【連載vol.8】定番モノは文具沼への入り口 〜令和のハサミとコンパスに触れてきた編〜

この連載は、文具沼にハマった事務用品バイヤーの大瀬が、あなたを深い深い文具沼へと誘(いざな)う物語。今回のテーマは、"ハサミとコンパス"。
学童向けのものを中心に、数多くの個性豊かな文具を手がけるメーカー〈クツワ〉さんに突撃し、令和の時代の進化系ハサミとコンパスについてお話を聞いてきました!小学生だったあの頃から長らくハサミとコンパスに触れていないという大人の方こそ必見です!

「変形型ガジェットハサミ」に夢中な大瀬バイヤー

―今回は創業から100年以上の歴史を持ち、学童向け文具など幅広いアイテムをつくっている〈クツワ〉さんにやってきました!いつものごとく大瀬さんたっての希望ですが、どういった理由で〈クツワ〉さんに...?

大瀬:2020年にもなりましたし、ここのあたりで初心に戻るのも悪くないだろうと思いましてね。
初心の捉え方もさまざまかと思いますが、バラエティ豊かなアイテムを取り扱うハンズのスタッフとしては、初心とは童心、つまり子ども心を忘れてはなりません。ということで、学童向けの文具を追求する〈クツワ〉さんにやってきた訳です。

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事務用品バイヤーの大瀬。居合道や杖道に精通する武道家でもある。

―なるほど、だからそうして懐かしの椅子に座っているのですね。

大瀬:左様。この椅子や机に触れるだけで何十年も前の記憶がついこの間のことのように思い出されます。まさに質実剛健を体現するようなこの素朴な風貌と、そこから思い出される懐旧の情。...あな、いとをかし...。

―ちょっと後半は何を言ってるのかよくわかりませんが、ところでさっきから机の上で何をしているんですか?

大瀬:今回の記事で取り上げたい文具の中でも、個人的に最も気になっている〈G-SLIM(ジースリム)〉を試用させていただいています。もちろん、ちゃんと許諾は得ていますのでご安心ください。

―〈G-SLIM〉...って、なんですか?

大瀬:はさみです。変形型ガジェットはさみ。

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クツワ G-SLIM 各900円+税

―変形型ガジェット...はさみ...?

大瀬:はい、これ、とってもよいんですよ...。...うん、ほんとによい。うん。

―(切るのに夢中で全然説明してくれない...)。

??:大瀬さんこんにちは。弊社の新商品、〈G-SLIM〉を早速お気に召されているようでとても嬉しいです。

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クツワ株式会社 商品開発部 川原さん

大瀬:川原さん、いつもお世話になっております。またこうして素晴らしいものを世に送り出していただき誠にありがとうございます。ハンズを代表して感謝申し上げます。

川原さん:ハンズさんを背負って感謝していただけるなんて贅沢ですね(笑)。〈G-SLIM〉は弊社としてもかなり気合いの入ったハサミなので、この機会にぜひご紹介させてください!
先ほど大瀬さんが変形型ガジェットはさみとおっしゃっていましたが、まさにその通りで、通常のハサミとの大きな違いは、2way仕様になっている点なんです。

―2way仕様?1つは普通に紙などを切る使い方ですよね、もう1つは何なのですか?

川原さん:もう1つは、「ペーパーカッターモード」という使い方です!このモードは、中央のスイッチで刃の角度を固定することで、紙をチョキチョキと切るのではなく、ペーパーカッターのようにシューッと切り進めることができるんですよ。ちょっと大瀬さん、やってみてください。

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刃が固定される角度は約15度。スムーズに切れる角度をとことん追求した末の数字です。

大瀬:...む!これは...爽快...!

川原さん:まっすぐに切る時も、普通のハサミだとチョキチョキと刃を出し入れするたびにちょっとズレちゃって、仕上がりがガタついてしまいがちですし、地味に時間もかかる。
でも、ペーパーカッターモードなら刃を入れるのは1回だけで、あとはそのまま手をのばすだけで1本の線を引いたかのような美しい仕上がりになるんです。
この使い心地は、ペーパーカッター自体を普段あまり使わない方にこそぜひ味わっていただきたいですね!きっと病みつきになりますよ。

大瀬:一閃のごとく瞬時に断ち切るということか...恐れ入る。

―剣技の奥義を見たような感想ですね。

大瀬:剣もハサミも同じ刃を持つもの同士、その本質は同じなのかもしれませんよ。

―......違うでしょ。

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どの大きさのハサミも使いやすく、満足のいくクオリティを求める

―2way仕様なのはわかりましたが、それをもってして「ガジェットはさみ」ということなのですか?

