プロだったら、どんなペンでも上手に絵を描けるの? そんな疑問を解決すべく今回は、"おじいちゃんYouTuber"としても注目を集めている水彩画家の柴崎春通さんに、3種の個性派ペンを使って作画にチャレンジしていただきました。果たしてペンをどう扱うのか、そしてどんな絵が描きあがるのか、お楽しみに!
ペンはいずれも個性的。どんな使い方ができそうですか?
―柴崎さん、こんにちは。今日はよろしくお願いします!
柴崎さん:こちらこそ!
柴崎春通さん
1947年生まれ。水彩画家、絵画講師、さらに近年はYouTuberとしても活躍し、その明るいキャラクターや独特の語り口で人気と注目を集めています。
柴崎春通さんのYou Tubeはこちらから
―今日はこちらの3種類のペンを使って絵を描いていただこうと思います!
手前:ぺんてる トラディオ・プラマン(ブラック・ブルー・レッド) 各550円(税込)
左上:コクヨ 2トーンカラーマーカー マークタス 5本セット 935円(税込)
右上:トンボ鉛筆 プレイカラードット 12色セット 2,112円(税込)
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―まず〈ぺんてる・トラディオ・プラマン〉は、ペン先の向きや力の入れ具合によって線に微妙な変化をつけられる、プラスチックペン先の万年筆です。
柴崎さん:ペンのような、硬めの筆のような。硬いペン先だと線の強弱をつけにくいんですが、これはペン先に弾力があるので線の太さに変化をつけやすく、インクの出もよくて滑らかに描けますね。
柴崎さん:他のペンがカラフルなのでこちらはブラックを使って、絵の主となる輪郭などを描くのに使おうかなと思います。
―続いて〈トンボ鉛筆・プレイカラードット〉は、直径約5mmの丸スタンプ芯で"ドットがおせる"カラーペン。0.3mmの超極細芯と2WAYで使えます。
柴崎さん:こういうペンは初めて見ました。事務的な使い方はまったく想像がつきませんが、絵に使うと考えると面白そうですね。無数のイエローとブルーのドットを遠目で見るとグリーンに見えるといった、いわゆる「視覚混色」を生み出して、印象派の絵のような効果が出せると思います。
柴崎さん:点で面をつくる、といった感じですね。このペンは色も豊富だし、単なる文房具ではなく画材のひとつとしての可能性を感じます!
―そして〈コクヨ・2トーンカラーマーカー マークタス〉は、ペン先が2つに分かれていて、1本で同系色の2色のマーキングができる蛍光ペンです。
柴崎さん:これまた変わってますよね、こんなペン見たことないです。1本で2度おいしいみたいな。こういうものを商品化しようという発想がすごい(笑)
―主に、2色を使い分けながらノートや参考書などアンダーラインを引く用途ですね。
柴崎さん:2色を別々に使ってもつまらないので、分かれたペン先を同時に使って2色の平行線を引いてみようと思います、こんな感じで。
柴崎さん:色も違うし太さも違うし、カーブさせればちょっと立体的に見えたりで、面白いことができそうな予感がします。
―今日はこれらのペンで何を描く予定でしょうか?
柴崎さん:3種類を組み合わせて描こうと思いますが...実はまだ内容は完全には決めてないんです。その方が私も楽しいので、描きながら固めていこうかなと。
―何が描かれるかはお楽しみということですね!
柴崎さん:こういう変わったペンで絵を描いたことはないので、上手くいかなかった場合はペンのせいということで(笑)。さて、どうなりますか...。
実践スタート!3種類のペンをどう使う?そして何を描く?
柴崎さん:今日はペンの滑りがよいケント紙を使います。まずは鉛筆で、だいたいの絵の枠と構図をザッと描きました。
―ここからが本番ですね。楽しみです!
柴崎さん:では最初に、ドットがおせるペンを使いましょう。まずは明るい暖色から、ポンポンとやっていきます。視覚混色で色を生み出して、全体の面をつくる感じですね。
柴崎さん:徐々に寒色も足しながら、引き続きポンポンと。寒色が入ると絵が引き締まってきます。
―ここにはこの色をこれくらいとか、計算しているんですか?
柴崎さん:アバウトです(笑)。感覚の部分と計算の部分が半々くらいかな?それくらいが楽しいんです(笑)
ひたすらポンポンを繰り返します
柴崎さん:ではドットはこれくらいで。
―現状、何が描かれるのかまったく見えません...!
柴崎さん:ですよね、私も迷いながらやってますから(笑)。では次に、2色が1本になった蛍光ペンを使ってみましょう
―2色同時使いですね!
