【連載vol.20】定番モノは文具沼への入り口 〜あらゆる絶景を365日楽しめるカレンダー編〜

この連載は、文具沼にハマった事務用品バイヤーの大瀬が、あなたを深い深い文具沼へと誘(いざな)う物語。大瀬バイヤーが今回目をつけたのは、さまざまな書籍や雑貨を手がける京都発の出版社〈いろは出版〉さんの人気カレンダー、〈365日 絶景 日めくりカレンダー〉。ということで、〈いろは出版〉さんの東京オフィスにお邪魔してきました。

カレンダーでもあり本でもある!?実は珍しい個性派日めくりカレンダー

―大瀬さんこんにちは、今日ご紹介する商品は一体どういうものなのですか?

大瀬:これです。


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事務用品バイヤーの大瀬。カレンダー担当バイヤーでもある。

―それが噂の〈365日 絶景 日めくりカレンダー〉ですね。

大瀬:ハガキのようなちょっと厚めのがリングでまとめられているので、お気に入りの1枚は取り外して観賞用にすることもできます。

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―いきなりそんなツウな楽しみ方を紹介されても...。そもそもその〈365日 絶景 日めくりカレンダー〉の特徴は何なのですか?

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いろは出版 365日 絶景 日めくりカレンダー 京都、世界一周、日本一周 3,080円(税込)、世界遺産 3,300円(税込)

大瀬:その名の通り、世界や日本各地の色とりどりの絶景を毎日楽しめる日めくりカレンダーです。1日1絶景で計365の素晴らしいロケーションを堪能することができる、なんとも豪華な一品。仮にその日が終わってもそのカードを捨てるのがもったいないと思うほどのクオリティで、過ぎ去りし日々の絶景をパラパラと見返すのも乙なものですよ。ねえ、担当の奥村さん?

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出版事業部 奥村さん


奥村さん:ご説明ありがとうございます。大瀬バイヤーが過去の日々の絶景を見返すのも楽しみ方の一つとおっしゃっていましたが、さすが我々の思いをよく理解してくださっているなあと思いました。というのも、実は弊社は出版社ということで、このシリーズの源流は書籍なんです。2015年に「365日 世界一周絶景の旅」という本を出したのですが、おかげさまで多くの方々からご好評をいただきまして。それを機に、このアイデアをもっと多くの方々に楽しんで欲しいと思い、本の中身はそのままにカレンダーに展開させたのです。

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こちらが書籍版。

―カレンダーの内容と書籍の内容は同じなのですか?

奥村さん:ほぼほぼ同じ内容です。そもそも書籍の頃から1日につき1つの絶景というコンセプトだったので、ページごとに日付が入っていました。だから本当にそのままカレンダーにできたんです。当初からこのように展開する戦略を練っていたわけではなかったんですけどね(笑)。

つまりこのカレンダーはカレンダーの体裁をとった書籍とも言えるんですよ。なので、その日が終わったらその日の紙をビリッと破いて捨てるような従来の日めくりカレンダーとは違い、終わった後も観賞を楽しめるように1枚1枚こだわってつくっているのがこの商品の大きな特徴です。

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めくる際にリングで切れてしまわないように強度の強い紙を用いているのもこだわりポイントの一つ。

大瀬:絶景をテーマにしたカレンダーそのものは珍しいものではありませんが、だからと言ってこの商品をみくびってはなりません。奥村さんがおっしゃった通り、日めくりカレンダーの概念を覆すレベルのクオリティを誇るのがこの商品の唯一無二の個性。毎日触れるものだからこそ、見ているだけで気分が上がってくるようなプロダクトに仕上げているのはさすがとしか言いようがありませんね。天晴れですよ。

1日1日に旅人のリアルな目線が詰まっている

―この日めくりカレンダーはいつから登場したのですか?

奥村さん:書籍の絶景シリーズが出て1年後の2016年に第一弾として「世界一周」の日めくりカレンダーを出しました。それ以来、書籍を出した後にカレンダーも出すというサイクルでやらせていただいています。書籍とカレンダーを同時に出すことも検討していた時期もあったのですが、制作プロセスの都合上、まずは書籍、次にカレンダーと段階的に取り掛かる流れに落ち着きました。

―「世界一周」以外にはどのような絶景シリーズがあるのですか?

奥村さん:「日本一 」に「北海道」、そして今回新たに「京都」と「世界遺産」を出すことになりました。
※北海道はハンズでの取り扱いはございません。

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こちらが今回初登場した「京都」と「世界遺産」。

―どれにしようかと選ぶのも楽しそうですね!日めくりカレンダーなので365種類の写真を用意するのがとても大変だったんじゃないかと思ったのですが、どのようにご用意されたのですか?

奥村さん:写真の用意の仕方は実は統一されていないんです。例えば「世界一周」は「旅」をテーマにしたWEBメディアを運営している「TABIPPO」さんと一緒につくったので、TABIPPOさんがお持ちの写真やTABIPPOさんのツテで様々な旅人の方々からご提供いただいたりしました。他にはSNSなどで写真を募集するなど、さまざまな手段を使って何とか集めました。

大瀬:写真には良し悪しがあるだろうから、実際は365枚よりたくさん用意しなければならないですものね。

奥村さん:そうですね。良し悪しという観点で言うと、応募いただいたものはどれも素敵なものばかりでした。ただ、問題は画質。写真は本やカレンダー使用に耐えうる画質でなくてはなりませんが、いただいたものの中には画質が足りないものも少なからずありまして。なので泣く泣く使用を見送った写真もたくさんありました。

―見た目の良し悪しだけでなく画質までチェックしなければいけないのか...ものすごく大変そう...。

大瀬:色々なところから写真を集めるとなると、写真ごとに雰囲気もかなり違うと思うので、結果的にカレンダー全体としての雰囲気がバラバラになってしまう...なんてことはございませんでしたか?

