【連載vol.17】定番モノは文具沼への入り口〜大瀬バイヤーがグッときた最近の文具編〜

この連載は、文具沼にハマった事務用品バイヤーの大瀬が、あなたを深い深い文具沼へと誘(いざな)う物語。今回は、文具業界に続々と誕生する興味深いアイテムの中から、特に大瀬バイヤーの心をガシッと捉えたものだけを厳選してご紹介!普通の顔をしてちょっと普通じゃない文具をセレクトする、大瀬バイヤーへの独特の視点をお楽しみください。

こだわり溢れるオールブラックなボールペン

―大瀬さんこんにちは。最近はずっと大瀬さんが気になるアイテムを手がけるメーカーさんなどにお話をお伺いしに行っていましたが、今回は久々に大瀬さんからお話を聞く感じなんですね。トークテーマは一体何なのですか?

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事務用品バイヤーの大瀬。先日、ハンズ勤続30年を記念して表彰された。

大瀬:文具好きの多くが毎年楽しみにしている、業界の人気企画「文房具屋さん大賞」。その2021年版が先日発表されましたね。毎年毎年、関心するほどたくさんの画期的な文具が生まれていますが、大勢に人気が出そうな、いわば「メジャー系」のものもあれば、もう少し通なニーズに応える「ニッチ系」もあります。ビジネスとして考えるとやはり「メジャー系」の方が企業としては積極的に売り出したいわけですが、じゃあ「ニッチ系」が悪いということでは決してなく、むしろ、少ないかもしれないニーズにまでちゃんと応えようとする強い情熱をひしひしと感じられて、私個人的にはとても好きなんです。ということで、今回は私の独断と偏見による、匠の技や視点が光るおすすめ文具をご紹介させていただきたく思います。

―なるほど。いつも割と大瀬さんの独断と偏見で選ばれているような気もしますが、趣旨はわかりました。では早速ご紹介いただいてもよいですか?

大瀬:まずはこちら、〈ボールサインiD〉です。

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サクラクレパス ボールサインiD 各220円(税込)

―一見、シンプルでおしゃれなボールペンのようですが...。こちらの何がそんなに大瀬さんの心を掴んだのですか?

大瀬:こちらは全部で6色あるのですが、大きく言うとその全てが「黒」なんです。なぜそこまで黒にこだわっているのかはわかりませんが、でも何かものすごい熱意がこのペンから溢れていてよいんですよね。

―なぜ黒にこだわっているのかはわからないんですね。

大瀬:ええ、詳しくはわからないんです。でも、こちらを手がけた〈サクラクレパス〉さんが「黒」をものすごく大切にしているのはわかります。〈サクラクレパス〉さんと言えば最近だと「SAKURA craft_lab」というブランドを発足し、原点に立ち返り「書いていてワクワクする文筆記具をつくる」というコンセプトのもと、文具好きの大人のためのこだわりのアイテムをつくっていることで注目を集めています。冒頭でちょっとお話しした文房具屋さん大賞の2018年版では〈SAKURA craft_lab 001〉というボールペンが大賞を受賞したのですが、その時もカラーは5種類の黒だったんですね。なので、おそらくこちらの〈ボールサインiD〉もまた、大人向けのペンとしてつくられたのだと思われます。〈SAKURA craft_lab 001〉はボールペンとしてはなかなか高級だったので、より身近に〈サクラクレパス〉のこだわりを楽しんでほしいということでこちらの〈ボールサインiD〉が生まれたのではないでしょうか。

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―なるほど、そうかもしれませんね。全てが黒とのことですが、どのように色分けされているのですか?

