【連載vol.12】定番モノは文具沼への入り口 〜2021年カレンダーはラーメンで決まり?編〜

この連載は、文具沼にハマった事務用品バイヤーの大瀬が、あなたを深い深い文具沼へと誘(いざな)う物語。今回は来年に向けて"カレンダー"を大特集。気がつけばもう今年も後半戦ということで、大瀬バイヤーが注目する2021年のカレンダーを3つピックアップしました!中でも大瀬バイヤーが気になるのは「ラーメン」をテーマにした変わり種カレンダーの〈RAMEN CALENDAR 2021〉。それを手がけた〈アクティブコーポレーション〉さんに、なぜそんな変化球なカレンダーをつくったのかをリモートインタビューしてみました。

このカレンダーの案が出た時は社内が沸き立った

―大瀬さんこんにちは、今日は2021年のおすすめカレンダーを紹介するとのことですが...って、え?何をしてるんですか...?

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事務用品とカレンダーバイヤーの大瀬。「ラーメンはストレートに太る」が持論で、普段は食べたくてもあまり食べないようにしているらしい。

大瀬:これから始まるインタビューに向けて、トークテーマであるこのカレンダー〈RAMEN CALENDAR 2021〉を見ながら集中力を研いでいたのです。

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アクティブコーポレーション RAMEN CALENDAR 2021 1,540円(税込)

※〈RAMEN CALENDAR 2021〉掲載内容の一部変更につきまして
1月に掲載しております「ひよこプリン」は、現在ラーメンの取り扱いは無く、カレーとプリンを販売しています。
その他店舗につきましても、商品内容や営業日時が変更になっている場合もございますので、お出かけになる際は事前にご確認ください。

―なるほど。ただラーメンを食べたくてずっと眺めていたのだと思いました。

大瀬:そう思われるのもわかります。まるで本物のラーメンがここにあるようなまん丸の形とこのサイズ感。例えばこうやって持てば今にもおいしそうな醤油の香りが漂ってきそうです。

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―ほんとだ...!なんだかトリックアートみたい!

大瀬:ふふっふっふっふ。こういう楽しみ方もありますよね、〈アクティブコーポレーション〉の企画担当、原田さん。

原田さん:そうですね!こうやって実際にラーメンを食べている自分を想像し、ラーメンへのパッションを高めていくのもアリだと思います。

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アクティブコーポレーション 企画部 原田さん。今回は〈RAMEN CALENDAR 2021〉のメインご担当者の代わりにお話をしてくださいました。

―え、いつの間に繋がっている...!?

原田さん:まあ細かいことはよいじゃないですか。

大瀬:大人は大耳。

―は、はあ...。では気を取り直して、よろしくお願いします。まずは大瀬さん、今回は計3つの2021年カレンダーを紹介する中で、なぜこの〈RAMEN CALENDAR 2021〉が特にお気に入りなんですか?

大瀬:他の2つもよいのですが、この〈RAMEN CALENDAR 2021〉はダントツで、「ストレートに変化球」だからです。

―ストレートに変化球...?

大瀬:昨今ではこういったちょっと変わり種なカレンダーも市場によく出てくるようになりましたが、ここまで真っ直ぐな情熱を持って「変化球なカレンダーをつくろう」という気概を感じるものも珍しいですよ。ほどほどの情熱でしたら、例えばカレンダーの形は一般的な長方形のものにして、挿し絵的にラーメンの写真を載せるくらいのものですが、こちらはご覧の通り、よりリアル感や臨場感を持たせるために、このようなどんぶり型にしている。もうこの形を見た瞬間に感じますよね、「このカレンダーのつくり手は普通じゃないな(よい意味で)」って。

原田さん:ありがとうございます、さすが大瀬バイヤー、目の付け所が鋭いですね。おっしゃる通り、カレンダー業界の中では変わり種系の方がトレンドになりつつあるという、ちょっと面白い状況になっていて、弊社でも2021年のカレンダー案が合わせて30個あったのですが、その内の12、3くらいが変わり種系でした。

―その中から勝ち残ったのがこの〈RAMEN CALENDAR 2021〉というわけですね。ちなみに、その他に候補としてあったのはどういうものだったのですか?