奥村さん:最低限の補正はしているのですが、ある特定の雰囲気に寄せていくということはしませんでした。さまざまな人々から集まった、多種多様な写真。そのバラエティ感がよいなと思ったので、なるべくいただいた写真のよさを活かしていくように編集したんです。

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大瀬:なるほど、そうすることで旅人たちのリアルな目線をそのまま伝えられますものね。

奥村さん:また、このような写真の集め方がゆえに、撮った方のほとんどがアマチュアカメラマンです。例えば空撮のようなプロらしい構図のものはないんですよ。そういった構図の写真は作品としては素晴らしいのですが、実際に旅する人の目線ではないじゃないですか。このカレンダーに載っているのは、旅人のリアルな目線。なので、まるで実際にその場所を訪れているような気分に浸ることができるのも大きな魅力だと思っています。

―旅人の目線...それを毎日味わえるのは素敵だなあ。

奥村さん:あと、例えば京都という1テーマだけで365枚もの写真をセレクトしているカレンダーも書籍もそれほど多くないので、一般的な観光ガイドに載っているメジャーどころ以外のスポットも収録されているのも魅力です。

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―地元の人しか知らないご飯屋さんみたいな感じですね。

奥村さん:ええ、なので「もう京都には行き尽くした」というコアな京都ファンの方も、きっと新しい発見があるはずですよ。

大瀬:なるほど、お話を聞けば聞くほど濃厚で、とても素晴らしい...。

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オフィスに卓球台があったので、お話の休憩がてらピンポンを楽しむ二人。

これでもかと詰め込まれたこだわりの一品は、贈り物にも最適

―「世界遺産」編も同じような写真の集め方だったのですか?

奥村さん:いえ、世界遺産はまた考え方を大きく変えていて、写真は全て世界遺産写真の第一人者である、写真家の富井義夫さんによる撮り下ろしなんです。

―富井さん...!〈写真工房〉代表の富井さんですね!

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富井さんには2020年に、「とにかく美しいカレンダー編」でお話をお伺いしました。この記事での大瀬バイヤーのおすすめは仏像のカレンダー。

記事はこちら>>

奥村さん:京都と同じような集め方も検討したのですが、「世界遺産」というテーマではなかなか集まらないだろうとなりまして。そこで、42年のカメラマンのキャリアの中で、これまでに241回の海外取材、132の国と地域を旅してきた(2020年7月時点)、海外の写真のスペシャリストである富井さんに頼ることにしたんです。

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富井さんの色鮮やかな写真に合わせて、紙の種類も京都編とは変えています。

大瀬:ふむ、文句なしのでき栄えですね。

奥村さん:ええ、なので世界遺産はもうただただ富井さんの世界に浸っていただけたらと思います。

―しかし世界遺産も京都もこだわりようがすごいですね。変な話ですが、税込3,080円(京都)~税込3,300円(世界遺産)というこの金額で採算は合っているのですか...?

奥村さん:手前味噌ですが、正直この価格はかなり頑張っています。1枚1枚のクオリティを保ちつつ、これほどの枚数を掲載するとなると、普通に考えればもう数千円高くなると思います。ただ、とはいえ写真集ではなくカレンダーなので、お求めやすい価格設定にも妥協はできませんでした。なので色々工夫を凝らしており、代表的なものがこの台紙です。

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―365日分のカードを陰ながら支えるこの台紙にどのような工夫が...?

奥村さん:実はこの台紙、毎年改良を重ねておりまして、例えば以前のものはこのような形状だったんです。

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左右のものが歴代の台紙。

奥村さん:以前は空洞部分を手前と奥の計2箇所つくり、ゆえに柱部分が4つあったのですが、最新のものは空洞を増やし、計6つの柱部分をつくりました。こうした背景として、まず台紙の厚さを薄くし、そこにかかるコストを落としたんです。そうすると従来の形状だと支えられなくなったので、より強度のある仕組みを考え直す必要性があり...という具合です。

―土台にかけていたコストを他の部分に回して、トータルのクオリティを上げたということですね。

奥村さん:もちろん厚紙を使えば簡単に強度が上がるのですが、以前はそれでもうよしとしてしまっていたんです。なので、今回はそこもしっかり見直しました。

―そういった、目にはつきにくい部分までとことんこだわることで、このレベルのものをこの価格で手に入れられるようになっているんですね...さすがです...。

大瀬:この価格ならば、自分用にはもちろん、友人などへのちょっとしたプレゼントとしても重宝しそうですね。あまり高いともらった側としても恐縮してしまうので。

奥村さん:365枚の絶景があるということは、365つのストーリーがあるとも言えるわけで。「あ、昔ここに行ったことある!」とか、「いつかここに行きたいんだよね」みたいな会話のきっかけが、普通のカレンダーよりも豊富に入っているので、プレゼントには本当にぴったりだと思います!

大瀬:私も、単なる風景カレンダーでしょう?と侮っている方々に配り歩きたいと思います。こういった、細かなこだわりがこれでもかと詰め込まれている商品はもっともっと多くの方々に広がって欲しい。未熟者ですが一人のバイヤーとして、啓蒙活動に邁進しますので、これからもよろしくお願いいたします。

おわりに

ハンズ歴29年の大ベテラン、大瀬が、定番の事務用品を始め、様々な文具の魅力に迫る連載記事。第二十回は、毎日旅人気分になれる〈365日 絶景 日めくりカレンダー〉をご紹介しました!大瀬バイヤーは次回、どんなアイテムをピックアップするのか!?乞うご期待!

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