続くその物語、私もぜひ見届け人としてできるだけ支えていきたいと思います。何卒、よろしくお願いいたします。

―なんかまとめっぽい雰囲気ですが、まだ担当者さんの誰とも話してないですからね。

大瀬:ふふっふっふっふ。

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感謝の気持ちがほとばしる大瀬バイヤー

―では一人ひとりのご担当者さまにお話をお伺いしましょう。まずは2014年の登場以来、大瀬さんがずっと使い続けているという〈モノグラフ〉からいきましょうか。担当者の平戸さん、改めてよろしくお願いします!

平戸さん:よろしくお願いします!押忍!

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トンボ鉛筆 プロダクトプランニング部 平戸さん

―気合い十分じゃないですか!

平戸さん:大瀬さんが武闘家と聞いていたもので、リスペクトの意味合いで気持ちを入れてみました。

―武道家ですけどね。武闘家だとファイターになっちゃうので。

大瀬:あなたが〈モノグラフ〉の技術と歴史の守り手ですか。初代版から愛用させていただいていますが、こんなに素晴らしいものをつくり続けてくださり誠にありがとうございます。

平戸さん:あ、いえいえこちらこそ。

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―大瀬さんは特にどこがお気に入りなんですか?

大瀬:消しゴムを持っていると高確率でなくすのが悩みだったので、消しゴム搭載型のシャープペンをずっと探していたんです。アイテムとしてはいくつかあったのですが、どれも小さいものしか付いてなかったんですよ。それが物足りないというか、消しゴムを単体で持っているような安心感が欲しくて。そんな時にこちらが出てきて、もうすぐに購入しました(笑)。これだけあれば十分と思えるほどたっぷり付いているのがありがたいですね。

―なるほど。

あとは、スムーズに消しゴムを使えるように考え抜かれているのも素敵です。通常式のものは消しゴム部分にキャップが付いていますが、いちいち開け閉めするのが面倒ですし、まあ、いつの日かなくすじゃないですか。そこで、消しゴムユニット部分をくるくると回すと出てくるキャップレススタイルにしたことによって、抜群の使いやすさになっています。

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大瀬:さらに、ペンの頭の部分をノックする通常式ではなく、クリップ部分をノックする、サイドノック式になっているのも嬉しいポイント。通常のノック式だと消しゴム部分に指の汚れが付きそうで嫌だったのですが、サイドノック式ならそういったストレスもないので快適ですね。
他にも本体そのものを振ると芯が出る「フレノック」機構など、特徴は色々ありますが、私のご贔屓(ひいき)ポイントは以上の3つですね。

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平戸さん:私が話すまでもなくこと細かくご説明いただきありがとうございます(笑)。

大瀬:ただ、最もいいなと思うのはやはり、〈MONO消しゴム〉の優秀さです。私のようによく書き間違いをする者にとって、この抜群の消字性能は病み付きになると言っても過言ではありません。ここにこそやはり何十年にもわたる歴史と技術が詰め込まれていると感じますし、書くことはもちろん、消すことへの並々ならぬこだわりを見て取れます。

平戸さん:ありがとうございます。やはり、書くことと消すことの品質はどこまでも追求したいと常々思っているので、そう言っていただけると嬉しいです。

―ちなみに、消しゴム搭載型のペンというアイデアはいつ生まれたものなのですか?

平戸さん:本当の始まりまで遡ると、消しゴム付きの鉛筆になりますね。鉛筆担当の船生(ふにゅう)と上司の志水(しみず)からご説明しましょう。

船生さん・志水さん:よろしくお願いします!

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トンボ鉛筆 プロダクトプランニング部 左:船生さん 右:同部 志水さん

―気合いのポーズをありがとうございます(笑)。
船生さん:弊社が保管している資料によると、1913年の創立当時から消しゴム付鉛筆を製造販売していました。

志水さん:もはや戦前なので記録もあまり残っておらず、ちょっと曖昧なんですが。消しゴム付鉛筆は創立当初では〈Mason228〉などがあり、当時アメリカではこの消しゴム付鉛筆が大流行していた影響で国産化したと思われます。〈482〉はそれから15年ほど経った昭和初期に商品化しています。
この頃から鉛筆は、機械や建設の設計製図に使われる高級品と、事務用の中級品、それに学習用の普及品が揃うようになりました。終戦後、日本は世界でも例のないテンポで復興を遂げたと言われていますが、当社の鉛筆もお役に立ったんだそうです。

大瀬:復興に鉛筆が役立つ?

志水さん:つまり、鉛筆で建物の設計図が引かれていった訳ですよ。もちろん当時にコンピューターなんてなかったですから、壊れてしまった街並みを元通りにするために、建築士や職人たちが鉛筆を使って図面を引き、それを基に橋や道路を復興し、また建物ができていったんです。

―今となっては当たり前のようにある鉛筆ですが、その偉大さを改めて感じるエピソードですね。

船生さん:終戦後の1950年、〈482〉の約1/2の価格にした普及版の消しゴム付鉛筆〈2558〉が発売されたのですが、鉛筆〈8900〉と共に爆発的ヒットになったと聞いています。

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トンボさんには当時の〈482〉が僅かながら残っています。とても貴重!