原田さん:全国の有名な駅弁をテーマにしたものや、ダムや公園遊具、橋げたなどがありましたね。どれもコアなファン層に向けたマニアックなテーマで、どれも魅力的だったのですが、カレンダーとして成り立つかとか、さすがにマニアック過ぎないかとか、色んな議論があった末にラーメンが日の目を見ることになりました。
ちなみに、どの案を採用するかを決める社内会議では例年にないくらいの活気でした。他の参加者は自分たちの案を持ってきている訳ですが、皆このラーメンのインパクトに魅せられちゃって、まるで自分の案のように盛り上がっちゃって(笑)。たまたま皆お腹がすいていたのかもしれませんが。

―その会議に参加してみたい(笑)。

原田さん:なお、ラーメンが勝利した一番の決め手は大瀬バイヤーがおっしゃったこの形ですね。例えば駅弁ですと様々な形がありますから、決してこうにはならないんです。

―なるほど。しかし1〜12月まで綺麗に同じサイズですね。ラーメンのどんぶりってどれも同じサイズなんですか?

原田さん:厳密には若干違うものもあるのですが、どれも大体20〜21cmなんです。これは企画当初からわかっていたことではなく、実際に企画を進めていく中で初めて知った事実でした。これがもし、お店によって結構バラバラだったらこの形にはならなかったかもしれず、そうすると商品化もされなかった可能性もあるので、幸運が重なったカレンダーだと思います。

大瀬:天下を取る者は運にも恵まれているもの。

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壁にかけて眺めてみる大瀬バイヤー。

アイデアだけで満足せず、細部までつくり込むこだわりが人を動かす

―社内の盛り上がりとともにラーメンのカレンダーをつくろうとなったとのことですが、実際につくっていく中で大変だったことはありましたか?

原田さん:まず最初にぶつかった壁は、どのお店のラーメンを載せるかということ。社内が盛り上がるくらいですから、もちろん皆ラーメンは好きなんですよ。けど、お客様も納得するようなお店選びを12カ月分もできる者はいませんでした。

―ラーメンは奥深いですもんね...。

原田さん:それでメインの担当者とどうしようと悩んでいたら、たまたま会社で流していたラジオにちょうど、今回監修してくださった森本聡子さんが出ていらっしゃったんですよ。スピーカーから突然「ラーメンを年間600杯食べる」みたいなエピソードが飛び込んできて、すぐにピンときました。「この人だ!」って。ラーメンに対する愛情を感じるし、ラーメンの魅力を男女関わらずより多くの人々に伝えたいというパッションも感じたので、12カ月分のラーメン選びは森本さんにお願いできないかと思ったんです。

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森本聡子(もりもとさとこ)さん
1987年、愛知県生まれ。「女性が一人でもラーメンを食べることの出来るカルチャーを広めたい」そんな思いから食べ歩きを開始して16年。47都道府県を食べ歩き、年間600杯以上を食べるラーメン大好き女子。2018年には株式会社Ramen Switchを設立し、世界初のラーメンジュエリーブランド「ZURU+.」をリリース。著書『東京ラーメンコレクション』(昭文社)

―そんな偶然があるんですね!

原田さん:この企画のメイン担当が女性なのですが、彼女の正直な気持ちとして、巷のラーメン屋には一人だと入りづらいというのがあったんですね。とても食いしん坊でたくさんラーメンを食べたいのに、ちょっと食べにくいという悩みがあって、それをなんとかしたいと思っていた時に森本さんのことを知り、とても親しみを感じたらしいんです。それで監修の相談をしてみたら、森本さんもちょうどカレンダーをつくりたいと思っていたようで、すぐさま意気投合しました。

大瀬:物語が始まる瞬間は、熱い想いを持つ者同士が出会った時が多いもの。森本さんとその担当者さんや原田さんとが出会うことで、様々な歯車が一気に回り出したということですね。

原田さん:ええ、森本さんにご協力いただけるようになってからはプロジェクトも勢いよく進んでいきました。12カ月分のラーメン店のリストづくりから撮影まで全て森本さんにやっていただいて、私たちはそのリスト先のお店に掲載の許可をいただくためにひたすら連絡していったんです。ちなみに、もしお断りされてしまった時のことも考えて、実際は12店舗以上の候補をいただきました。

―ラーメン屋選びはどういった基準でされたのですか?

