元クレイアニメ作家で輸入文具店で働いたのちにハンズにやってきたという、異色の文房具バイヤー大島による連載企画の第4回目。今回は〈ぺんてる〉本社を訪れ、人気シリーズから登場した新商品の魅力などを、文房具への愛あふれる独自の視点を交えてお伝えします!
今回もメーカーを訪問!やってきたのは〈ぺんてる〉です
―大島さん、こんにちは。連載4回目の今回は〈ぺんてる〉を取り上げるんですよね!
大島:そうです!折れないシャープペン〈オレンズ(orenz)〉の新商品が登場したので、そのタイミングにあわせていろいろとお話を伺おうと思っています。
ハンズ 文房具バイヤー 大島
ぺんてる本社ビルにあるオブジェの前で。よく見ると柱はクレヨンの形!
―メーカー訪問もすっかり板に付いてきました(ポーズにも余裕が...。)
大島:輸入文具が好きと初回で宣言しておきつつ、今回もまた日本メーカーかと思われるかもしれませんが、ジャパンメイドの品質やこだわりを伝えていくのも私の使命なのかなと。今回はそんな部分も含めてお話を伺いたいと思いますので、水口さんよろしくお願いします!
水口さん:こちらこそ!
ぺんてる株式会社 マーケティング部 水口さん
―よろしくお願いします!今回〈オレンズ〉に新商品が出たんですよね?
水口さん:はい、こちらです。
ぺんてる オレンズ 限定 Simpledays
0.2mm(ネイビー)550円(税込)
0.3mm (ピンク、グリーン) 各550円(税込)
0.5mm (ブルー、ウォームグレー) 各495円(税込)
メタルグリップ 各1,100円(税込)
アイン替芯 シュタイン 各220円(税込)
アイン消しゴム 66円(税込)
―では早速、新商品の紹介に...いく前に、まずは改めて〈オレンズ〉の特徴などを教えてください。
水口さん:2014年に発売された、芯が折れないシャープペンです。最初は「0.2」でスタートしました。
大島:その頃って、芯を守る系とか芯が勝手に出る系の機能性シャープペンが各社から急に出始めましたよね。なんかこう、戦国時代的な感じで。でも〈オレンズ〉がその走りだった印象です。
―「折れない」のはどんな仕組みなんですか?
水口さん:パイプで芯を守る構造になっています。
大島:芯を出したらダメなんですよね。
水口さん:はい。1回だけノックした、パイプで芯が隠れている状態で書くことで芯が守られます。
普通のシャープペンは手前(白い方)の状態で書きますが、〈オレンズ〉は奥(グリーンの方)のように芯が見えない状態で書くのが正解です。
大島:これで書けるから不思議なんです。カチカチしたくなる(笑)
水口さん:書けるんです、そのままパイプで書く感じで。紙を傷つけないように先端をよく磨いてあるため、引っかかることもありません。しかも書きながら中の芯と一緒にパイプも引っ込んでいくので常に芯が守られ、1回のノックで長く筆記できます。
大島:肉眼ではわからないくらい微かに芯が出ているんだろうけど...。その技術と発想に改めて感心します。書き心地もなめらかで、でもちゃんと芯で書いている感がある。
―〈オレンズ〉開発のきっかけは何だったんですか?
水口さん:弊社には当時、「0.2」の芯とその芯を保持できるシャープペンを製造する技術はありましたが、活用されていなくて。一方で、世の中では東大合格ノートみたいなものが人気で。
大島:方眼紙のようなノートにめちゃめちゃ細かく書き込むやつですね。
水口さん:だから、細い芯を扱える技術を活かさない手はないなと。でも当時は「0.3」ですらマイナーだったので、より細い「0.2」を打ち出すなら折れることへの不安を払拭するのが必須だと考えました。
大島:あえてそこに挑むところがすごいです。
水口さん:「0.2」の芯を扱っているのは弊社だけなので、その独自性もありますしね。
〈オレンズ〉の歴史を紐解いてみると...
―では〈オレンズ〉シリーズの変遷を教えてください。
水口さん:まずは2014年にスタンダードタイプを発売しました。
こちらが初代。写真の5色は発売当初のラインナップ。デザインは現在も不変です。
※0.2のピンク軸以外は、現在は販売終了しています。
水口さん:あえてニッチな「0.2」だけを発売したんですが、思った以上に反響があって。追いかけるように「0.3」を出しました。
大島:ポピュラーな「0.5」はすぐには発売しませんでしたよね?
水口さん:「オレンズ=極細でも折れない」が売りなので、「0.3」は出すけど「0.5」はまだ出さない、というポリシーみたいなものがありました(笑)
大島:大切です(笑)
水口さん:その後、カラーの変更などを経て、2017年にようやく「0.5」を発売します。市場の状況などを見て...。そろそろ解禁かなと(笑)
大島:(笑)
―では、スタンダードタイプの次に出たモデルというと?
