元クレイアニメ作家で輸入文具店で働いたのちにハンズにやってきたという、異色の文房具バイヤー大島による連載企画。今回はペーパーステーショナリーブランド〈G.C.PRESS〉を訪問。商品開発の背景や手紙の楽しさについて深堀りし、大島ならではの文房具への愛あふれる視点を交えてお伝えします。
- 【目次】
- レター関連アイテムの代表ブランド〈G.C.PRESS〉を訪ねて
- 商品はどういう流れで開発されて、発売まで至っているの?
- 人気シリーズや定番アイテムをピックアップしてご紹介
- クリスマス&新年のアイテムも充実。そして、未来のお話も
- 【番外編】シールを使って「お手紙デコ」をやってみた!
- 大島バイヤーの編集後記
レター関連アイテムの代表ブランド〈G.C.PRESS〉を訪ねて
―大島さん、こんにちは。そしてお久しぶりです!今日はメガネを掛けていませんが...イメチェンですか?
大島:元々、コンタクトレンズとの併用派なんです。ってそんな私のプチ情報はさておき、今回は〈G.C.PRESS〉さんにやって来ました。
ハンズ 文房具バイヤー 大島
対談の前にG.C.PRESS社屋にあるショールームを見学中。
大島:今日はこちらのお二方にお話を伺います。よろしくお願いします!
阿部さん・真柄さん:よろしくお願いします!
G.C.PRESS株式会社
左:生産管理 阿部さん、右:デザイナー 真柄さん
―ではまず〈G.C.PRESS〉さんについて改めて教えてください。
阿部さん:1979年創業のペーパーステーショナリーブランドです。"書く文化"を伝えることをテーマに、便箋をはじめとしたメッセージツールを扱っています。
大島:1979年か...歴史が長い。基本的に日本国内で製造しているんですよね?
阿部さん:はい。ほんの一部のパーツを除いて、ほぼすべての印刷や加工を国内で行っています。そして紙に関しては、日本の和紙や海外の上質なファインペーパーを商品に合わせてセレクトしています。
真柄さん:あとは全商品を自社デザイナーがデザインしているのも特徴ですね。レターやカードはそこにメッセージが書かれて初めて完成するものなので、お客様の思いを表現するツールとして信頼してお使いいただけるように、心を込めて制作しています。
―大島さんは〈G.C.PRESS〉というブランドにどんなイメージを持っていますか?
大島:レター関連のアイテムを扱うブランドの中でも、頭一つ出ているというか。バイヤーという立場で見ても、クオリティの高さは飛び抜けていますね。新商品も発信し続けていて、この業界を牽引しているイメージです。ところでいま、どれくらいアイテムはあるんですか?ものすごい数ですよね。
阿部さん:便箋やカードの他にも、ノートや手帳、熨斗袋やカレンダーなども扱っていて、シーズンものも合わせると莫大な数ですね。2,000~3,000アイテムはあるんじゃないでしょうか。正確にはわかりません(笑)
大島:もはや社員でも把握しきれない(笑)
真柄さん:月に1回、新商品を発売するようにもしていて。目新しさだけでなく、「定番になるもの」という基準を設けて商品開発をしています。
大島:単発で売れるものではなく、長く愛されるものをつくっていると。新商品を毎月出すのもすごいなぁ。
阿部さん:定番品も時代に合わせて少しずつリニューアルしていますし、同じデザインでアイテムのバリエーションを増やしたりもしています。
商品はどういう流れで開発されて、発売まで至っているの?
―今日は多彩な商品の一部をご用意いただきましたが、一つひとつはどういう流れで商品化されるんでしょうか。
阿部さん:売場の担当者さんから要望や情報をいただき、それを営業担当が企画化してデザイナーに伝えるところから始まります。
大島:なるほど、まずは市場のニーズを捉えてから。
真柄さん:デザインが形になったら、全社員へのプレゼンを行います。そこでマイナス評価があったらやり直しに。
大島:なかなか厳しい...。
阿部さん:プレゼンが終わったら、製造の段階へ。使いたい紙の種類、希望する加工や印刷方法などをデザイナーに聞き、コストや効率も考えながら商品アイデアを具現化していきます。
大島:難しい注文もあるのでは?
阿部さん:ありますね。「わかるけど...できないよ」みたいな(笑)。そんなわがままを聞いてもらえて小回りも利くということで、あまり大きな工場ではなく、小規模でも腕のよい職人さんがいる工場にご協力いただいています。
真柄さん:そのためだけにインクを調合してくれたり、いろんなヒントをくれたり。試し刷りもいろいろ出してもらっているし、細かな要望にも応えていただいて本当に助けられてますよね。
こちらは最新の「フクロウ」モチーフの試し刷り(上)と、完成した商品(下)。紙や色、印刷方法などを変えたパターンを何通りも出し、最終的な形を決めていくそうです。
大島:企画段階から発売まで、どれくらいの期間かかるんですか?
