【連載】文房具への異常な愛情 〜Story06.マークスで考える、文房具とSDGsの関係〜

元クレイアニメ作家で輸入文具店で働いたのちにハンズにやってきたという、異色の文房具バイヤー大島による連載企画。第6回目の今回は〈マークス〉を訪問し、SDGsを主題にトークを展開。〈マークス〉の商品紹介とあわせ、大島ならではの文房具への愛あふれる視点を交えてお伝えします。

SDGsをテーマにするなら、マークスさんにお話を聞きたい!

―大島さん、こんにちは。連載6回目の今回はSDGsをテーマにするそうですね。

大島:はい、今回は少々マジメに(いつもマジメですが)。そしてSDGsをテーマにするならここだろう、ということで、1982年創業の文房具メーカー〈マークス〉さんにお話を伺いに来ました。

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2201_danshibungu_02.jpgハンズ 文房具バイヤー 大島

大島:今日はよろしくお願いします!

藏野さん・山口さん・朝山さん:よろしくお願いします!

2201_danshibungu_03.jpg左から、株式会社マークス 営業部 藏野さん、商品戦略部 山口さん・朝山さん

大島:最近、文房具メーカーもこぞってSDGsを言い始めた感がありますが、〈マークス〉さんは他と歩調を合わせるのではなく、以前からそこを意識した商品づくりをしていて、とても好感を持っています。

藏野さん:そう言っていただけるのはすごくうれしいです!

―では早速ですが、〈マークス〉さんのSDGsの考え方や捉え方について教えてください。

朝山さん:弊社は「SDGsを意識しています」と声高に言うのではなく、それはもう"当たり前"のことだと捉えています。2201_danshibungu_04.jpg

大島:そこを狙うのもある意味でビジネスチャンスだとは思うんですが、それは目指していないと。

朝山さん:目指すのはそこではないですね。

大島:「このノートかわいいな」と思って使っていたら実はリサイクル素材だったとか、そういう展開が理想ですからね。そして使った人がそれをきっかけにして深掘りしてくれたら、最高のストーリーです。

山口さん:仰るとおりで、「環境に配慮した商品だから買ってください」というアプローチは順番として間違っていると思っています。あくまでも、アウトプットとしての商品が魅力的というのが先にあるべきで。

藏野さん:あと弊社はフランスとドイツにもオフィスを構えていて、あちらは環境問題などへの意識が一歩も二歩も先を行っているので、そこにも刺激を受けています。グローバルな基準が身近にある体制なのは大きいですね。2201_danshibungu_05.jpg

大島:日本って島国だから、先進国にも関わらずそういった部分が遅れていると思うんです。SDGsの各目標も、日本人の感覚だと「割と簡単?」と思ってしまうところがあるし。でも、じゃあやらなくてよいかと言ったらそういうわけでもないんですよね。

朝山さん:先進国には先進国の役目や責任がありますからね。欧米に追随して、日本も他国を引っ張っていく立場にならなければといけないと思います。

リサイクルPVCを使った手帳とケースが登場

―では具体的な商品について教えてください。

朝山さん:ネパールの女性の収入確保を目的として現地に製造を依頼している「モココ」というフェルト小物シリーズは以前から扱っていますが、直近だと、今回ご紹介する手帳などでそういったアクションを起こしています。

2201_danshibungu_06.jpgマークス ストレージドットイット ダイアリー B6変型
(上段)マンスリー 各1,650円(税込)
(下段)左から:ウィークリーレフト 2,090円(税込)、マンスリー 1,650円(税込)、マンスリー 1,540円(税込)

大島:〈マークス〉さんの代名詞とも言える人気の手帳ですね。ジッパー付きのケースが付いていて使い勝手もよいし、表紙のイラストもバラエティー豊富なので見ているだけでも楽しい商品です。2201_danshibungu_07.jpg

―こちらのSGDsなポイントはどこですか?

