【連載 vol.24】定番モノは文具沼への入り口〜「キャンパスノート」ロングセラーの秘密〜

この連載は、文具沼にハマった事務用品バイヤーの大瀬が、あなたを深い深い文具沼へと誘(いざな)う物語。大瀬バイヤーが今回目をつけたのは、老舗文具メーカーである〈コクヨ〉のノートやルーズリーフ。一度は使ったことがあるであろう〈キャンパスノート〉や〈キャンパスルーズリーフ〉のロングセラーの秘訣について深掘ります。また、新商品バインダーノート〈スマートリング〉布表紙についてもご紹介します!

〈コクヨ〉商品から「愛され続ける秘訣」を学ぶ

―大瀬さん、こんにちは!今回はどんな文房具を深掘りするんですか?

大瀬:今回は、こちらのノートです。2204bungunuma24_01.jpg東急ハンズ 事務用品バイヤー大瀬

―〈キャンパスノート〉じゃないですか!学生の頃、このノートによくお世話になったものです。懐かしいな〜。

大瀬:約47年というロングセラー商品であり、ノートといえば〈キャンパスノート〉を思い浮かべる方も多いことでしょう。職業柄いろんなノートを使っていますが、〈キャンパスノート〉は長く愛用しているものの一つです。ロングセラーになるということは、簡単なことではありません。それ相応の理由があるはず。〈コクヨ〉さんのロングセラー商品を通して、「愛され続ける秘訣」というのを本日は学びたいと思っております。

ということで、今回は〈コクヨ〉さんの東京品川オフィスへとやってきました。お手合わせ(取材)をいただくのは、こちらの方々。

宮西さん:はじめまして。〈コクヨ〉で商品開発を担当している宮西です。今は〈キャンパスノート〉以外のノートを担当していますが、5代目〈キャンパスノート〉の開発に携わっていました。本日は、このノートがどのように進化してきたのかを、開発者視点でお話しできればと思っています。

村田さん:ノート本部の本部長として生産と管理の両方に携わっている村田です。今回は、私たち以外にノートを製造している滋賀工場のお二人にもリモートで参加してもらいます。

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コクヨ
左:商品管理部ノート開発部 宮西さん、右:ノート本部 本部長(生産・開発管理)村田さん


福島さん:こんにちは。滋賀工場で製作部長をしている福島です。〈コクヨ〉には1981年に入社し、約40年間モノづくりを行ってきました。現在もノートをはじめ文房具類の生産に携わっています。

岡田さん:滋賀工場・開発グループの岡田です。文房具が好きでこの業界に飛び込みました!大瀬さんのこの連載を拝見していて、今回お会いできて本当に嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

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コクヨ 工業滋賀
左:福島さん、右:岡田さん

大瀬:ありがとうございます。深いお話が聞けそうで、楽しみです。今回は、ロングセラー商品〈キャンパスノート〉のほか、〈キャンパスルーズリーフ〉と東急ハンズが一緒に商品化したバインダーノート〈スマートリング〉布表紙のご紹介をしていただきます。

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左から コクヨ
バインダーノート スマートリング 布表紙 A5 各2,420円(税込)
キャンパスルーズリーフ さらさらB5 中横罫 330円(税込)
キャンパスノート
ドット入り罫線B5 普通横罫 187円(税込)、B5 中横罫 187円(税込)、大人キャンパス 5mm方眼罫 209円(税込)
商品一覧はこちら>>

―〈キャンパスルーズリーフ〉は、高校生や大学生の頃によく使っていました。一体どんなこだわりがあるんだろう。新商品であるバインダーノート〈スマートリング〉布表紙も気になります!

大瀬:うむ。早速聞いてみましょう。

なぜ、〈キャンパスノート〉が選ばれるのか

―まずは〈キャンパスノート〉について。発売がスタートしたのは今から47年前ということですよね。

宮西さん:ええ。今回は歴代の〈キャンパスノート〉をお持ちしました。上段の左から初代(1975年発売)、2代目(1983年発売)、3代目(1991年発売)、下段の左から4代目(2000年発売)、5代目(2011年発売)です。

大瀬:ほう。こんなにリデザインをされていたんですね。2204bungunuma24_05.jpg

―1975年に発売された〈キャンパスノート〉は、どのようなきっかけで誕生したんですか?