原田さん:全国津々浦々でラーメンを食べ歩いてきた森本さんがおすすめするお店です!中でも、女性1人でも気軽に食べに行けるようなところを意識して選んでいます。

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ラーメンひとつ取ってもここまで雰囲気は変わるものなんだと思うほどに、バリエーションに富んだラーメン屋が選ばれています。

―今のラーメンってこんなに色んなタイプがあるんですね!へえ〜!

原田さん:森本さんにいただいたこの写真を見た時に、やはり被写体への思い入れによって写真の仕上がりも変わってくるんだなあと思いました。脂の乗り方ひとつとってもいちばんおいしい状態で撮っているんだろうなと感じますし、その状態をちゃんとわかってるんだと感心しましたね。

大瀬:神は細部に宿る。そういうことですね?

原田さん:まさしく!また、それぞれのラーメンに対する森本さんのおすすめコメントも入っているので、ぜひチェックしてみてください!まるで森本さんが話しているような親しみのある感じで、読んでいるだけでラーメンに対する愛情が伝わってきますよ!

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大瀬:個人的には巻末に付いているこのシールが素晴らしいと思っています。きっと何か想いがあっての制作だったかと窺い知れますが、それはなんだったのでしょうか?

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原田さん:かわいくて、あったら楽しそうだからつくっちゃいましたね。

大瀬:シンプルの極み...(笑)。でも、つくり手の「楽しい」という純粋な思いが結局は人を動かす大きなポイントだったりもするので、それゆえに私もこのシールをとても気に入っているのだと思います。このシールに限らず、ラーメンという切り口の面白さだけで満足するのではなく、細かな部分へのクオリティ一つひとつを、楽しみながら丁寧に磨いていったのだなと思わせる、カレンダーとしての佇まいがとても好きですね。見れば見るほどラーメン屋に足を運びたくなるので、いちおう体重増加を気にする者としてはやや辛い部分もあるのですが(笑)、食欲を生むほどの力を持った素晴らしいカレンダーだと思います。

原田さん:ありがとうございます。そんなにおっしゃっていただいて、きっと森本さんもメインの担当者も喜んでくれるはずです!

他にもいろいろ、個性派カレンダー

―ここまで大瀬バイヤー一押しの〈RAMEN CALENDAR 2021〉についてお話いただきましたが、このままだとこの記事全てをラーメンが占めちゃいそうなので、あと2つのカレンダーについてもご紹介できればと思います。

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左:御木幽石 壁掛けカレンダー「笑顔満開 花満開」 748円(税込)
右:柴犬です。 壁掛けカレンダー 1,100円(税込)

原田さん:この2つも弊社がつくったのですが、どちらも非常に人気のシリーズです。まずは〈御木幽石 壁掛けカレンダー〉からご説明しましょう。こちらは商品名にもある御木幽石(みき ゆうせき)さんという墨彩画家・書家・和体書デザイナーの方による書とイラストとともに1年間を過ごすカレンダーです。御木さんのシリーズは2004年から始まっているので、カレンダーとしてはかなりのロングセラー。歴史の長さは人気の表れでもあり、毎年新作を心待ちにしている方がたくさんいらっしゃいます。

―書とイラストの両方を描いていらっしゃるんですね!

原田さん:そうなんです、すごいですよね。個人的な印象としては書の内容に共感してお買い上げいただくお客様が多いのかなと思っています。どの言葉も共感するほどの強さを持っているのに、決して押し付けがましくなく、変に説教臭くもなくやさしいので、イライラしたり元気がない時にこれを見て癒されたり励まされるというお話はよく聞きますね。贈り物としての人気もあるんですよ。

大瀬:こちらを贈るとはなんとも粋ですな。もらった方もさぞ嬉しいでしょう。筆跡からもおおらかな人柄を感じられますね。ふむ、勉強になりますよ。

原田さん:ありがとうございます(何の勉強だろう?)。ちなみに大瀬バイヤーはどの言葉が好きですか?