山口さん:製造過程で生じた廃棄分や端材を回収して再生したリサイクルPVCをカバーの内側の面に使用しています。2022年度版からこの仕様に変更しました。2201_danshibungu_08.jpg
朝山さん:まずは再生素材をつくることが大変でしたよね。加工前のシートを用意したので、よく見てみてください。傷や黒点が入っているんです。

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大島:ホントだ。なるほど、紙と同じですね、リサイクル紙は少しザラついていたりしますから。

朝山さん:何度もつくり直して、やっとここまでクリアに近い状態になったんですが、開発当初はもっと粗が目立ちました。

藏野さん:これを味と捉えるか、傷が付いていると捉えるか、人によって分かれると思いますが、大島さんはこういうの好きですよね?(笑)

大島:よくご存じで(笑)。こういう個体差とか、たまらないです。初期の粗い状態のも見てみたかったなぁ。ゆくゆくは全面をリサイクル素材にするんですか?2201_danshibungu_10.jpg

山口さん:したいですね。まだまだ課題があって今回は難しかったので、まずは内側だけですが、全面へ向けての第一歩です。

大島:あえてロングセラー商品でチャレンジしたのは、どうせやるなら代名詞的なアイテムから、ということですよね?

朝山さん:はい。ロングセラー商品だけに、大きく変えるのは怖い部分もありましたが、ここでチャレンジしないと先に進めないだろうということで。

山口さん:同じリサイクルPVC素材を使って、〈ストレージドットイット〉と同様の作家のイラストが揃うケース類も発売しました。

2201_danshibungu_11.jpgマークス リサイクルPVC
右上から時計回りに:
ポーチ 各1,430円(税込)
ペンケース 各1,210円(税込)
ステーショナリーケース A5 各1,760円(税込)
ステーショナリーケース A4 各1,980円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いのない場合がございます。

山口さん:手帳の時よりも素材を進化させて使える色のバリエーションを増やし、半透明部分もカラー部分もすべてリサイクルPVCを使っています。

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大島:
もう、ただただ、かわいい。こういうアイテムこそ、リサイクル素材とかを意識せずに手に取ってもらえそうですね。発色もキレイですが、色をつけるのは難しくはないんですか?

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朝山さん:リサイクルPVCはどうしても黄色っぽい感じになってしまうので、それを解消するのは苦労しましたね。

大島:でも1つくらい、その無垢な状態のPVCを使った"ザ・リサイクル"みたいなのがあっても面白いかも。プロトタイプ的な感じで、そっちはしっかり環境問題を意識している人が使うものとして。

藏野さん:意外とそれが人気だったりするかもですよね。ちょっと考えてみようかな(笑)

大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part1

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スタビロのアイテムに見る、ヨーロッパの「当たり前」

藏野さん:続いては〈スタビロ〉を。165年以上の歴史を持つドイツの文房具ブランドで、約1年前から弊社で取り扱うことになりました。

2201_danshibungu_14.jpgスタビロ
右上から時計回りに:
スイングクール パステル 6色セット 990円(税込)
ペン68 各132円(税込)
ボス 各220円(税込)
シャープペンシル イージーエルゴ(右手用・左手用)各1,650円(税込)
※一部店舗ではお取り扱いのない場合がございます。

藏野さん:環境先進国ドイツらしく、当たり前のように環境配慮を意識した商品づくりをしているんですが、その理由を本国の担当者に聞いたんです。その回答がすごく素敵で、「未来をつくるのは子どもですよね?子どもに素敵な未来やキレイな地球を残したいですよね?だから環境に配慮した商品をつくっているんです」と。

大島:なるほど。社会の動きなどとは関係なく、子どもの未来のために純粋にそうあるべきだと。

藏野さん:はい。正直に言うと当初は単純に見た目のかわいいインポート文房具だと思っていたんですが、そういう考えがベースにあるのが素晴らしいなと思い、知れば知るほど好きになっていきました。

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大島:〈スタビロ〉は私も好きなメーカーです。ヨーロッパの学童文具の代表格ですね。環境配慮などを取り入れつつデザイン性にもすぐれていて、すごく魅力的です。

朝山さん:見た目のデザインやかわいさから入って、環境配慮などの情報は結果的に後からついてくる。まさに先ほど話していた通りですね。

―〈スタビロ〉の全商品が環境配慮素材だったりするんですか?

藏野さん:リサイクルプラスチックを使ったり、二酸化炭素の排出量を減らすために鉛筆の芯を短くしたりといった素材面や製造工程での環境配慮もありますが、それだけでなく、機能や性能によって実現する環境配慮もあるんです。

大島:どういうことですか?