村田さん:学生向けのノートは当時グレーなどの地味な色が一般的でした。そこで、どんなノートであれば学生たちに手にとっていただけるかと考え、勉強中もモチベーションが上がるように明るいカラーを取り入れた2色刷りのノートをキャンパスの名前で発売しました。実はこの明るい2色刷りというのは業界初の試みでした。

大瀬:業界初の試みとなると、製造はかなりご苦労をされたのでは?

福島さん:初代〈キャンパスノート〉は、私が入社したときには既に生産されていたので、実体験での苦労をお伝えすることができないのですが、当時の上司からは色をムラなく印刷するのが大変だと聞いていました。私が初代の製造で携わっていたのは「背見出し」と言って、表紙の部分に見出しを貼る作業です。

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大瀬:題目を書き込むためのシールのことですね。

福島さん:ええ。機械を使って流れ作業でのりを貼り付けます。ブックスタンドに立てたときに、きれいに揃わないといけないので、ねじれたり、歪んでしまわないように調整しながら貼り付けたものです。題目を書き込む箇所ということで、とても大事な工程だと教わりました。

大瀬:ほう。ノート全体で考えると題目シールは脇役的存在。しかし、細部まで一切手を抜かない姿勢が素晴らしい。

福島さん:私がガッツリ製造に携わったのは2代目の頃です。その時は、糸綴じから無線綴じにリニューアルするタイミングでした。

大瀬:「無線綴じ」にすることで、どんなメリットがあるのでしょうか。

福島さん:無線綴じは、文字通り糸を使わずに接着剤で固めて製本する方法のこと。こうすることで、どのページを開けてもフラットに開くことができます。また、糸綴じだと一枚ちぎると反対側もバラバラと取れてしまうことがあるのですが、そういった問題も起きにくいんです。ちなみに、無線綴じを採用したのも、業界で〈コクヨ〉が初めてなんです。

―またもや「業界初」!

大瀬さん:お話を聞いていると、〈コクヨ〉さんはいつも先陣を切って挑戦されてきたことがよく分かります。よいものをつくるために挑戦し続けるチャレンジ精神が、お客様にも自然と伝わり愛され続けているのかもしれませんね。

コクヨさん一同:ありがとうございます!

大瀬さん:さて話を戻して、もう一つ気になる点があるのですがよいですか?2204bungunuma24_07.jpg
間髪入れずに質問攻めをする大瀬

大瀬さん:4代目はクロス部分(無線綴じで糊付けした部分)が、少し太くなっています。これはどういった経緯で?2204bungunuma24_08 (1).jpg
左:4代目のクロス幅、右:〈キャンパスノート〉通常のクロス幅

村田さん:さすが大瀬さん。目の付け所が鋭いですね!3代目までのキャンパスノートでノートを使っている間に背クロスが傷んだり、破れたりすることがあり、その対策として4代目では背クロスを強化しました。丈夫な背クロスを印象付けるためクロスの幅が広いデザインになっています。
丈夫なクロスが定着したこともあり、5代目では通常のクロス幅のデザインにしています。

宮西さん:背の強度はとても重要なので、しっかりと固定されているかを確認する耐久テストも行っています。2204bungunuma24_09.jpg紙を引っ張り強度を確認。実際は機械で行います。

―大瀬さん愛用のノートは、かなり使い込まれていますね。使い心地はいかがですか?

大瀬:約17年前に当時90円で購入したのですが、お値段以上の使いやすさです。万年筆やボールペンなど、いろいろな筆記用具で書いてみましたが、裏移りもしにくいのですよ。恐らく紙の繊維の密度が高いからだと思うのですが、いかがですか?