川原さん:いえ、〈G-SLIM〉にはまだまだ秘密があるんです。

大瀬:そう、私が個人的に最もグッときたポイントがあって、それは持ち手部分のハンドルループがワンタッチで飛び出し、使わない時は収納できる点なのですよ。

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―あ、ほんとだ!なんか見てるだけでも楽しい!

川原さん:これらの操作も中央のスイッチで行うのですが、ギミックの部分にこだわっていて、スイッチを「カチャッ」と移動させると「ジャキッ」とハンドルループが出てくるその様はまさにガジェット感たっぷりで、まるでロボットが変形するようなイメージだと自負しています。

〈G-SLIM〉という商品名はロボ的なイメージからつけている側面もあり、感覚的な楽しさ、面白さにも注力しているところがこのハサミのユニークポイントなんです!

大瀬:私はノック式ボールペンが好きなのですが、あのノックする動作そのものを心地よく感じているのが理由の1つなんです。
よく、無駄に「カチャカチャ」とノックしているのですが、〈G-SLIM〉のギミックにも同じ趣を感じます。
ふと気がつくとハンドルループを出したりしまったりしている自分がいて、まんまとハマっています。いやあ〈クツワ〉さん、よい仕事をされる。

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川原さん:ありがとうございます!あとはもちろん、ハサミとしての純粋な機能にも優れていて、弊社が新たに開発した「ノンレジスタンス刃」というものを採用しています。
どういうことかというと、包丁と同じ、細かい研摩仕上げをすることで、凹凸のない刃に仕上がっているんですね。それにより、2枚の刃同士の抵抗がグッと減少。
弊社の従来品と比較すると、紙を切る時の刃の開閉にかかる力がおよそ半分以下になり、切り心地がとても軽やかになりました。なのでずっと使っていても疲れにくいんです。

大瀬:あとは刃が左寄せになっているのもポイントですね。左寄せになっていることで、ハンドルが紙に当たらず、ストレスなく切り続けることができる(※〈G-SLIM〉は右手用です)。こういった細かなところまで行き届いているのが本当に素晴らしいと思います。

大瀬:さらに、細かなところという点では先ほど話題に上がった持ち手部分のハンドルループについて。
そのギミックだけでなく、ハンドルループを収納できるという点もかなりよいんですよ。というのも、ハサミのこのループ部分ってとても邪魔じゃないですか。
例えば私はよく手ぬぐいを使うのですが、手ぬぐいってまあ行く先々でよくほつれるんですよ。そんな時にハサミを使いたいので、ハサミはできれば持ち歩いていたいものの、ループ部分が邪魔だから筆箱にも入らなくて。そんな、ハサミへのちょっとした不満を〈G-SLIM〉は見事に解消しているのですね。これぞ匠の仕事ですよ。

―手ぬぐいはもちろんのこと、洋服ってふとした時にほつれちゃいがちですもんね。

川原さん:大瀬さんのようなお客様の声はよくいただきます。なのでなるべくコンパクトという視点は忘れず、お客様のさまざまなシーンで活躍できるようなハサミづくりを心がけています。

〈G-SLIM〉のスゴさがわかるご紹介動画はこちら>>


川原さん:ちなみに、コンパクトといえば、このハサミもおすすめですよ!

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クツワ カットン 各800円+税

大瀬:文句なしに小さい。

川原さん:でしょう!ただ、単純に小さいハサミは他にもたくさんありますが、こちら〈カットン〉の特長は、使いやすさにこだわっている点です。
ハサミはテコの原理でものを切る道具なので、小さければ小さいほど、満足のいく切れ味になりにくい側面がありますが、〈カットン〉は日本製のハイクオリティな刃を使い、通常サイズのものに引けを取らないほどの切れ味を追求しています。
このサイズでちゃんとした切れ味を求めるので、職人さんには多大なるご苦労をかけてしまい...それでも根をあげずにこうして実現してくださり、本当に感謝してもしきれません。