水口さん:2015年に発売したラバーグリップです。
こちらがラバーグリップ。
※現在は販売終了しています。
水口さん:人気が出ず、惜しくも廃番に...。
大島:急にぽってりしたフォルムになって、「らしくない」感じがしたんでしょうね。持ちやすいし書きやすいけど、何か違うぞと。同じシリーズだと思うと尚更に。
水口さん:違う名前で出せばよかったかもしれないですね(笑)そしてその半年後くらいに発売したのがメタルグリップです。
こちらがメタルグリップ。少しメカニカルなルックスに。
大島:こちらは「らしさ」がありますよね。あくまでも主観ですが。
水口さん:グリップの形状やカラーの変更はありましたが、メタルグリップは今でも販売しています。
大島:もう少し登場が遅ければラバーグリップの人気が出ていたかも(笑)
水口さん:あり得ますね(笑)この後は限定カラーなどを発売しましたが、次に大きな変化のあったモデルというと2017年登場の〈オレンズネロ〉になります。
こちらが〈オレンズネロ〉。重厚な雰囲気で他とは一線を画します。
水口さん:〈オレンズ〉の頂点というか、自動芯出し機能なども加わったフラッグシップモデルで、イタリア語で黒を意味する「ネロ」の名の通り、ブラックのボディでシックに仕上げています。
大島:立ち位置が全く違いますよね。製図用のテイストで、程よい重量感もあって、より男心をくすぐられる感があります。
水口さん:ちなみに英字表記の「orenznero」は回文になってるんですよ!
大島:本当だ!今まで気付きませんでした。
そんな流れを経て、新商品が登場
―そして今回、限定の新商品が発売されたんですね。
水口さん:はい、冒頭にご紹介した〈オレンズ シンプルデイズ〉です。
ぺんてる オレンズ 限定 Simpledays
0.2mm(ネイビー)550円(税込)
0.3mm (ピンク、グリーン) 各550円(税込)
0.5mm (ブルー、ウォームグレー) 各495円(税込)
メタルグリップ 各1,100円(税込)
大島:クリアボディか。最近は中の機構を見せるタイプも多いです。
水口さん:中を見せないのも〈オレンズ〉のポリシーだったんですが...。こちらも解禁しました(笑)、トレンドも意識して。
大島:時代ですね(笑)
水口さん:コンセプトづくりの段階で「整った暮らしに寄り添う道具」みたいなイメージがあって。中身が見える安心感や潔さなどを意識して開発しました。
大島:芯が折れないことでゴミが減るとか、経済的とか、そういった部分も時代にマッチしますしね。
大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part1
水口さん:この世界観を醸成するために、替え芯と消しゴムもよりシンプルなデザインのものを発売しました。在宅ワークなども想定して、整った空間でも主張しすぎずに調和することをイメージしています。
―スタンダードタイプに加えて、メタルグリップタイプも登場しました。
大島:こちらは重厚感と高級感がありますね。でも中央部分は同じくクリアになっていて、テイストは共通。
水口さん:〈オレンズ シンプルデイズ〉は、文字の表記などもできる限りシンプルにしました。学生か社会人か、男性か女性か、ではなく、この世界観が好きな方がターゲットです。
大島:ミニマルを追求した感じですね。でも一歩間違うと、某ブランドにも見えてしまう。ギリギリなところです(笑)
水口さん:そうなんです(笑)シンプルにしすぎないのもポイントでした。
大島:シンプルなものが時代の主流ですからね。個人的には今後は素材感が重視されてくるのかなと思っています。
水口さん:素材か...。たしかに面白いですね。
大島:異素材のコントラストをもっとつけてみたり、真鍮とかレザーで経年変化を楽しんでみたり。
水口さん:文房具のエイジング!
大島:あとはもう、私の大好きな木彫りにするか(笑)〈オレンズ〉の10周年あたりでどうですか?
水口さん:検討します(笑)
大島:話は変わりますが、硬度を上げるためにシャープペンの芯に初めてハイポリマーを入れたのが〈ぺんてる〉さんなんですよね?
水口さん:はい、世界初でした。
大島:だからなのか、私の中で〈ぺんてる〉さんには"元祖シャープペン"というイメージがあります。
水口さん:そう言っていただけるとうれしいです。クレヨンや筆ペンもありますが、替え芯においては国内のリーディングカンパニーなので。
大島:その硬い芯ができたことで、シャープペンが飛躍的に進化したとも言えると思います。ぜひ今後もシャープペン業界を牽引していってください!
水口さん:ありがとうございます。がんばります!
大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part.2
20周年を迎えた〈エナージェル〉が20色に!