宮西さん:4代目から5代目に変わるタイミングで、紙厚を薄くし、同時に裏写りなどがないような紙質に変更しています。ユーザー様からのご意見や自社、他社の中紙の分析結果を開発に活かしました。メインユーザーが中高生なので、鉛筆やシャープペンシルやボールペン、万年筆など、全ての筆記具に対応できる紙をつくっています。

まだまだ止まらない!〈キャンパスノート〉トーク

大瀬:ずっと気になっていたのが「大人キャンパス」シリーズのノート。ノート表面が黒色ですが、これは恐らく白抜きで全面黒色を刷っていますよね?実際のところどうなのでしょう。白抜きの場合、乾く時間もかなりかかりそうだし、製造が大変だろうなと。2204bungunuma24_10.jpg

―(着眼点がすごい...!)

村田さん:正直、大変ではあります。印刷屋さんからは「勘弁してほしい」と言われながらも協力していただいている状況です。この「大人キャンパス」は、大人をメインターゲットにしたシリーズでして、通常の〈キャンパスノート〉よりも高級感のあるデザインを意識しています。黒色を全面に刷り、さらにニス加工を施しマットな質感になるように仕上げています。黒色は傷が目立ちやすいので、さらに細かい地紋を入れて傷がつきにくくしているんです。2204bungunuma24_11.jpg

大瀬:なんと細かい加工!相当な手間暇をかけていらっしゃる。印刷の仕組みを知らない人は、気がつかないこだわりですね。

―確かに、教えてもらわないと、この小さな地紋に気がつきませんでした。

村田さん:そこまで意識してノートを手に取る方は少ないと思うので、気がつかないのが普通だと思います。しかし、例え気がつかなくとも、よい商品は必ず手にとっていただけると信じ、我々は手間を惜しまずにモノづくりを続けていきます。

―素晴らしい。

2204bungunuma24_12.jpg関心する大瀬

ノートだけじゃない!ルーズリーフやバインダーもすごかった!

―〈コクヨ〉さんといえば、〈キャンパスノート〉のイメージが強いですが、同じくらい〈キャンパスルーズリーフ〉も愛用されている方が多い印象です。

大瀬:〈コクヨ〉さんの〈ルーズリーフ〉の歴史はどれくらいなのでしょうか。

福島さん:詳しい時期は分からないのですが、私が入社する前から既に〈ルーズリーフ〉の製造は行われていました。

―〈ルーズリーフ〉もロングセラー商品なのですね!

宮西さん:〈コクヨ〉の〈ルーズリーフ〉は「さらさら」と「しっかり」の2種類の紙質のご用意がございます。ユーザー様の声を集めたところ、ユーザー様によって書き心地の好みが二極化されることがわかりました。その結果から、滑らかな紙質とザラザラとしていてしっかりと書き込める紙質の2種類を選んで使っていただけるようにしたんです。

大瀬:ほう。書き心地が全然違いますね。個人的には、シャープペンシルだと「さらさら」、ボールペンだと「しっかり」が書きやすいです。

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宮西さん:筆記具や筆圧によって好みが分かれますね。ぜひ、どちらも試していただき好みの紙をみつけてほしいです。

大瀬:2種類から選べるというのはユーザーからするととても嬉しいことですが、製造サイドは大変なこともあるのでは?

岡田さん:そうなんです。紙質が異なるだけで、製造ラインでの紙の流れやすさが変わるため、同じ工程でも作業がしづらくなるんです。例えば、袋詰め作業。「さらさら」ならスルッと袋に入るのですが、「しっかり」は紙質がザラザラしているので抵抗がかかって袋に入りづらいです。材料や仕様に合わせた機械調整が大変です。

―私たちが快適に使っている裏でたくさんのご苦労があるんですね。バインダーノート〈スマートリング〉布表紙のお話も聞かせていただけますか?