大瀬:学童向けのハサミをずっとおつくりになってきて、職人の方々とも確かな関係性を構築できているからこそ、こういった高品質なものができる訳ですね。歴史に裏打ちされた技術力。
うん、素晴らしいです。あと、こうして触っていると感じるのが、刃の出し入れの簡単さ。片手でスッとできるから、またつい手癖のように無駄に出し入れしてしまう...(笑)。

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川原さん:さすが大瀬さん、よくお気づきで!片手で簡単に出し入れできるというのもこちらの魅力でして、携帯ハサミってそれこそ洋服がほつれた時に使うような、出先でのちょっとしたお困り時に活躍するものだと思うんです。だからなるべく早く解消できるように、とにかくスムーズに、手軽に使えることに注力しています。

大瀬:ただただ天晴れ!手ぬぐいのお供にぜひこちらを使わせていただこうかと思います。

コンパスの進化に唖然とする大瀬バイヤー

川原さん:ところで大瀬さん、冒頭で初心に戻るのも悪くないとおっしゃっていましたが、それならばこちらを試してみてはいかがですか?

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クツワ ドクターコンパス 各450円+税

―コンパス...!なんとも懐かしい...!

大瀬:かつての記憶が呼び起こされますよ。ただひたすらに、純粋無垢に円を描いていたあの頃に。

川原さん:想像以上の反応で嬉しいです、ありがとうございます(笑)。ただ大瀬さん、こちらは確かにコンパスなのですが、大瀬さんが使ってきた頃のものと比べるとさまざまなところがバージョンアップしているんです。

大瀬:ばーじょんあっぷ...。

川原さん:まずはこちらのヘッド部分。コンパスを回す時の人間の指の形や動き方から設計した、「人間工学ヘッド」が特長です。
3本の指で安定して持てる三角形の持ち手と、回し途中から後半に適した、クルッと回しやすい円形状の全体フォルム。軸足となる方には金属を、もう片方にはプラスチックを使うことにより軸足を重くし、安定感を出しました。

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大瀬:ふむ...!なるほど...!

川原さん:あとは、コンパスは針を使うものなので安全面は重要なポイントです。従来品ですと閉じた時も少しだけ針が剥き出しになっていましたが、〈ドクターコンパス〉は完全に針が隠れるようになっています。同じく芯先も隠れるので、筆箱の中が鉛筆で汚れてしまうこともありません。

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川原さん:さらに、付属のケースには鉛筆を通す穴が開いているので、長めの鉛筆を使いたい時も問題なく収納可能。もちろん、長い鉛筆でも安定して描けますよ。

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大瀬:私が使っていたコンパスはそもそも鉛筆を差し込むのではなく、かつてあったロケットえんぴつのような専用の芯を使うものだったので、そこも驚きです。今は好きな鉛筆を使えるのですね...!
針も芯も隠れる分、従来品よりコンパクトにまとまりますし、まるで非の打ち所がない...。いやはや、童心に戻ると言ったものの、その進化の凄まじさの方に思わず目が向いてしまいました...(汗)。

―では、先ほどの机と椅子でもう一回描いてみてはどうですか?

大瀬:ほう...名案ですね。どれどれ...。

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―どうですか?童心に戻れましたか?

大瀬:...おそらく。しかし、こんな使いやすい文具に囲まれて、今の子どもたちがとても羨ましいですね。文具のよしあしって、特にお子様の学習には意外と影響すると思うんですよ。

使って心地よかったり楽しかったりするだけで、勉学へのやる気も出るかもしれないし、その逆も然り。なので、もしこの記事を、お子様がいるご両親の方々にご覧いただいていたら、ぜひお子様には〈クツワ〉さんがつくるような、よい文具を揃えてあげて欲しいと思いました。私も今の時代に生まれていたら、もっと勉学に励んでいたに違いない...ふっふっふ。

―(童心に戻るというか、ただ思い出に浸ってるだけなんじゃ...)

おわりに

ハンズ歴29年の大ベテラン、大瀬が、定番の事務用品をはじめ、さまざまな文具の魅力に迫る連載記事。2020年最初となる第八回は、〈クツワ〉さんが手がけるこだわりのハサミとコンパスをご紹介しました!
そして次回は〈三菱鉛筆〉さんに突撃。いったいどんな文具のお話が聞けるのか、乞うご期待!

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