―続いて、20周年を迎えた〈エナージェル〉も取り上げたいと思います。
直井さん:ではバトンタッチして、ここからは私が。
ぺんてる株式会社 商品企画部 直井さん
大島:20周年か...。すごいですよね、成人式(笑)
直井さん:(笑)20歳を記念して20色になりました。
ぺんてる ノック式エナージェル20色セット(0.5mm、0.7mm) 各4,400円(税込)
―ではまず〈エナージェル〉の特徴を改めて教えてください。
直井さん:発売当初から変わらない、なめらかで、濃くクリアな文字が書けて、かつ乾きが速いという特性を持ったゲルインキボールペンです。
大島:超が付くほどのド定番ですね。
大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part.3
直井さん:濃くて書きやすい半面、乾きが遅くて手が汚れるというゲルインキの難点を解消しました。手が汚れるのは左利きの方に多いお悩みで、特に外国は左利きの方が多いので、〈エナージェル〉は海外でも人気を集めています。
大島:仰るとおり、左利きのお客様におすすめするペンの代表格ですね。乾きの早さももちろんですが、個人的にはこの濃さが気に入っています。他のものと比べて断トツで鮮やかな印象です。
直井さん:濃く書けると、なんだか上手く書けた気持ちになりますよね。
―そんな〈エナージェル〉が20周年を迎えて、全20色に大幅に拡充されたと。
直井さん:はい。20周年を機に〈ぺんてる〉としては初めて、海外との統一規格にチャレンジして20色を揃えました。
大島:初の世界共通規格か。海外仕様も含めて、〈エナージェル〉シリーズもたくさんありますからね。
直井さん:そもそもどのモデルで20色展開するかという話からでしたが、世界共通規格にするならやはりオリジナルの〈ノック式エナージェル〉だろうと。
大島:国内での扱いはずっと、黒、赤、青の3色だけでした。
直井さん:はい。シリーズ品の〈インフリー〉では他のカラーもありましたが、〈ノック式エナージェル〉の国内仕様はその3色だけで。海外では少しずつ色を増やしてきましたが、国内で他の色が出るのは初めてです!
大島:他の色を求める声も多かったので、ようやくといった感じです。
直井さん:余談ですが、アメリカでは日本でいう赤の感覚でバイオレットを使う人が多いので、基本の3色の次に開発したインキ色はグリーンとバイオレットだったんですよ。
大島:へぇ〜。それは興味深いなぁ。
直井さん:その後、オレンジ、ピンクと増えていき、段々と中間の色もプラスして。最後に今回、ダーク系とブライト系が加わって20色になりました。
大島:逆輸入というか、海外からの派生というのが面白いです。
直井さん:20色セットにはペンスタンドが付いているので、ぜひセットでお求めいただきたいです!
―大島さんは、20色と聞いてどんな印象でしたか?
大島:筆記のためのペンというより、〈ぺんてる〉さんの醍醐味である「色」を楽しむものとして、色鉛筆やクレヨンと同じ並びなのかなと思っていて。色鉛筆ってセット売りですよね?だから割と必然というか。あとはもう「20周年だもん、そりゃ20色出すよね」って感じですね(笑)
直井さん:(笑)
大島:最近は皆さん、自分のパーソナルカラーなどを大事にするようになってきているので、選べる楽しさがあるのは時代の流れに合致しています。多彩になった〈エナージェル〉はさらに人気が出そうな予感です!
直井さん:20周年を迎えたとは言え、もっと皆さんに知ってもらい、使ってもらうことを、まずは変わらず第一に目指していきます。今回の20周年企画で、すでにお使いいただいている方には新しい色を、初めてお使いいただく方には新たな魅力を届けて、より多くの方にご愛用いただけたらなと思っています。
大島:今日は私が思う〈ぺんてる〉さんの2本柱、「色」と「シャープペン」という部分のお話が聞けて、〈ぺんてる〉さんの「ペンへの愛」みたいなものを改めて実感できてよかったです。ありがとうございました!
大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part.4
大島バイヤーの編集後記
大島:色にこだわり、技術にこだわり、そしてグローバルに活躍されている様は日本伝統工芸を見ているようでした。10年20年と一つの商品を育て愛でる姿勢に、ニッポンの文具を感じました。
おまけ
ハイタイド (HIGHTIDE) ボウルペン (ペンコ) 990円(税込)
この日の大島のリュックにぶら下がっていたのは、前回ご紹介した〈ボウルペン〉。いち早く自分で取り入れるのも、文房具への愛あればこそ!
【連載】文房具への異常な愛情 〜Story01.個体差とか無駄って最高ですよね〜
【連載】文房具への異常な愛情 〜Story02.コクヨにて、ノートは体感するものだと悟る〜
【連載】文房具への異常な愛情 〜Story03.ハイタイドはトレンドの波にも乗っている〜
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