阿部さん:だいたい1年くらいですね。新作も含めてシーズンものと定番ものが常に動いている感じです。
大島:そうなりますよね。もう四六時中、デザインを考えてる感じで。
真柄さん:弊社は社長が制作室長でもあるんですが、社長からは「24時間G.C.PRESSのデザイナーでいなさい」といわれています(笑)
大島:アイドルの掟みたいだ(笑)
大島:デザインする上で、何を大事にしていますか?
真柄さん:お客様に媚びすぎても、自分を出しすぎても、どちらもよくないですし、自分の好きなものと売れるものは必ずしもイコールではないので、そのバランスには気をつかっています。
大島:社内の評価、お客様や市場のニーズ、自分のやりたいこと。全部のバランスをとるのは至難の業だと思いますが、たくさんのフィルターを通すことで"G.C.PRESSらしさ"という芯が保たれているんですね。
大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part1
人気シリーズや定番アイテムをピックアップしてご紹介
―多彩な商品の中から、いくつかピックアップしてご紹介いただけますか?
真柄さん:ではまず、こちらの「ラッキーモチーフ」シリーズを。
ラッキーモチーフ
便箋 616円(税込)より
ふみ揃え便箋418円(税込)より
封筒 385円(税込)より
ミニメッセージカード 308円(税込)より
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真柄さん:さまざまな「ラッキーモチーフ」をワンポイントであしらったシリーズで、20年ほど前に発売されました。便箋やシール、さらに手帳までアイテムも幅広くご用意しています。
大島:〈G.C.PRESS〉さんを代表する人気シリーズ。印刷もめちゃめちゃこだわってますよね。ウサギなんて毛並みまで表現されていて。でもどれも主張しすぎてなくて、「金箔ですけど?」くらいのさりげなさが素敵です。
大島:最初につくられたのはどのモチーフなんですか?
真柄さん:最初は四葉のクローバーでした。モチーフの追加や変更、リニューアルを重ねながら、いまは10種類ほどを展開しています。
阿部さん:では続いて「マイレターペーパー」を。
マイレターペーパー
便箋 418円(税込)より
封筒 308円(税込)より
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阿部さん:3年ほど前に発売されたシリーズです。G.C.PRESS唯一の男性デザイナーが制作しており、ちょっぴりゴージャス感のあるゴールドやシルバーの罫線が特徴です。「自分の定番」にしてほしいという意味を込めて「マイレター」と名付けました。
阿部さん:ビジネスシーンで使うことも想定して、よりスタイリッシュに見えるように裏の台紙も重厚なイメージにしています。
大島:なんだか気分も上がりそう。ちょっとしたメッセージとか、日常的にこれを使っていたら"デキる感"がヤバいですよね。只者じゃないなと(笑)
阿部さん:(笑)続いてはベーシックな定番ものを。
カラー封筒(ふみ揃え・ミニメッセージ) 220円(税込)より
紙司撰 是空 便箋 583円(税込)
紙司撰 鳩羽紫 便箋 528円(税込)
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大島:個性的なデザインだけでなく、こういうオーソドックスなものも揃っているのが〈G.C.PRESS〉さんの魅力です。
真柄さん:「紙司撰(かみじせん)」は20年以上前からあるシリーズで、和紙を使った便箋です。目上の方へのお手紙として失礼なく使えるものを、ということで開発されました。
―カラー封筒もバリエーションが充実していますね。
阿部さん:封筒と便箋は別々に買うという声が多かったので、それなら自由に組み合わせられるカラー封筒をつくってみようということで始まり、いまは20色ほどを展開しています。
真柄さん:折返しのフラップ部分をちょっと深くしているのが、デザイン上のさりげないポイントです。
大島:シンプルな中にもこだわりが詰まってるんですね。無地の封筒って、他だと事務封筒みたいなものになってしまうので、この商品はお客様から確実に求められているものなんです。しかもこれだけ色が揃っていて、いろんな用途で使える。売場も華やぐし、我々にとってもすごくありがたいアイテムです。
クリスマス&新年のアイテムも充実。そして、未来のお話も
―これからのシーズンに向けたアイテムもご紹介ください!
真柄さん:まずはクリスマス用アイテムですね。ではその一部を。
便箋 858円(税込)より
封筒528円(税込)より
ふみ揃え便箋 462円(税込)より
ショートメッセージカード 748円(税込)より
シール 308円(税込)より
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大島:これが今年の新作シリーズですよね?