藏野さん:例えば、1971年に発売された世界初の蛍光ペンで〈スタビロ〉の代表商品でもある〈ボス〉は、1本で300m書けるんです。一般的な蛍光ペンは100mくらいなので、3本分が1本で済んで使用するプラスチック量を減らせる。長く使えるからゴミも減る。といった具合に、使うことで結果的に環境配慮になるんです。2201_danshibungu_16.jpg

大島:なるほど。直接的ではなくても、根底にはその精神が盛り込まれていると。でもそれをひけらかすわけではなく、こうやって知った時に「へぇ」となる。

山口さん:ヨーロッパの子ども達は小さい頃からこういうものに触れているから、別に教え込まれているわけでもなく、そういう感覚が染み付いているし、受け継がれるんですよね。

大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part2

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文房具とSDGsの未来。ハンズ限定品もあわせてご紹介

―SDGsのために文房具だからできることは何だと思いますか?

大島:文房具というのは、極端に言えばインフラだと思うんです。何をするにも根底にあって、紙とペンは不可欠だし。そもそも教育に関するSDGsのアイコンがノートとペンですからね。文房具そのものがSDGsなんです。だから「文房具はこうあるべき」みたいなものはないんじゃないかな。もちろん環境配慮とかは大前提ですが。

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朝山さん:文房具そのものがSDGsか。なるほど。

大島:商品としてもいきなり爆発的にヒットするものでもないし、2030年を目標にロングランで少しずつ。でもいろんなメディアがSDGsを取り上げてようやく認知度も上がってきたので、ここから加速していくでしょうね。

―〈マークス〉さんでは今後どんな展開を考えられていますか?

朝山さん:"当たり前"にしていくという視点は変わらず、自分たちができる範囲でしっかり取り組んでいきたいと思っています。

山口さん:いまは工場から出る端材をリサイクルして使っていますが、本当の意味でのリサイクルはお客様が使ったものを回収して再利用することだと思うので、まだテスト段階ですが手帳の回収も始めています。

藏野さん:集めたものを再資源化して循環させる、新しい仕組みをつくっていきたいですね。

大島:でも、急にナチュラルな人にはなってほしくないなぁ。リサイクルやリユースといった要素をさりげなく取り入れつつ、その上で〈マークス〉さんには、はっちゃけてほしいです。いつもふざけてるのに、実はめっちゃ勉強できる、みたいな(笑)

藏野さん:(笑)ギャップですね。

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大島:そうそう。そういうところにグッと来ますよね。でもそこは言わずともブレないですよね?

朝山さん:そうですね、そこはブランドとして貫きます!

大島:そうだ、せっかくなのでこちらも紹介させてください!

2201_danshibungu_19.jpgハンズ限定カラー
マークス EDiT 方眼ノート テラコッタ
A5 2,420円(税込)、B6 1,980円(税込)
※2月11日(金・祝)より発売!

大島:ハンズの「文具祭り2022」の開催にあわせて限定カラーをつくってもらったんですよね。

「文具祭り2022」の詳細はこちら>>

藏野さん:はい。ハンズさん限定カラーの「テラコッタ」です。

大島:この色はどこから来たんですか?どこかで見たような...

山口さん:弊社に〈ヴェレセラ〉という事務文具ブランドがあるんですが、その中の人気カラーを採用しました。

大島:なるほど、言われてみれば。この模様の感じもキレイですよね。

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朝山さん:通常の〈EDiT方眼ノート〉はベーシックな5色ですが、それに比べるとかなり華やかな印象ですね。

大島:この〈EDiT方眼ノート〉も、ゆくゆくはSDGs絡みにスライドできると面白いですね。〈EDiT〉シリーズもかなり浸透して定着してきているので、ちょっと楽しみです。

朝山さん:そうですね、そこも視野に入れていきたいと思います。

大島:今日はやっぱり〈マークス〉さんにお話を聞きに来て正解でした。これからの展開にも期待しています!

大島バイヤーの編集後記
大島:SDGsが義務とか施策っていうより「習慣」「当たり前」の世の中にならなくちゃ。マークスさんの目指すのはそんな文具の未来が見えた気がした。愛でて、還って、また愛でる、なんだかみんなにやさしくなれそう。

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