大瀬:...こちらでしょうか。「優しさは伝染する」。

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原田さん:おお!よい!

大瀬:何がよいって、こう、アレですよ。つまりその、あの...。

―全然よいと思ったポイントを言語化できてないじゃないですか!

大瀬:むうう...。

原田さん:大瀬バイヤーがそうなるの、わかりますよ。御木さんの言葉に響く方が多いのって、その言葉一つに色んな意味合いを感じ取れるからだと思うんですよね。優しさは伝染するって、他人に対する思いやりは言葉にせずとも態度だけでちゃんと伝わるよっていうことでもあったり、一方で、態度から意図せずに気持ちが伝わっちゃうこともあるから気をつけようということかもしれないとか。

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巻末には御木さんのセンスが溢れ出るあみだコンテンツも収録。

大瀬:!!まさしく!ここまで私の心情を読み解いてくださるなんて、もしや原田さん、エスパーでしょうか...?

原田さん:いや、違いますね。

―...では、最後のご紹介となるのは、最高にキュートなカレンダー〈柴犬です。 壁掛けカレンダー〉ですね。このカレンダーの特長は...

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原田さん:ええ、ただ1つ、「めちゃくちゃかわいい」に尽きます。柴犬のかわいさをより直感的に伝えるためにこの形にしていますし、様々なかわいさを表現するために色んな顔やポージングを12カ月に散りばめています。

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振り向き柴犬。

大瀬:私は犬も猫もどちらも好きですが、犬の魅力は表情豊かなところですよね。このカレンダーにもその魅力が存分に出ていて、1年間全く飽きそうにないですよ。また、子犬というのもよい...。赤子はやはり正義ですから。
ところで、個人的にはこの〈柴犬です。 壁掛けカレンダー〉にも実は、〈RAMEN CALENDAR 2021〉と同じような、普通じゃないにおい(よい意味で)を感じています。柴犬という視点自体は他のカレンダーでも見ますし、やはり問答無用でかわいいので正直、クオリティにそこまでこだわらなくても一定数はお買い上げいただけるんですよ。ただ、このカレンダーは柴犬のかわいさにおんぶにだっこではなく、より極めようとする姿勢を感じられるのです。ラーメンの時と同じように柴犬のシルエットを再現した形にするのなんかはその象徴ですよね。一見軟派なカレンダーと思いきや実は硬派かと思わせるのが好きなポイントです。

原田さん:実は硬派...ありがとうございます!一生懸命つくったことがちゃんと伝わっていて嬉しいです...!

大瀬:御木幽石さんのカレンダーはその長き歴史に凄みがありますよね。作品を描くための題材をどこから見つけてくるのか、私のような者にはまるで見当がつかないので、御木さんのつくり手としてのスタミナには感服します。きっと様々なところから創作意欲が湧いてくるような感受性豊かな方だろうと思うので、多くの人がこのカレンダーに惹かれるのも頷けます。
今回ご紹介いただいたどのカレンダーもすごく個性的で、個性的だからこそ揺るぎない想いが込められているのがよいですね。どこか普通じゃないものを売り出そうとするなら、それなりの覚悟と責任を会社からも求められるわけで。そういった様々な背景があるからこそ、1年間ともに歩みたくなるような素晴らしいカレンダーができるのだと思いました。原田さん、本日はありがとうございました。

原田さん:こちらこそありがとうございました!最後に〈柴犬です。 壁掛けカレンダー〉の、私のおすすめのページをぜひご覧ください!

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原田さん一押しの、柴犬の後頭部。

おわりに

ハンズ歴29年の大ベテラン、大瀬が、定番の事務用品を始め、様々な文具の魅力に迫る連載記事。第十二回は、どれも個性溢れる2021年のおすすめカレンダーをご紹介しました!大瀬バイヤーは次回、どんなアイテムをピックアップするのか!?乞うご期待!

〈RAMEN CALENDAR 2021〉掲載内容の一部変更につきまして
1月に掲載しております「ひよこプリン」は、現在ラーメンの取り扱いは無く、カレーとプリンを販売しています。その他店舗につきましても、商品内容や営業日時が変更になっている場合もございますので、お出かけになる際は事前にご確認ください。

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