大瀬:〈2558〉は私も学生時代に使っていましたよ。やはり人というものは変わらず、幼い頃からものをなくす性分だったので、消しゴムがついている〈2558〉が欲しくて買いに行った記憶があります。

船生さん:何十年もずっと弊社のものを使っていただいているんですね、とてもありがたいです。

大瀬:むしろ感謝すべきはこちらです。誠にありがとうございます。

志水さん:一度ならず二度もお礼を...(笑)。ありがとうございます、これだけ感謝してくださる人がいることを当時の開発陣の方々に伝えたいですね。

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よりよい文具を追求するその姿勢に感服する大瀬バイヤー

―続いてはテープのり〈ピットエアー〉のお礼参りをしましょうか。

大瀬:担当はどなたですか?御礼させてください。

―お礼に飢えてる人なんて初めて見た。

佐藤:私です、よろしくお願いします!とっておきの気合いをお見せし...

大瀬:佐藤さん、いつも〈ピットエアー〉を愛用させていただいております。こんなに素敵なものをおつくりいただき誠にありがとうございます。

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右:トンボ鉛筆 プロダクトプランニング部 佐藤さん

佐藤さん:食い気味で感謝いただいたことなんて生まれて初めてです(笑)。

―大瀬さんはどういったところが好きなんですか?

大瀬:実は私、テープのりの使い方が下手なのか、使っているといつもテープがヘッドから外れて中がぐちゃぐちゃに絡まっちゃうんですよ。でも〈ピットエアー〉はそういったことに全くならないのがいいと思います。

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佐藤さん:〈ピットエアー〉は「エアータッチシステム」という独自機構により、テープを切るための抵抗を軽減し、最後までとことん軽く引けるようにこだわったアイテムなので、余計な力をかけずに引けているのかもしれませんね。ちなみに大瀬さん、もしかして曲線を描くようにナナメに引くことがあったりしますか?

大瀬:ありますよ...え、読心術?

佐藤さん:もちろん使えないですけど(笑)、こちらに限らずテープのりはナナメに引くと故障の原因になってしまうんですよ。かかる力が左右どちらかに偏ってしまうと、先ほど大瀬さんがおっしゃったようにテープが外れてうまく引けないことがあります。。

大瀬:なんと...。ナナメ使い厳禁と肝に命じます。

―他にも〈ピットエアー〉のお気に入りポイントはありますか?

大瀬:静音性が高いのもよいですね。オフィスのデスクで事務作業をしているとき、音を立てると周囲の方々の心を乱してしまわないか心配で...静かに、穏やかに貼れるテープのりはこれしかないと思います。
あと、個人的な話で恐縮ですが、趣味の御朱印集めに最適なんですよ。同行者を待たせてしまうのがはばかられるため、書き置き(半紙に書いてもらう形式)のものを持って帰ってきて御朱印帳に貼っているのですが、〈ピットエアー〉を使えばシワにならずきれいに、あっという間に貼れるのがすばらしいです。

佐藤さん:若干ニッチなご意見ですが、とても参考になります、ありがとうございます。

ー〈ピットエアー〉は構想から完成までどのくらいの期間がかかったのですか?

佐藤さん:そうですね、トータルだと6年くらいでしょうか。

大瀬:6年!?

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思わず声を大にする大瀬バイヤー。

佐藤さん:テープのりと修正テープについて、引き心地の軽さを追求したものをつくるという方針が2013年に打ち出されました。個人的にはテープのりの方が実現しやすいだろうと思っていたものの、全然そんなことなくて(笑)。方針決定から3年後に修正テープができあがり、その技術を参考に〈ピットエアー〉ができました。いやあ、思えば長かったですね...。

大瀬:商品の生産サイクルが短くなってきている昨今において、6年もの歳月をかけてつくったなんて...。いやはや、恐れ入ります。ただでさえピットシリーズとしての長い歴史と技術があるにもかかわらず、そこにあぐらをかかず、さらに手間暇をかけてものづくりをするその姿勢に感服いたしました。
どうかこのまま、その素晴らしいものづくり精神のままに己が道を突き進んで欲しいと、バイヤーとしてもいちファンとしても思います。私も力を込めて応援させていただきますよ、ふふっふっふ...。

―(最後まで変な笑い方...。)

おわりに

ハンズ歴29年の大ベテラン、大瀬が、定番の事務用品を始め、様々な文具の魅力に迫る連載記事。第四回は、大瀬がいつも愛用する〈モノグラフ〉や〈ピットエアー〉をつくる〈トンボ鉛筆〉さんへの感謝が炸裂しました。そして次回は、雑誌「趣味の文具箱」を手がける〈エイ出版社〉さんからちょっと変わったカレンダーが登場するということで、突撃取材。一体どんなトークが繰り広げられるのか、乞うご期待!

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