大瀬:バインダーノート〈スマートリング〉布表紙は、4月中旬発売(東急ハンズで先行発売中)の新商品ですね。2204bungunuma24_14.jpgコクヨ バインダーノート スマートリング 布表紙 各 2,420円(税込)
商品一覧はこちら>>

宮西さん:東急ハンズさんとのコラボレーション商品です。A5サイズのバインダーノートでして、表紙を折り返して使えるのがポイントで、中身のリング部分が本体から取り外せる仕様になっています。

―それぞれどういったメリットがあるのですか?

宮西さん:本体からリング部分が取りはずせると、捨てる時にきちんと分別ができます。

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宮西さん:表紙が折り返せると立ったままでも文字が書きやすかったり、机のスペースがあまりないような場面でも、折り返すことでスペースを節約することができます。

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大瀬:なるほど。外せるタイプのバインダーは初めて見ました。デニム調のデザインもよいですね。バインダーというと、業務用感のあるデザインが多いですがカジュアルでシンプルなデザインなので普段使いにも向いていますね。

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―確かに。バインダーノート〈スマートリング〉布表紙も〈キャンパスノート〉や〈キャンパスルーズリーフ〉と同じく、ユーザー視点で考えられたアイテムですね。こちらもロングセラーになりそうな予感!〈キャンパスノート〉や〈キャンパスルーズリーフ〉は、身近なアイテムの一つですが、皆さんに取ってどんな存在ですか?

宮西さん:私はつくる立場として、たくさんの方に使っていただけていることが本当に嬉しいです。例えば、子供の授業参観に行ったとき、ノートに目をやるとほとんどの生徒が〈キャンパスノート〉を使ってくれているんです。テレビを観ていても、ふっと映るノートが〈キャンパスノート〉だったり、そんな風に皆さんの日常に当たり前のようにあること、手に取っていただけることが嬉しく、ありがたい。ノートをつくるうえで、とても励みになっています。

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村田さん:今回、改めて特徴や魅力をお伝えさせていただいたことで、新たな発見がありました。よりよい商品をお届けできるように、製造・開発メンバーと協力しながら、これから一層ノートづくりに励みたいと思います。

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福島さん:〈キャンパスノート〉は私にとって誇りです。私は製造なので、直接お客様からお声をいただくことがありません。だから、街で〈キャンパスノート〉を使っている人を見かけたら、「なぜこのノートを使っているのか?」とお聞きするようにしているんです。その回答のほとんどが「なんとなく」というもので、〈キャンパスノート〉が特別なものではなく、当たり前にあるものであることが分かります。なんとなく選んでいただいて、使い続けていただけることが本当に嬉しいんです。よりよい製品づくりを続けていると、時に難しい問題にもぶつかります。だけど、こうしてたくさんの人に使っていただいていることを知ると、もっとご満足いただけるものをつくりたいと思うんです。

岡田さん:今回の取材で、皆さんにはお伝えできていなかった商品の魅力を知っていただけたと思っています。私たちは、真面目に情熱を持って商品を開発・製造しています。その想いが少しでも伝わって、ノートを開いて勉強する時間や、お仕事に励む時間が心地よいものになればよいなと心から思います。
また、滋賀工場では、環境に配慮した商品も開発しています。よりよい商品をお届けできるように、これからも励みますので、今後ともよろしくお願いします!

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―皆さん、ありがとうございます。ノートやルーズリーフに対する熱い想いがしっかり伝わりました!大瀬さんはいかがですか?

大瀬:長年ある商品ですが、その移り変わりがお話を聞いていて面白かったです。今まで当たり前のように使っていましたが、その当たり前の中にはユーザーが心地よく使うためのこだわりで溢れていました。妥協せず、ユーザー目線を徹底する姿勢が、長く愛され続ける所以なのだろうと思います。とても勉強になりました。有意義な時間をありがとうございます。

おわりに

学生時代によく使っていた〈キャンパスノート〉をはじめ、〈キャンパスルーズリーフ〉のこだわりを知ると、大人になった今、もう一度使いたくなりました。原点に戻り、改めて〈キャンパス〉ライフを楽しんでみてはいかがでしょう?

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