手にしているのは「クリスマス金封 418円(税込)」。
真柄さん:担当したデザイナーは、大人が使える絵本のようなテイストのシリーズにしたと言っていました。どこか懐かしさを感じさせるデザインです。
大島:そういえば、現金をプレゼントするための「クリスマス金封」を世に広めたのは〈G.C.PRESS〉さんなんですね。
阿部さん:そうなんです。発売したのは5~6年前かな?当時はまだ早すぎた感がありましたが...時代を先取りしていたということで。
―では続いて、新年のアイテムも。
阿部さん:年賀状、お年玉袋。カレンダーにも必ず新年の干支をデザインしています。
私製年賀状(5枚入) 297円(税込)より
お年玉袋(2枚入) 286円(税込)より
カレンダー 1,540円(税込)より
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大島:今年もどれもかわいい。来年の干支は「うさぎ」なので、鉄板の当たり年です(笑)
大島:年賀状はリピーターが多くて、毎年発売が決まる前から予約が入るほど人気ですね。
真柄さん:もちろん同じデザインの繰り返しではなくリニューアルを重ねているので、リピーターの方にもご満足いただけているのではと思います。
―商品紹介ありがとうございました!まだまだ商品はたっぷりとありますが、今回はこのくらいで。では最後に、今後のビジョンなどを教えてください。
阿部さん:弊社は定番を大事にしていますが、新しいシリーズやアイテムにも挑戦する姿勢は持ち続けていたいです。過去にこれが売れたから、ということにとらわれずに常に進化していきたいですね。
真柄さん:シーズンものも割と保守的なところがありましたが、これからは店頭の季節感を弊社の商品がつくりだすくらいの意気込みでギアチェンジしていくつもりなので、ご期待いただければと思います。
―大島さんは今後の〈G.C.PRESS〉さんに何を期待しますか?
大島:軸となる部分は大切にしながら新しいことにも挑戦する、その姿勢は崩さずに業界を牽引する存在であり続けてほしいですね。個人的な妄想ですが、手紙というコミュニケーションツールの延長として、例えばインクやペン、さらにデスクまわりのアイテムにまで波及していったら面白いなぁ、と。いかがですか?
阿部さん:〈G.C.PRESS〉の世界も広がるし、そういう展開も面白そうですね。
大島さん:ぜひ実現を!今日はありがとうございました!
大島バイヤーの直筆!イラスト解説Part2
【番外編】シールを使って「お手紙デコ」をやってみた!
―シールで封筒を飾り付ける「お手紙デコ」を、今日は大島さんにも体験していただこうと思います。講師はこの方!
G.C.PRESS株式会社 山上さん
大島:よろしくお願いします!キレイにデコるコツはあるんですか?
山上さん:動物シールとメッセージシールを組み合わせるテクニックなどもありますが、決まったルールはないので自由です、今日はシールもたっぷり用意しましたので、早速始めてみましょう!
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大島:じゃあ封筒はゴールドで。シールは使いまくるタイプなので、余白を残す大人の余裕があるか心配です...。
山上さん:(笑)まずメインになる大きなものを貼り、それを基準にして小さいものを貼っていくのが一般的な手順ですね。ピンセットを使うと貼りやすいですよ。あとは封筒の色との相性も見ながら。
(中略)
大島:同系色にしたがりなので、ゴールドonゴールドでどんどん貼ってますが、大丈夫でしょうか...?
山上さん:全然OKです!統一感が出ますし。
―山上さんはバランスを見ながら慎重に進めていますね。
大島:ホントだ、全然違う。性格が出ますね(笑)
―なんて話しているうちに、山上さんは完成しました!
山上さん:はい、こんな感じでシンプルに。縁のラインも活かしつつ。
大島:なるほど、あえて中心からズラすのがいかにも手練ですね。メッセージシールの使い方も上手い。そして大人の余白もあります(笑)
山上さん:組み合わせることで表現の幅もグンと広がりますよ。
大島:私はもう、ノープランで貼りまくって...こんな感じです。
―大人の余白は...。
大島:ないですね...そして私の名前(隆史)の「T」を中央にドンと貼ってしまいました...。
山上さん:主張強めで素敵だと思います(笑)
大島:シンプルバージョンでもう1回チャレンジさせてください!
―では今度はかわいい系でお願いします!
(中略)
大島:またも同系色ですが、大人の余白を意識しつつ、こんな感じでどうでしょう。いっぱい貼りたい衝動を抑えましたが...動物がしつこい(笑)
山上さん:ちゃんと個性が出ています!
大島:やっぱりシールって楽しいですね。無地の封筒ならではの楽しみ方でもあるし、贈る相手のことを思ってデコレーションすれば、より気持ちも伝わると思います。
山上さん:メインのシール、メッセージシール、飾りシールの3種類があれば、個性豊かなデコレーションが簡単にできます。受け取った側もきっとうれしい気持ちになりますから、ぜひ皆さんもチャレンジしてみてください!
左上・左下・中央が山上さん作、右上・右下が大島作。クオリティの差と性格の違いが如実に...(笑)
大島バイヤーの編集後記
大島:デザイナー、生産管理、技術者、営業、みんながその商品のために一番輝ける舞台を創り上げる。G.C.PRESSクオリティはものづくりの見本でした。
おまけ
この日のリュックにぶら下がっていたのは「付箋ポーチ」。こんなアイテムあるんですね。大好きな木彫りの熊をモチーフにしたキーホルダーも隣に!
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