大瀬:写真ではなかなかわかりづらいと思うので、それぞれの色の名前を読み上げましょう。「ミステリアスブラック」「カシスブラック」「フォレストブラック」「ナイトブラック」「モカブラック」「ピュアブラック」です。

―ふむ、聞いてもわからん。

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頭の部分の色がペンの色となっています。
左から:ミステリアスブラック、カシスブラック、フォレストブラック、ナイトブラック、モカブラック、ピュアブラック

大瀬:ふふっふっふ。あまりわからないくらいのレベルで個性を発揮しているのがとてもグッとくるんですよ。

―大瀬さんらしいですね。軸の色が濃い黒とグレーに近い黒になっていますが、この違いはなんなのですか?

大瀬:これはペン先の細さを示しています。全カラーとも0.4mmと0.5mmの2種類展開になっています。ボディの白い方が0.4mm、黒い方が0.5mmです。大人向けだからだと思うのですが、細めのラインナップになっていますね。なので手帳にスケジュールをびっしり書く時などに重宝すると思います。書き心地もなめらかですし、ものすごく軽いので、ちょっとしたメモをサラサラっと書くのにもぴったり。「書く」ことがとても身近に感じられるペンだと思います。

―黒がベースだと誰でも使いやすいですもんね。

大瀬:左様。1人1本持っているような、国民的なペンになるポテンシャルを秘めています。

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サクッと絵も描けちゃいます。

いつでも持ち歩きたい、ちょうどいいサイズの電子メモパッド

大瀬:次にご紹介するのは電子メモパッドの〈ブギーボード〉です。

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キングジム ブギーボード A6サイズ 各3,520円(税込)

―〈ブギーボード〉?紙に文字を書くようななめらかな書き心地に定評のある、ハンズでも人気のアイテムですよね?なぜこのタイミングで取り上げるのですか?

大瀬:新しくA6サイズが登場したからなんです。この、手のひらより少し大きいくらいの、大きすぎず、小さすぎずの絶妙なサイズ感がとてもよいなと思いまして。前回、〈PLUS(プラス)〉さんにお伺いした時にご紹介した〈Kaite2〉と用途は同じなのですが、〈Kaite2〉と〈ブギーボード〉が大きく違うのは、部分的に消せるかどうかということ。〈Kaite2〉はまさに消しゴムで消すような感覚で1文字ずつ消せるのですが、〈ブギーボード〉はボタンを押すと全画面が一瞬で消える仕組みになっています。なので、より細かなメモをしたい場合は〈Kaite2〉を、もっとライトに、ちょっとしたメモ書きをガンガンしたいという方は〈ブギーボード〉がおすすめなのですが、A6サイズはこの使用用途にぴったりなんですよ。

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軽くて手帳と同じくらいのサイズだから持ち運びに便利。

―確かにその使い分けで考えるとA6はちょうどよさそうですね。

大瀬:毎日のタスク管理や、電話の取り次ぎの時など、さまざまなちょっとしたシーンで活躍すると思います。背面にはマグネットが付いているので、自宅で使う時は冷蔵庫に貼って家族間のコミュニケーションツールとして使うこともできます。スーパーに行く時の買い物リストに使ったりとか。

―字がはっきりと書けるからコミュニケーションツールには使いやすそうですね。

大瀬:左様。また、「ブギーボードスキャン」という専用のスマートフォンアプリを使えばメモを綺麗にスキャンし、保存や共有ができるので便利。スキャンした時は背景が黒ではなく白になるので、字がよりはっきりと写ります。

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―カラー展開も豊富ですね。全体的に大人向けと言うか、落ち着いた印象を受けます。

大瀬:おそらくちょっとしたメモ書きを主な用途として考えられているので、大人が使っても違和感がないようなデザインは意識されていると思います。それに、毎日気軽に使うものだからあまり派手派手しいとちょっと疲れてしまうじゃないですか。きっとそういうことも考えられてこのトーンになっているように思います。色一つとっても丁寧に設計されているあたりが、〈ブギーボード〉シリーズが人気たる所以(ゆえん)ではないでしょうか。

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大瀬バイヤーのお気に入りのカラーは緑。筆跡が緑色だから、全体的に統一感が生まれて美しいのが理由とのこと。

思いつきそうでつかない、素晴らしいアイデアが光るポーチ

大瀬:最後にご紹介するのは、〈コクヨ〉さんから生まれたビジネスバッグ・アクセサリーの新ブランド〈THIRD FIELD(サードフィールド)〉から、リモートワークやノマドワークの時代にうってつけな、〈スタンドツールポーチ〉です。

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コクヨ THIRD FIELD スタンドツールポーチ 各4,400円(税込)

―こちらはパソコンやスマホの充電器などを収納できるマルチポーチですか?