柴崎さん:私の中で全体のイメージはなんとなく固まってきたので、そのイメージにあわせて絵の下の方に描いていきます、こんな感じでふんわりと。
柴崎さん:ドットの部分をつぶさないように意識しながら、ドットでは出せないラインを描いていきます。
―この色味と塗っている位置が完成形のヒントになりそうですね...!
柴崎さん:あんまりいっぱい描くとせっかくの2本線がつぶれてしまうので、欲張らずにこれくらいですかね。
―まだ全体像が見えません...!
柴崎さん:私もそろそろ焦ってきました(笑)
いよいよ最終段階へ。徐々に全体像が現れ、ついに完成!
柴崎さん:では最後にプラスチックペン先の万年筆を使っていきます。
―これで具体的な絵を描いていくと。
柴崎さん:はい。陰影や立体感をつけたりしながら、ドットでなんとなく見えている形をこのペンで起こしていく感じです。
柴崎さん:悩んでもしょうがないので、どんどん描いていきますね。会話でも言い切ってしまえば説得力が増すように、絵も思い切りよく描けば説得力が出るんです。自信を持って描いてるんだから正しいに違いない、と思わせれば勝ちです(笑)
―すでに術中にハマっています(笑)
(その後もどんどんペンは進みます)
―いよいよ輪郭が見えてきましたね。
柴崎さん:実際に描いてみると、このペンは使いやすいですね、細かいところも描きやすいし。ドットでつくった部分の存在感が大事なので、このペンであんまり説明的に描いてしまうのは避けないと...。
―素朴な疑問ですが、最初にこのペンで全体の絵を描いてから、そこに色をつけていくのが普通の手順かと思います...どうなんでしょう?
柴崎さん:普通はそうですが...それだと面白くないんですよね。最初から何が描かれるか結果が見えていると、それは塗り絵と同じで、見ている人もつまらないじゃないですか。何より、描いている私がつまらないですから。私の水彩画は「何が描かれるかわからない」とよくいわれるんですが、まずだいたいのイメージをつくって、そこから考えながら徐々に完成させていく、そういうスタイルの方が絶対に楽しいです!
―なるほど、納得しました!たしかに今、見ながらワクワクしています!そして仰るとおり、だんだんと全体像が見えてきました!
柴崎さん:よし、完成。こんな感じでどうでしょうか!
―おお!素晴らしい!ちょっと感動すら覚えます!ちなみに作品名は何ですか?
柴崎さん:なんだろう、「ドットのカバちゃん」ですかね(笑)
―こう見ると、ドットをポンポンしている時点である程度は計算されていたんだなとわかります。
柴崎さん:なんとなく丸い立体をイメージして、そうするとここが影になるとか、そのあたりは計算していました。でもそれくらいのアバウトさですよ。
―それぞれのペンの特性も生かされています。2色のペンは水面を描いていたんですね!
柴崎さん:2本の線が水面の波紋のようになって、イメージ通りに仕上がりましたね。よろこんでいただけてよかったです!では成功ということで(笑)
上手に絵を描くためのコツは?その答えは柴崎さんらしく...
―3種類のペンを使って描いてみて、感想はいかがですか?
柴崎さん:創作的な表現になりましたね。ものは使いようですから、画材じゃないものを使ってどう描くかという、楽しい発想をするのがすごく面白かったです。3種類を組み合わせてみると、さらに表現の可能性と幅が広がりますし。
―よく質問されるかもしれませんが、上手に絵を描くためのコツやポイントってあるんでしょうか。
柴崎さん:私も教えてほしいです(笑)。そうですねぇ、逆説的ですが「上手に描こうと思わない」ことですね。上手に描こうと思うとついつい力が入ってしまいますが、そうじゃなくて、絵を描くこと自体を楽しむことが肝心です。イタズラ書きでも、何かのマネでも、とにかく"描く"という行為を楽しんでみること。はじまりはそこからで、テクニックは後から追いついてきますから。
―描き方うんぬんではなく、まずはリラックスして楽しむことが大事と。
柴崎さん:道具を揃えて、教本を読んで、という感じだと頭でっかちになりますしね。まずは手を動かして描いてみる。そうすると何らかの結果が出るので、道具も技術も自分に足りないものが見つかる。そういう積み重ねで少しずつ上手になると思います。だから皆さんも絵を楽しんでください!
こちらのイラストの描き方は、柴崎さんの公式youtubeでも紹介していただいてます!
動画でも是非チェックしてくださいね。
おわりに
絵を上手に描くコツは、上手に描こうと思わずに楽しむこと。今回の企画を心から楽しんでいる姿を見て、その言葉に納得です。柴崎さん、ありがとうございました!
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