大瀬:ええ。電子機器を持ち歩く機会が増えてきた現代にはなくてはならないアイテムなのです。

―マルチポーチの種類自体はたくさんあると思うのですが、こちらをセレクトした理由は何なのですか?

大瀬:サイドにあるベルトを留めると自立するんですよ。なので、机の上に置く時もあまりスペースをとらないのが魅力です。

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―私もこの手のポーチを使っていますが、中身を出したらすぐにカバンにしまってしまいます。ただ、たとえばスマホの充電コードは充電が終えたらもちろんしまうのですが、その際にまたいちいちカバンの中からポーチを取り出すのが地味に面倒だなと思ってて。なので、机の上に置いておくことを前提としたこのポーチは意外と新しいなと感じました。

大瀬:そうですね。なので、コード類だけでなくたとえば付箋と小さめのペンを入れておけばちょっとしたメモ書きにも便利ですし、入れるものに合わせて収納スペースをアレンジすることもできます。

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―こういった細かい部分の便利さが大きいんですよね。

大瀬:あとは、自立させた時にスマホを置けるようになっているんです。

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―ああ〜!これは便利ですね!動画とかも見れちゃう!

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表彰状も立てかけられます。

大瀬:ただのポーチではなく、スマホスタンドとしても使えるという、思いつきそうでなかなか思いつかない、とても素晴らしいアイデア。こちらを今回セレクトした最大の理由がこれですね。天晴れですよ。

―ううむ、確かにこれはすごい...!そのように使うことを前提としているからか、デザインの主張も程よいですね。目立ちすぎず、清潔感のあるデザインと言いますか。

大瀬:ええ、お見事ですよ。機能面でのアイデアが優れているものは、そこに時間や費用のウェイトをかけすぎてしまい、デザインの部分がややおろそかになってしまうこともまれにあります。でも、デザインはとても大事ですよ。結局、直感的に好きか嫌いかというところが文具では大きいので。〈コクヨ〉さんはさすが、この重要性を熟知していますね。どこにも隙が見当たらない、優等生な逸品だと思います。

―ご紹介ありがとうございます。しかしこうしてお話を聞いていると、文具業界も日進月歩で突き進んでいますね。

大瀬:左様。それはやはり、文具に対する情熱を持つ人間がたくさんいるからこそ。人と人の熱意が出会い、時にはぶつかりながら、見たことのないものへと昇華されていくのですね。この連載のテーマは「定番モノ」ということで、定番モノが定番になるまでに積み重ねられたさまざまな人々の熱意が私は好きなのですが、今回登場した新作アイテムの数々も熱意という点では同じ。どれも歴史の観点で見れば新米ですが、瞬間的に込められた熱量がすさまじいからこそ、私のような人間の心が動かされるのです。これからも、溢れんばかりの何かで満ち溢れている文具をたくさん見つけ、ご紹介していきたいと思います。今年もよろしくお願いいたします。

―こちらこそよろしくお願いします(なんで3月の記事なのに元旦の挨拶みたいな...)

おわりに

ハンズ歴30年の大ベテラン、大瀬が、定番の事務用品を始め、さまざまな文具の魅力に迫る連載記事。第十七回は、大瀬バイヤーの心が動いた新作アイテムをご紹介しました!大瀬バイヤーは次回、どんなアイテムをピックアップするのか!?乞うご期待!

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